↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
私、普通に国を改革しているだけなのですが?  作者: しゅう
1章.リディアという名のポーン
PR
22/66

022.劣勢のタリアン王国

こちらは北の砦にいる賊——

「親分、本当に大丈夫ですか。さすがにヤバい仕事じゃないですよね。」

1人の賊が親分に話しかける。

「ああ、大丈夫だ。なんせ国家レベルの依頼だからな。攻めるだけで5000万ミラ、攻め落とせば倍になるおいしい仕事だ。攻めた実績だけでも、暫くは生活出来る。」

「しかし、相手は悪名高いリディア嬢の領土でっせ。後でどんな仕打ちが来るか……。」

「心配するな。ヴァイスに逃げ込めば、いくら悪名高くても、手は出せまい。」

「……本当にそうですかね。」

隣にいた1人がボソッと呟いた。

「どういう事だ?」

「いや……リディア嬢って、一度敵に回すと相手をどこまでも追い詰めるって噂でしょう?」

「所詮は噂だ。国境を越えれば向こうも手出しできん。それに、俺達みたいな賊をリディア嬢が相手にするわけ無いだろう。」

「……だといいんですがね。」

「ここの砦は、20人程度の守備隊しか配置されていない。正面から突破して皆殺しにするんだ。横取りした物は全てお前達の者だ。」

「えっ?全て自分たちの物にして良いのか?」

「そうだ。取り放題の宝の山だぞ。」

「イエッサー!!」

賊たちは砦へ向かって一斉に駆け出した。

「行けぇぇぇ! あの程度の砦、俺達なら一気に落とせるぞ!」

「宝は全部俺たちの物だ!」

賊たちは勝利を確信していた。


やがて、砦の門が見えてくる。

「あと少しだ!」

「一気に駆け抜けろ!」

その瞬間だった。

「撃て!」

カッツエの声が響き渡る。

――バンッ!

銃声が砦の上から一斉に鳴り響いた。

「ぐあっ!」

「な、何だ!?」

「銃撃だと!?」

先頭を走っていた賊たちが次々と倒れ、後続の賊たちが慌てて足を止める。

「撃ち続けろ!」

――バンッ!

間髪入れず、次の銃声が響く。

弾を込めている間に別の兵士が発砲し、銃撃が途切れない。

「な、なんだこれは!?」

「20人しかいないんじゃなかったのか!?」

「話が違うぞ!」

賊たちの間に動揺が広がっていく。

「退け……、一度撤退だ。このままでは犠牲者が増えるだけだぞ。」

賊は一目散に撤退した。

「よし、今だ。追撃するぞ。完膚なきまで叩き潰せ。」

守備隊長が喜び勇んで命令する。

「いえ、このまま待機してください。指揮命令権は私にあるはずです。」

「ぐぬぬ……。これだから素人は。」

「今回は砦の防御が目的です。賊の排除ではありません。」

「しかし、また攻めてくるかも知れんのだぞ。」

「いえ、攻めてくるにしては攻め方が不自然です。もしかすると、裏があるのかも……。」


一方、後方で戦況を見ていた賊の親分は、顔を青ざめさせていた。

「……おい。」

「へ、へい。」

「俺達が聞いていた話と……何か違わないか?」

「……俺も、そう思います。」

「守備兵20人って話じゃなかったのか?」

「そうです。」

親分は砦を見上げる。

そこには、整然と銃を構える兵士たち。

そして、その中央には一人の男――カッツエが立っていた。

「……あれは誰だ?」

「と、とにかく今は撤退しましょう。命あっての物種です。」

「そ、そうだな。倍に出来なかったのは残念だが、実績は作った。全員逃げるぞ。」

「親分が真っ先に逃げてどうするんですか。」

「知らん。リディア嬢に追い詰めらないよう逃げ延びろ。」


賊が砦を攻めている頃——

「殿下、賊が北の砦への攻撃を開始したとの報告がありました。」

「そうか。」

シュヴァルツは地図を見ながら、薄く笑った。

「では、予定通り第2部隊を動かせ。」

「北の砦が落ちるかどうかを確認してからでも良いのでは?」

「構わん。」

「しかし、もし北の砦を落とせなければ……。」

「それでも構わんと言っている。」

シュヴァルツは北の砦を指差した。

「あそこを攻めれば、タリアンは必ず守備兵を集める。」

そして、少し離れた場所にある別の砦へ指を移す。

「その隙に、こちらを攻める。」

「なるほど……。」

「戦争とは、1つの策で全てを決めるものではない。失敗した時のために、第2、第3の手を用意してこそ成功するものだ。」

「さすが殿下です。」

「北の賊どもが全滅しようが、逃げ帰ろうが知ったことではない。」

シュヴァルツは冷たく笑った。

「ヤツらが一つの砦にタリアンの目を釘付けにしてくれるだけで、十分に役目を果たしている。それだけで十分よ。」


賊が撤退してから数分後——

「おい、本当に攻めるつもりはないんだな?」

守備隊長は不機嫌そうにカッツエに尋ねる。

「ええ。守備隊長含め、全員ここから一歩も離れないでください。」

カッツエの一言に守備隊長が確認する。

「お前はどうするつもりだ。まさか逃げるつもりではないだろうな。」

「私は他の砦を見てきます。その間の命令権は守備隊長、あなたにお任せします。但し、砦から打って出る事は禁止します。」

カッツエの命を聞いた守備隊長は機嫌が良くなる。

「人が倒れてお怖くなっちまったか。これだから素人は困る。戦闘は我々に任せておけば良いのだ。」

そんな中、1件の伝令が届いた。


「報告します!北東の砦が賊に襲撃されました!」

「しまった。やはり、北の砦は陽動だったか……。」

カッツエは頭を抱えると、守備隊長が真顔で告げた。

「お前は他の砦を見に行くのだろう。ここは我々に任せておけ。早馬くらいは用意してやる。」

カッツエは早馬跨がると、大急ぎで北東の砦に向かった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。