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私、普通に国を改革しているだけなのですが?  作者: しゅう
1章.リディアという名のポーン
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009.内部分裂

数日後――

またしてもシュヴァルツの監視画面に通知が表示される。


『ダイヤモンド会員のご契約ありがとうございます。

 新着限定コンテンツ公開のお知らせです。


 【王国貴族派閥抗争・完全版】

 王国内部で激化する貴族派閥の対立、その実態を公開』


「……来たか。」

シュヴァルツは以前より慎重になっている。

「殿下、今回はどうされますか?」

「まず改竄検知を確認しろ。」

「はっ!」

技術者が確認する。

「問題ありません。映像と記録データは完全に一致しています。」

「ふふふ……。」

シュヴァルツが笑う。

「つまり、本物ということだ。」


映像には、豪華な会議室。

右側には「王都開発派」

左側には「地方優先派」

さらに軍部代表と文官代表が激しく言い争っている。

「王都への予算集中など認められん!」

「地方など後回しでよい!」

「軍事予算を削るなど正気か!」

「軍ばかり優遇するから財政が――」

机を叩く音。怒号。

シュヴァルツは無言で映像を見つめる。

「…………。」

側近たちも息を呑む。やがて、シュヴァルツが口を開く。

「……完璧だ。」

「え?」

「これほど見事に内部が腐っているとはな。」

技術者が困惑する。

「しかし、本当にこれがタリアン王国の現状なのでしょうか?」

「何を言っている。」

シュヴァルツは改竄検知画面を指差す。

「映像は本物なのだろう?」

「はい……映像データそのものには改竄の痕跡はありません。」

「ならば疑う理由などない。」

そしてシュヴァルツは、さらに分析を始める。

「この派閥対立は利用できる。」

側近が尋ねる。

「どのように?」

シュヴァルツは地図を広げる。

「まず地方貴族には、ヴァイスとの経済協力を持ちかける。」

「なるほど。」

「軍部には、我々が階級と安全を保証すると伝える。」

「はい。」

「文官には、我々との統合によって行政効率が向上すると説明する。」

「おお……。」

そして最後に、

「そして王都の民には――」

シュヴァルツがニヤリと笑う。

「『ヴァイスと統合すれば税負担が軽くなる』という情報を流す。」

側近たちが感嘆する。

「完璧です!」

シュヴァルツは満足げに頷く。

「すでにタリアン王国は内部から崩壊し始めている。少し誘惑を与えれば簡単に寝返るだろう。すぐに工作員を使って作戦開始だ。」


その頃、タリアン王国では——

「お嬢さま、隣国のヴァイスが、動き始めた模様です。」

「ふふふっ……本当に信じてしまったのですね。あんなに分かりやすいフェイク映像ですのに。それで、ヴァイスは具体的に何を始めたのかしら?」

「はい。まず貴族への接触を始めたようです。」

「まあ。」

リディアは楽しそうに報告書をめくった。


「どちらの貴族ですの?」

「地方の有力貴族です。ヴァイスとの経済協力を持ちかけているようですが、すでに断られています。」

「……まあ。」

リディアは思わず笑ってしまった。

「理由は?」

「『国内の取引で十分な利益が出ているので、わざわざ隣国と関係を作る必要がない』とのことです。」

「ふふっ……。」

リディアは口元を押さえる。

「では、次は軍部かしら?」

「はい。そちらにも接触しています。」

「結果は?」

「こちらも失敗です。」

「ヴァイス側は階級や待遇を保証すると持ちかけたようですが、『他国の軍に仕えるくらいなら、自国の軍を強くする』と断られたそうです。」

「……素晴らしいですわね。」

リディアは満足そうに頷いた。

「では、商人は?」

「そちらも、失敗しました。」

「…………。」

リディアはとうとう吹き出した。

「一体、何を見てあちらは『簡単に寝返る』と思ったのでしょうね?」

「例の映像しかないでしょう。」

「なるほど。」

リディアは少し考える。

そして――


「では、もう少しだけ夢を見せて差し上げましょうか。」

「次のフェイク映像ですか?」

「ええ。」

リディアは楽しそうに笑う。

「ただし、今度は少し趣向を変えますわ。」

「どのように?」

「ヴァイスの工作が、すべて成功しているように見える映像です。」

「……それは、危険では?」

「いいえ。」

リディアは首を横に振る。

「成功しているように見せるだけですもの。」

そして、にっこりと微笑む。


「あちらが『自分たちの作戦は順調だ』と思っている間が、一番面白いでしょう?」

「そうなのですが……。具体的にどのような?」

「この結果は、殿下の耳にも入るはずですわ。」

「はい。」

「ですから、断った者たちが『完全に拒絶したわけではない』ように見せるのです。」

「……つまり?」

リディアは楽しそうに笑った。

「貴族には、『ヴァイスとの協力も悪くない』と考えているような映像を。

 軍部には、『条件次第では協力を検討する』と。

 そして、商人には、『ヴァイスとの取引拡大を望んでいる』ように見せる。そうすれば――」

リディアは指を一本立てた。


「あちらはきっと、『もう少し押せば落とせる』と思うでしょう?」

「なるほど……。」

「そうなると、さらに工作を強めてくる。」

リディアはくすりと笑った。

「こちらから何もしなくても、向こうから勝手に手の内を見せてくれるというわけですわ。」

「……お嬢様、かなり悪い顔をされています。」

リディアは笑顔のまま答えた。

「失礼ですわね。私はただ、殿下に夢を見せて差し上げているだけですわ。」

「しかし、接触された人たちが協力してくれるかどうかですが……。」

側近の1人がボソリと懸念を漏らした。

「それは大丈夫だと思いますわ。こちらの撮影に協力していただいた方には、報酬をお渡しすればよろしいでしょう。」

「報酬額は?」

「言い値で構いませんわ。」

リディアは楽しそうに微笑んだ。

「何しろ、ヴァイスに目を付けられた方々に、本当に喋っていただいた映像が手に入るのですもの。安いものですわ。」

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