047.解析不能のアイテム
数ヶ月後——
「例の解析状況を確認する。」
シュヴァルツの確認に側近が固まった。
「はい。大変申し上げにくいのですが、結果は出ておりません。技術者、研究者を総動員して対応にあたっておりますが……。」
シュヴァルツは不機嫌な顔で確認する。
「では、どこまで進んでいる?」
「それが……、全くと言って良いほど結果が出ておりません。オリジナルを我々の基盤に載せても再現されず、試行錯誤を繰り返しています。」
「状況は分かった。だが、結果は必ず出せ。これだけのために、かなりの予算を注ぎ込んでいるんだぞ。失敗は許されぬ。」
「しかし、責任者を選任しては逃亡される始末で、技術者の精神的苦痛は相当なものになっています。このままでは、技術者が全員逃亡する恐れがあります。まずは、精神的苦痛を和らげるのが先決かと……。」
側近の返事にシュヴァルツは更に機嫌を悪くした。
「結果が出れば、いくらでも休ませてやる。だが、結果が1つも出ていないではないか。」
「そうは申されましても、技術者の疲労は限界まで達しています。このまま使い続けるのも、いかがなものかと……。」
「使えない技術者どもだな。仕方がない。最終手段だが、ヤツを捕らえて技術を吐かせるしかないのか。」
「お止め下さい。それは……非常に危険です。」
側近が慌てて制止する。
「なぜだ? ヤツを捕らえて吐かせるだけだぞ。そうすれば、全てが解決だ。技術者どもの苦痛も取り除けて、一石二鳥ではないか。」
「そうかも知れませんが、リディア嬢が素直に捕まるとは思えません。例えば、捕らえた瞬間に何かトラップが発動する可能性があります。あるいは、教えた技術そのものに何かトラップが仕掛けてあるとか。」
「確かにヤツなら、やりかねん。何を考えているか分からんヤツだからな。」
シュヴァルツは腕を組んで考え込んだ。
「仮に捕らえたとして、リディア嬢が素直に吐くという保証もありません。また、捕らえたとなると、リディア嬢から恩恵を受けている周辺諸国が黙っておりますまい。そうなると、我が国が完全に孤立してしまいます。」
シュヴァルツは鼻で笑う。
「たかが小娘一人だぞ?ヤツにそれ程の価値などないだろう。」
「だからこそです。捕らえることで得られる利益とリスクを天秤にかけますと、リスクの方が大きすぎます。ここは穏便に対処するのが最善策かと。」
「むむっ、仕方があるまい。だが、予算も無限ではない。予算が尽きたら無償で解析してもらうぞ。」
「不眠不休で対応しております故、予算が尽きるまでには、何らかの結果が導き出せるかと……。」
「その言葉、忘れるなよ。」
その頃のタリアン王国では——
「お嬢さま。どうやらヴァイスが、お嬢さまのシステムを手に入れたようです。」
リディアは、側近の報告に思わず微笑む。
「そうですか。やはり、手に入れてきましたわね。まぁ、予定より少し早かったというのは、褒めるべきかしら。」
「それが……。どうやら、手に入れたシステムを解析しているようです。」
「ふふふっ、それは滑稽ですわね。」
「何故です? 相手は自身の防衛システムを保有しているのですよ。お嬢さまのシステムを真似て、更に性能の高いシステムを作られる可能性もあります。」
リディアは、クスッと笑って答えた。
「その心配はありません。コピー物を作るというのは、殿下のプライドが許さないでしょう。むしろ、違う所で夢中になられていると思いますわ。」
「違う所……ですか?」
「えぇ。殿下の事ですから、他でも使える技術を優先して解析するでしょう。例えば、魔力増幅機能とかですわ。応用すれば、軍事転用も可能になりますしね。」
「それなら、尚更危険なのではないですか?」
「ふふっ。もし真似することができれば、そうなるでしょうね。ですが、分解すれば元に戻りません。」
「どういう事でしょうか?」
側近が不思議そうに確認する。
「あれは、分解すると機能を失うように細工してあります。なので、今頃はガラクタを必死になって解析しているでしょう。そうとも知らず、殿下は今頃何をしているでしょうね?」
「それは……、解析のために、人員も資金も大量に投入しているでしょう。」
「ええ。」
リディアが微笑む。
「つまり、その間だけヴァイスの研究資源をこちらで拘束できるということですわ。」
「確かにそうですが、いつまで拘束できるでしょうか……。」
「えぇ、長くは続かないでしょうね。なので、そろそろ次の行動に移らないといけませんわ。」
「お嬢さま、一体何を考えておられるのですか?」
側近は、最も気になっていたことを質問した。
「世界平和です。争いもなく、皆が安心して暮らせる世界に作り変えるのです。」




