005.バックドアの使い方
「リディア様、マジック・アーツ感知システムの導入が終わりました。」
「ありがとうございます。これからはお互いの国の発展のために協力を惜しみませんわ。シュヴァルツ殿下にはよろしくお伝え下さい。」
「ありがたきお言葉です。殿下もリディア様のお言葉を聞くと大変喜ぶ事でしょう。では、私はこの辺で……。」
隣国の技術者は、システムの導入が終わると一目散に帰っていった。
(やっと、デバッグ用のチートアイテムを確認することが出来る。っで、どうなっているんだ。)
リディアは、マジック・アーツ感知システムの解析を始めた。
「これは、メンテナンス用に設けたバックドアかしら。チートなので、取りあえず、放置しておきましょう。念のため、アクセスログを残すようにしておきますが。」
リディアは、システムからのアクセスがあった場合にログを残すように設定を変更した。
場所が変わって、ここはシュヴァルツ殿下の部屋——
「首尾はどうだ。システムに疎いタリアン王国だ。問題ないはずだが、念のためだ。」
「はい、問題なくシステムを導入してきました。ここからシステムへアクセスいただくと、タリアン王国の全ての防犯カメラを、ジャック出来ます。」
「よくやった。後で褒美をとらせる。これで、タリアン王国は私のものだ。奴らが何を考え、どう行動するかが手に取るように分かる。」
シュヴァルツは、早速システムへアクセスし、防犯カメラの監視を始めた。
「ふむふむ、中々鮮明に見えるではないか。街の活気が想像以上なのだが、一体何があったのか気になるものだな。」
再び場所が変わって、ここはリディアの部屋——
「早速アクセスされた形跡が残っているわね。しかも、防犯カメラをジャックするなんて、嫌らしい人ね。せっかくなので、加工した映像で楽しませてあげましょう。ふふっ、今から大忙しですわ。」
そして数日後——
シュヴァルツは、今日もタリアン王国の防犯カメラをチェックしていた。
王都の防犯カメラには、街が活気に溢れ、リディアの等身大の銅像を建築している様子が映っている。
「なぜだ。リディアは、極悪非道の令嬢と聞いている。なのに、銅像の建築なんかが行われている。ヤツが何か英雄呼ばれされるような名誉ある事でもしたのか。」
リディアの執務室では、リディアがあくびをしながら居眠りをしているように見える。
「ふむ、やはりヤツは政治には疎い。この様子だと城内が陳腐化されていてもおかしくないな。城内まで攻め入ることが出来れば制圧したも同然だ。」
軍事施設では、何か重要そうな会議をしているように見えるが、揉めているようだ。机を叩いたり険悪な顔がカメラからでも見てとれる。
「やはりだ。これではいざという時に統率がとれん。まずは、内部撹乱させるために使えそうなネズミを何匹か探しておくとしよう。」
武器庫には、旧式が大量に保管されているのが見えた。
「何だ?この半世紀前にタイムスリップしたような武器は。これらを主戦で使おうものなら、我が軍の精鋭部隊を出すまでもない。義勇兵だけでも十分戦える。」
そして、王宮の廊下には、誰も映っていなかった。
「警備が手薄だな。王宮まで攻めてこられないと思って警備が手薄になっていると見える。」
シュヴァルツが報告書を作っている一方で、リディアはアクセスログを眺めながら、
「毎日熱心に見ていらっしゃいますわね。では、そろそろ第二段階に移しましょうか。」
さらに数日後——
相変わらず、シュヴァルツは、タリアン王国の防犯カメラをチェックしていた。
王都の防犯カメラには、リディアの銅像が完成し、道を行く人はリディア像に一礼をしてから通り過ぎる。
「なぜだ。極悪非道の令嬢に一礼をする民衆の心理が分からん。民衆はヤツに洗脳されているのか。」
リディアの執務室では、リディアが側近を叱っている姿が映っていた。
「そうそう、ヤツは極悪令嬢だ。今日も何か問題を起こしたに違いない。」
シュヴァルツは、執務室の映像を見て大いに喜んだ。すると、画面に1つの文字が浮かび上がった。
『ここから先は、有料映像です。継続するにはサブスクリプション契約をお願いします。』
「な、何だこれは。一体どうなっている。今すぐ技術者を呼んでこい。」
シュヴァルツは大急ぎで技術者を呼んで確認させた。
「ジャックは出来ておりますし、私どもでは分かりかねます。ただ、詳しく調べたところ、本当に有料でカメラ映像を公開しているようです。」
「はははっ、金の亡者め。それ位の金はいくらでも出してやるわ。それでタリアン王国を占領出来るのであれば安い買い物だ。おい、そこの者。早速契約しろ。バレないようにタリアン王国の連中が契約しているように偽装する事も忘れるな。」
「はっ、直ちに行動を開始いたします。」
翌日——
「はははっ、今日もタリアン王国で何が起こっているか監視してやるわ。」
シュヴァルツは防犯カメラの映像を確認しようとしたところ、違和感ある文面が浮かび上がった。
『ご契約ありがとうございます。
ただ今、ベーシック会員となっておりますが、ランクをアップグレードいただくと以下の映像もご覧いただけます。
ベーシック会員:街の様子
ブロンズ会員:王宮内部
シルバー会員:軍事施設
ゴールド会員:国王・重臣の会議
プラチナ会員:リディア本人の行動』
「何だ?グレードによって見れる内容を変えるとは、さすが金の亡者だな。リディアの行動が読めなければ話にならん。そこのお前、一番高いヤツを契約してこい。」
「はっ、直ちにプランの変更をしてきます。」
「この程度の金でタリアン王国の情報が手に入るなら安い買い物だ。」
一方のリディアは、アクセスログを眺めながら面白がっていた。
「まあ、一番高いプランに入っていただけるとは随分と太っ腹なお客様ですこと。では、そろそろ第三段階に移りましょうか。」
リディアは新しいフェーズを考えるのが楽しくて仕方がなかった。




