051.インターミッション②
――そこは、人の世界ではなかった。
空も、大地もない。
ただ、果てのない暗闇の中に、一つのチェス盤だけが存在していた。
その盤を挟み、二つの存在が向かい合っている。
一柱は――エレノア。
そして、その向かいには、もう一柱の神。
「……随分と状況が変わりましたね。」
エレノアが盤上を見つめる。
以前よりも、盤面に残っている駒は少ない。
その中で、一つの黒い駒が盤上に残っていた。
ビショップ——
「彼は、まだ戦うつもりのようですね。」
もう一柱の神は答えない。
ただ、黒のビショップを見つめている。
「ですが――」
エレノアは、白の駒へ視線を移す。
そこには、一つのポーンがいた。
ポーン——
「こちらも、まだ残っています。」
「…………。」
「それどころか……。」
エレノアは盤上を眺める。
「彼女を止めようとしていた駒の方が、先に役目を失ってしまいましたね。」
もう一柱の神が、黒の駒を一つ動かす。
コトッ。
エレノアは微笑む。
「まだ動かすのですか?」
「……ゲームは終わっていない。」
「ええ。その通りです。」
エレノアは、白のポーンへ手を伸ばす。
そして――
一マス進める。
コトッ。
「ですが、確実に近づいています。」
「…………。」
「ゴールへ。」
エレノアは静かに微笑む。
「このポーンが最後まで辿り着けば――」
指先で、リディアの駒に触れる。
「クィーンになる。」
もう一柱の神は、盤面を睨み付ける。
「……まだだ。」
「ええ。」
エレノアは笑う。
「まだ、ゲームは終わっていませんもの。」
二柱の神の間に、静寂が訪れる。
その中で――
一つの白いポーンだけが、静かに前へ進んでいた。
エレノアは、その姿を見つめる。
「さて……次は、どの駒が消えるのでしょうね。」




