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私、普通に国を改革しているだけなのですが?  作者: しゅう
1章.リディアという名のポーン
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025.開かれた門

――ドンドンドン!

「開けてくれ! 助けてくれ!」

門番が城壁の上から身を乗り出す。

「何者だ!」

「旅の者だ!賊に襲われている!どうか中へ入れてくれ!」

「今は戦闘中だ。一般人とは言え、中にを入れるわけにはいかん。」

「待て!」

守備隊長が声を上げた。

「隊長?」

「……もし、あの者たちが本当に民間人なら、見捨てる事は出来んぞ。」

「しかし、隊長。タイミングが良すぎます。敵の罠という可能性があります。」

「分かっている!」

守備隊長は苛立ったように怒鳴った。

「だが、我々がここで民を見捨てれば、何のために砦を守っている!」

門番たちが顔を見合わせる。

「……門を開けろ。」

「隊長!」

「早くしろ!」

「はっ!」


ギィィィ……。

北門がゆっくりと開いていく。

数人の男女が、慌てた様子で砦の中へ駆け込んできた。

「助かった……!」

「ありがとうございます!」

服装は粗末で、武器らしいものも持っていない。

「怪我人はいるか?」

「いえ……大丈夫です。」

「そうか。ならば、奥へ――」

その瞬間だった。

一人の男女が、顔を見合わせた。

「……今だ。」

「なに?」

――ガッ!

男の一人が、隠し持っていた短剣を抜いた。

「敵襲だ!」

「なっ――!」

門番の一人が叫ぶ。だが、遅かった。

「全員、武器を取れ!」

男女は一斉に懐から武器を取り出した。

「敵だ!」

「北門を奪われるぞ!」

砦内に怒号が響き渡る。

守備隊長は愕然とした。

「しまった……!」

「この状況で二手に別れて戦うには無理がある。援軍は未だ来ないのか……。」

その時、どこの隊か分からない3千の兵がこちらに向かっていた。


「隊長、北門に向かってどこの隊か分からぬ兵が迫っております。」

「何だと……?」

守備隊長は城壁の上へ駆け寄った。

遠くから地響きが聞こえる。

一千、二千――いや、それ以上。

「……三千はいるぞ。」

守備隊長の顔が青ざめる。

「門を閉じろ。これ以上敵兵を入れるな。」

兵士たちが一斉に動き出す。

だが――

「遅い。」

敵の一人が呟いた。

「何だと?」

「北門は我々が既に落とした。正規軍が侵入すれば、ここは終わりだ。」

「と言うことは、こちらに向かっている兵は……。」

「そうよ。俺たちの味方の兵だ。」

「リディア様、申し訳ございません。私の力が及ばなかったばかりに……。」

守備隊長は素直に城門を開けてしまった事に後悔した。


数分後——

「我こそは、リディア様の命を受け、援軍に来た者だ。一般人の姿をしている者は理由を問わず拘束せよ。兵士には手を出すな。」

3千の兵士は、一般人を一網打尽にした。

「どうして俺たちが捕らえられる。俺たちは味方だぞ。」

「リディア様の兵が、お前たちを守るわけがないだろう。」

「ど……どういう事だ。」

拘束された1人は状況を飲み込めていなかった。

「つまり、殿下はお前らを使い捨ての駒にしたということだ。」

そう言いながら、カッツエは拘束者の前に現れた。


「お前は、カッツエ……?」

拘束された男の一人が、目を見開く。

「なぜ、お前がここに……。」

「私も聞きたい。」

カッツエは男たちを見渡した。

「なぜ、こんなことをした。」

「……俺たちは、取引しただけだ。」

「誰に命令された?」

「それは言えない。言えば殺される。」

男は悔しそうに顔を歪めた。

「なるほど……。」

カッツエは目を伏せる。

「お前たちは最後まで利用されたわけだ。」

「……何?」

「お前たちは、使い捨ての駒だったわけだ。用が済めば、口封じのために始末される予定だろう。」

「嘘だ!俺たちが砦を落として帰れば、罪は全部無かったことに――」

「なるほど。お前たちは犯罪者だったわけか。であれば、お前たちを生かしておく理由がない。」

男の顔から血の気が引いていく。

「……じゃあ、俺たちは……。」

「最初から、生きて帰れる戦いではなかった。」

「そんな……。」

別の男が膝をつく。

「俺たちは……何のために……。」

カッツエはしばらく黙っていた。

そして、静かに口を開く。

「気づけて良かったのではないのか。」

「だが、相手はお前たちの命など最初から考えていなかった。」

カッツエは立ち上がる。

「だから、もうシュヴァルツのために戦う必要はない。」

男は呆然とカッツエを見つめた。

「……俺たちは、どうなる。」

カッツエは少しだけ考えた。

「それは、リディア様がお決めになる事だ。私には分からない。」

カッツエは正直に答えた。


「カッツエ殿。」

守備隊長がカッツエを呼び止める。

「カッツエ殿を追い返した兵を探している。誰なのかを教えて欲しい。」

「知ってどうする?」

カッツエは不思議そうに守備隊長に尋ねる。

「勿論、リディア様に報告し、罰を与えるためだ。今後、同じような輩が現れないようにするためでもある。」

「そうですか……。ですが、私はその兵の顔を忘れてしまいました。」

カッツエは、そう言いながら1人の兵をチラリと見る。カッツエに見られた兵は目を逸らした。

「そうですか、忘れてしまったのであれば仕方がありますまい。」

守備隊長はそう言って、その場を離れていった。

兵士は、しばらく俯いたままだった。

「…………。」

やがて兵士は、カッツエの背中を見つめる。

「……あの方は、俺を許したのか。」

カッツエは振り返らない。

「…………。」

ただ、歩みを止めることもなかった。

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