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046.真似る技術

技術者たちはシュヴァルツの命令を受け、回路の複製を始めた。

「殿下、試作品が完成しました。」

「ほう。それはよくやった。早速、動かしてみろ。」

そして魔力を流す。

ところが――

「……あれ?」

「どうした?」

「魔力が増幅されません。」

「何だと?」

「入力した魔力が、そのまま出力されているだけです。」

シュヴァルツは眉をひそめる。

「回路は同じなのだろう?」

「はい。寸法も材質も、可能な限り同じにしています。」

「なのに、再現されないのは何故だ?」

技術者たちが必死に調査する。

「何処か他に足りないパーツがあるのかも知れません。」

「ふむ、ならば直ぐに確認しろ。」

「はい。直ぐに調査します。」


数時間後——

「殿下、二つ目の試作品が完成しました。」

「よし、早速魔力を流してみろ。」

シュヴァルツの命令で魔力が流される。試作品から出力された魔力が微弱ながら増幅された。

「ふむ。増幅されたようだが、あまりにも小さすぎる。」

「はい、恐らく測定誤差なのではないかと考えられます。」

シュヴァルツは、誤差と聞いて苛立った表情を見せた。

「と言うことは、今回も失敗したというわけだな。」

「は……誠に申し上げにくいのですが、結論からいうと、そう考えていただいて差し支えないかと。」

技術者の一人が、小声で返事する。

「では、ヤツはどうやって増幅を可能にしているのだ。」

「原理が全く分からず、調査困難な状態です。もしかすると、部品自体に何か細工が施してあるのかも知れません。そうなると、我々の手には負えません。」

技術者が適当に理由をつける。しかし、シュヴァルツには全く通じなかった。

「ならば、部品も分解して調査しろ。全く同じ物を作れば出来るはずだ。」

「はい……。確かに理屈はそうなのですが、一つ一つのパーツが非常に高精細です。一度分解しますと、元に戻せなくなる可能性があります。」

「全ての状態を記録しておけ。そうすれば、元に戻すことは可能であろう。」

「記録は可能ですが、我々の手で元に戻せるかは未知数です。万が一の事がありますと……。」

「それでもお前たちは技術者か。そこを何とか解決させるのが、お前たちの仕事だろう。」

「わ……分かりました。」

技術者たちは返事したものの、元に戻せる自信は誰一人いなかった。


数日後——

「殿下、大変申し訳ございません。分解したものの元に戻せなくなってしまい、現物確認が出来ません。どう組み直しても、部品が余ってしまいます。」

「お前たちは何をやらかしたのだ。部品の状態を記録しておけと言いつけたはずだぞ。責任者は誰だ?」

「それが……。」

技術者の一人が、それだけ言うと口を塞いでしまった。

「どうしたのだ。私は責任者を確認しているだけだぞ。」

「は……はい。それが、責任者が逃亡して行方が知れません。」

暫く沈黙が続く。そして、重い空気を断ち切るかのようにシュヴァルツが声を出した。

「仕方がない。現物確認用にもう一つ用意しろ。無償提供しているくらいだ。どこか適当な国に圧力をかけて、提供させれば良い。」

「しかし、既に持っている国が更に導入となると、リディア嬢が不審に思うのでは?」

「ふん、そんなこと知ったことか。我々が関与していると思わなければ問題ない。」

こうして、シュヴァルツは更にアーツ防衛システムを手に入れる計画をたてた。


その頃のタリアン王国では——

「お嬢さま、既にアーツ防衛システムを導入している国から更に導入したいとの打診がありました。」

「構いませんわ。提供して差し上げなさい。」

リディアの返事に側近は驚いて確認する。

「しかし、アーツ防衛システムは一台あれば、国土全体を防衛出来ます。とても、二台も必要とは思えないのですが……。」

「購入できない国が、他国を脅迫して手に入れようとしているのでしょう。」

「購入できない国とは……。」

「自身の感知システムにやたら自信をお持ちの国ですよ。あるいは、システムを解析しようとしているのかも知れませんわね。」

リディアは口元に小さな笑みを浮かべた。


「だったら、尚更提供するわけには……。」

「問題ありません。だって、これはチートアイテムですもの。」

「チートアイテム……ですか。」

「ええ、なので絶対に真似は出来ませんわ。」

「ですが、悪用されないでしょうか。」

「それは不可能ですわ。」

リディアは嬉しそうに返事した。

「だって、防衛しか機能がないシステムです。攻撃に転用しようとすると、他の防衛システムで自爆するだけです。」

「そうでしょうか。」

「えぇ。」

「コピー物を作ろうにも作れない。そして、解析すればするほど沼に嵌まっていく。愉快ではありませんか?」

「はぁ……。」

側近は、呆れるように返事した。


「向こうから勝手に世界平和に貢献してくれるのですから、これほど嬉しい事はありませんわ。」

「…………。」

側近は返す言葉を失った。

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