↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
50/65

050.追求する殿下

ある日のヴァイスでは——

「殿下、これ以上の調査は不可能です。パーツに何か細工がしてあるとしか思えません。」

「ヤツのことだ。それ位の事はしていたかも知れん。気付くのが遅かったな……。」

シュヴァルツは技術者の報告を聞いて唇を噛み締めた。


どれだけ調べても、魔力増幅の仕組みだけは分からない。

それどころか、システムを分解したことで、元の状態に戻すことすらできなくなっていた。

「おい、工作員を使ってタリアン王国へ忍び込ませろ。」

「忍び込ませて何をするのですか?」

「防衛システムの開発に関わった人物を攫って来るのだ。表向きは事故に遭ったと偽装させろ。」

「そんな事をして、何のメリットがあるのですか?我が国が不利になるだけだと思いますが……。」

側近が疑問をシュヴァルツにぶつける。シュヴァルツは少しイラッとした表情で答えた。

「知恵の足らん奴だな。攫った奴に仕組みを吐かせるまでよ。何もヤツを捕まえる必要はない。ヤツ本人でなければ、ヤツを慕う国々も動かんだろう。事故に見せかけて死亡したことにすれば、攫ったことも分かるまい。」

「なるほど。大事にならない者から情報を得るというわけですか。早速行動に移しましょう。」

「待て。計画は慎重にやる。まずは数日間潜伏して、ターゲットを見極めろ。」


数日後——

タリアン王国では、ある事件が一面記事を飾っていた。

「アーツ防衛システム開発者の一人、謎の交通事故で死亡か?」

記事には細かく書かれていたため、誰も誘拐事件だとは思わなかった。


「殿下、例の開発者を連れてきました。」

工作員は、シュヴァルツのもとへ開発者を連れてきた。

「よくやった。お前は、もう下がって良いぞ。」

「かしこまりました。」

そして、工作員がシュヴァルツに背中を向けた時だった。

――バンッ!

激しい発砲音とともに工作員は微動だにしなくなった。そして、そこには導力銃を持ったシュヴァルツの姿があった。

「大人しく話せば、命だけは助けてやるぞ。それとも、あれと同じ運命を辿るのか?」

「何をするつもりだ。」

開発者は恐る恐る確認する。その姿にシュヴァルツは薄く笑った。

「何も恐れることはない。私は知りたいだけなのだよ。この防衛システムの全てを。」

「私は知らない。リディア様に言われた通りに作っただけだ。」

「だが、作ったのはお前だ。という事は、どうやって作ったのかは分かるだろう。」

「何も知らない。本当だ。本当に言われるがままに作ったのだ。」

開発者は震えながら答えたが、シュヴァルツは信用していなかった。

「では、設計図があるだろう。設計図も無しに作れるとは思えん。」

「せ……設計図はありません。全てリディア様が指図されました。」

開発者の返事にシュヴァルツは苛ついた。

――バンッ!

シュヴァルツは天井に向けて導力銃を発砲した。

「ひぃ。」

「今のは手元が狂っただけだ。次は正確に狙うぞ。」

「しかし、知らない物は知らない。」

開発者の怯えた様子を見て、シュヴァルツは問いかけた。

「本当に知らないのか?」

「本当だ。信じてくれ。」

「分かった。では、分解したパーツがここにある。これを復元させることは出来るだろう。」

「いや……分解すると機能停止するアーツを組み込んである。それは復元不能だ。」

「……そうか。なら、もう1台用意して確認しよう。」

「何をするつもりだ?」

「簡単なことだ。機能停止するアーツを先に取り除いてから分解する。」

「それも不可能だ。アーツの相互補完機能がある。どちらを先に取り除いても機能停止する。」

開発者の返事にシュヴァルツは高笑いした。

「アーツの相互補完だと。そんな物があるわけがない。助かろうと思って出鱈目を言うのは止すんだな。」

シュヴァルツは側近に何か話すと、側近は大急ぎで出て行った。


数分後——

「では実際に試してみよう。」

「……お待ちください。触らない方がいい。」

開発者が慌てて制止する。だが、シュヴァルツは出鱈目を言ったことがバレるからとしか見ていなかった。


——カチッ!

シュヴァルツは、アーツを一つ取り外した。だが、機能は停止しなかった。

「みろ、問題ないではないか。嘘をつくと、どうなるのか分からせる必要があるな。」

シュヴァルツは導力銃を開発者の額に当てた。

「ふふっ、お前の命は、あと数秒だ。私を欺いた罰を思い知るが良い。」


『システム異常——機能停止します。』

ブザーとともに、システムが完全停止した。その様子を見たシュヴァルツは驚きを隠せなかった。

「何だと……?」

シュヴァルツはアーツを元に戻し、再びシステムを起動させようとした。だが、動力は完全に失われたままだった。

「……なるほど。お前の言ったことは本当だったようだな。」

「ですから、私は最初から――」

「黙れ。」

シュヴァルツが開発者を睨む。開発者は震えながら、小さくなった。

「これは……実に興味深い。ヤツは色々面白い物を作ってくれる。」

シュヴァルツは何かに取り憑かれたように機能停止したシステムを眺めた。

「あの……。この後はどうしますか?」

だが、側近の質問はシュヴァルツの耳には届かなかった。


「取り敢えず、こいつは牢に閉じ込めておけ。外に出しては誘拐した事が表面化する。」

開発者は命拾いしたが、ヴァイスから出られることは無かった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。