024.援軍と接触
「あの軍旗は……。」
カッツエの遙か先に、タリアン王国の軍旗が見えた。
「あれは間違いなく、リディア様の兵だ。」
カッツエは喜び勇んで軍旗に向かって走った。
「そこの部隊、少し待ってくれ。私は、カッツエと申す者。部隊長にお目通り願いたい。」
「待て、本当にカッツエ殿なのか?証拠を見せろ。」
「ここでも、証拠と言われるのか……。」
カッツエは仕方なく、北の砦で守備隊長からいただいた証明書を渡そうとした。
しかし、北東の砦にて門番から回収されてしまったままであった。
「証拠が……ない。」
「ならば、そこを動くな。怪しい者として拘束する。」
カッツエは必死に抵抗するが、複数の兵士でカッツエを拘束する。身動きが取れなくなったカッツエは、大人しくならざるを得なかった。
「その状態で暫く待て。隊長の指示を仰ぐ。」
1人の兵士が告げると後方へ向かっていった。
そして、数分後——
「隊長が自らお会いになって下さる。せめて無礼のないようにするんだな。」
戻ってきた兵士がカッツエに告げると、不思議と安堵した。
そして隊長が来たとき、隊長は大声で怒鳴った。
「カッツエ殿に、このような事をしたのは誰だ。リディア様が一番気にかけているお方だぞ。今すぐ拘束を解け。」
兵士は慌ててカッツエの拘束を解く。
「カッツエ殿を拘束しようとした者、今すぐ出て来い。」
しかし、身の危険を感じてか、誰も名乗り出ようとはしなかった。
「私を疑うのは至極真っ当なこと。なので、私のことは気にしないでください。先ずは戦況を変えることが第一。」
「た……確かにその通りだ。部下に代わって私から謝罪する。」
隊長は深々と頭を下げると、カッツエに指示を仰いだ。
「これから先、どうすれば良い。」
「兵を2手に分けます。1隊は北門へ向かい、もう1隊は、遊撃隊として臨機応変に動く。」
「待て、南門では戦闘が始まっていると聞く。増援しなくて良いのか?」
「彼らは精鋭部隊です。南門を落とされる可能性は低いでしょう。むしろ、他の門を攻められた時に兵力を分散出来ず、敵の思う壷になることでしょう。」
「分かった。その作戦でいこう。遊撃隊の指示は、カッツエ殿にお願いする。もう1隊は私が指揮をする。」
隊長は何の躊躇いもなく、カッツエに遊撃隊の指揮権を与えた。
「なぜ、あなたは私を信用される。」
「私は、リディア様に心から忠誠を誓う者です。そのリディア様があなたを信頼なされている。それだけの理由です。」
「リディア様は一体何者なのだ。」
カッツエは一番気にしてきた疑問をぶつけてしまった。
「はははっ、カッツエ殿はリディア様を疑っているようだな。だが、私にもよく分からん。ただ、有能なお方であることは間違いない。」
「…………。」
「戦闘が始まっているのだろう。急がないと守備隊の士気にも関わるぞ。遊撃隊の指揮、お任せしましたぞ。」
隊長は、1隊を引き連れ大急ぎで北門へ向かった。
一方で、ヴァイスの方では——
「殿下、ご指示の通り、北東の砦も攻撃を開始したそうです。」
側近が近況を報告する。すると同時にシュヴァルツが確認する。
「頃合いをみて第2部隊の攻撃準備は出来ているのだろうな。」
「はっ、それは抜かりなく。」
側近の返答にシュヴァルツは即座に反応する。
「では、第2部隊の攻撃にかかれ。」
「恐れながら殿下、第2部隊は犯罪者の集まりです。もし、拘束されるようなことがあれば、我々の仕業だと思われないでしょうか。」
「犯罪者とは言え、見た目は一般人だ。即座に攻撃してくるとは思えん。」
「そ……そうでしょうか。」
側近は不安そうに返事する。それを見たシュヴァルツは笑いながら答えた。
「万が一の時は、我が正規軍がタリアン王国の支援に入り、ヤツらを始末する。口封じしてしまえば、何も証拠は残るまい。」
「そうですか……。しかし、賊と違って命が惜しい者ばかりだと思います。うまく作戦どおり動くとはとても……。」
「その心配はない。砦を落として帰ってきた者は、いかなる罪も無罪とし、更に生涯の生活を約束している。なので、ヤツらは必死にやるだろう。」
「もし、帰還した場合は本当に無罪にするおつもりですか?」
「馬鹿な、その場で処分するに決まっているだろう。つまり、ヤツらはどこで屍を作るかだけだ。」
「……殿下。もし、その者たちがそれを知ったら危険なのでは?」
「誰にも言っていない。だから、誰も知るはずがない。」
「…………。」
「人を使うには、使うヤツの利用価値を高めさせてやることが一番なのだ。そして、その気にさせればお終いよ。」
戦闘が始まって数時間後——
「さすがに戦力が削がれてきたのか、敵も大人しくなってきたな。」
守備隊長の一言で周りの兵は勢いづく。
「そうですとも。我々は最強の部隊です。どこの軍が来ても負けることはありません。」
「ところで、カッツエ殿はまだ現れんのか?」
守備隊長の呟きに1人の兵が反応する。
「そう言えば、北門でカッツエとか名乗る不審人物が現れていました。怪しい証拠品を見せてくるので追い返したそうです。」
「何?追い返しただと。では、この砦が守り切れなかったらどうする。」
守備隊長は、カッツエを追い返したという報告を受け、冷静さを失ってしまった。
その時、北門の扉叩く数人の男女が現れていた。




