056.問題になったチートアイテム
ある日のヴァイスでの出来事——
「殿下、例の開発者を連れてきました。」
シュヴァルツのもとへ、あの事件で牢に閉じ込められていたアーツ防衛システムの開発者が連れてこられた。
「どうだ、あれから数ヶ月が経った。アーツ防衛システムについて話す気にはなったか。」
シュヴァルツの口元が僅かに吊り上がる。開発者は、シュヴァルツの顔が恐怖でしか感じなかった。
「本当に何も知らない。命を賭けても良い。」
「……そうか。なら、本当に処分してもよいのだが、お前には活躍してもらいたいと思っているのだ。」
再び、シュヴァルツの口元が僅かに吊り上がる。
「なので、質問を変えよう。お前は、あれほどの生産システムを作れるのか。」
「設計書がなければ、不可能です。」
開発者は即答する。
「その設計書は、ヤツが握っているのだったな。」
「はい。全て、リディア様の命令で作成しました。」
「なら、お前が担当したアーツだけ作ってもらうとしよう。」
「……私が担当したアーツだけ、ですか?」
開発者は不思議そうな顔をする。
「そうだ。最初から全てを再現できると思っていない。使えるものから使っていけば良い。当然……手伝うよな?」
「……はい。協力いたします。」
開発者は、逆らえば命がないことを理解していた。
「では、早速作っていただくとしよう。」
シュヴァルツは、開発者を研究室に閉じ込め、完成するまで監禁することにした。
数日後——
「殿下、開発者がアーツを完成させたとのことです。」
側近の報告に、シュヴァルツは研究室へ急ぐ。
「ようやく出来たようだが、どんなアーツになるのだ。」
「これらが私の担当したアーツです。左から、魔力検知、魔力遮断となります。」
「ほう。これらはどのように使われていたのかな。」
シュヴァルツは興味津々に開発者に確認する。
「魔力検知は、アーツからの魔力が外部へ漏れていないかの検知に使っています。このアーツが魔力を拾うと、この魔力遮断のアーツにより回路を断ち切っています。」
「つまり、アーツの暴走を検知して停止させるための安全装置か。」
「はい。なので、大したアーツではありません。」
開発者は、そう答えるとシュヴァルツは真逆の反応を示した。
「これと同じアーツを我が技術者へ技術供与していただきたい。よろしいですな。」
「えっ、えぇ、こんなアーツで良ければですが……。」
「では、よろしくお願いする。明日には技術者をそちらに向かわす故、指導願いたい。」
「分かりました。」
「殿下、魔力検知、魔力遮断のアーツを作らせたところで無意味ではないのですか。」
側近がシュヴァルツに質問する。質問を聞いたシュヴァルツの口元が僅かに吊り上がった。
「お前はまだ未熟だな。これらは軍事転用できる。」
「どういう事ですか?」
「漏れた魔力を検知できるなら、敵の魔力がどこから発生しているのかも調べられるはずだ。そして、その経路を特定し、遮断のアーツで相手側を無力化させればよい。」
「なるほど。アーツを無力化させれば、かなりの脅威になりますな。」
「課題は、自分自身が無力化しないようにすることだ。」
さらに数日後——
「いやぁ、ご苦労であった。お前の利用価値は素晴らしい。」
「これ以上は……何も出ないぞ。」
「いや、お前はまだ隠していることがある。その証拠がこれだ。」
シュヴァルツは、一枚の紙きれを開発者に見せる。
「こ……これは私の物ではありません。」
「だた、お前の家から見つかったものだ。どういうことなのか説明できるのかな。」
「…………。」
開発者は紙を見つめたまま、言葉を失った。
「どうした? 何か心当たりでもあるのか?」
「い、いえ……。」
「そうか。」
シュヴァルツは紙を懐へしまった。
「ならば、質問を変えよう。遮断のアーツには、自分自身を遮断しないための仕組みがあるのだな?」
「……!」
開発者の表情が僅かに変わった。シュヴァルツは、それを見逃さなかった。
「やはり、あるな。嘘は許さんぞ。」
「これだけは……言えません。命を落としても口を割りません。」
「何だと、命が惜しくないだと。こいつに意識がなくなるまで暴行を続けろ。間違っても殺すな。」
数時間後——
「殿下、例の開発者は、いくら暴行を加えても口を割ろうとしません。このままでは死んでしまいます。」
「半殺しの状態で留めておけ。生命維持さえできれば意識が戻った時に、もう一度聞くことができる。殺せば、そこで情報が消失する。」
「承知しました。ところで、殿下。開発者の家をご存じだったのですか?」
「そんなもの知らん。」
「では、なぜあのような紙切れが。」
「あれば作り物だ。魔力遮断するだけのアーツだと、自分自身を遮断する恐れがある。自分自身を遮断してしまっては、アーツの動作確認が出来ないだろう。隠しているようだから、私から確認してあげただけだ。」
「なるほど。」
「偽物とバレればそれまでだったが、反応してくれたものだから容易に気付けたぞ。」




