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私、普通に国を改革しているだけなのですが?  作者: しゅう
1章.リディアという名のポーン
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020.怒る殿下と褒める令嬢

あれから数日後——

「タリアン王国に潜伏させている工作員から報告が届きました。」

「ふむ、早く見せろ。」

シュヴァルツが報告書を読む。読み進めるほど、シュヴァルツの機嫌がどんどん悪くなっていた。

「また税制改革をやっているとは、どういうことだ?」

「はい。北方の税収改善について、非常に詳細な分析を実施し、改善提案を行っているようです。」

「私は、そんな事をさせるために送り込んだのではない!使えない工作員だな。即刻呼び戻せ。」

「しかし、強制的に呼び戻すと工作員だという事が露呈してしまいます。」

「なら、どうすれば良いのだ。」

「休暇を理由に呼び戻しては。休暇程度であれば、向こうも不審に思いますまい。」

「仕方がない。その手で呼び戻せ。」


数日後——

「お呼び出しにより、参りました。カッツエです。」

カッツエが頭を上げると、シュヴァルツは顔面に一発殴り込んだ。

「お前の仕事は何なのだ?タリアン王国の税制改革をするために潜り込んでいるのか?」

「い、いえ! 違います!」

「では、なぜ毎回毎回、財政改革の報告ばかり送ってくる!」

「それは……リディア様から任された仕事ですので……。」

「それを断れと言っているのだ!」

「しかし、断れば不審に思われます。」

「…………。」

シュヴァルツは言葉を失った。


「……お前、本気で言っているのか?」

「はい。」

「私はお前に、タリアン王国の情報を盗めと命じたのだぞ。」

「はい。存じ上げております。」

「ならば、なぜタリアン王国のために働いている!」

「…………。」

カッツエは困惑した。

「殿下。私は情報を集めるために、リディア様から信用を得る必要があります。そのためには、まずは任された仕事を真面目にこなすのが一番かと。」

「…………。」

「それに、リディア様は私の提案を非常に高く評価してくださいます。」

「そんなことは聞いていない!お前は……本当に工作員なのか。まさか、ヴァイスを裏切ってヤツにつくつもりではないだろうな。」

「私は、ヴァイスに忠誠を誓っている者です。リディア様につくなどあり得ません。」

「ならば、次からの報告は、ヴァイスにとって有益な情報を報告してこい。それ以外の報告は許さぬ。それが出来ぬ時は、そなたの首をはねる。覚悟しておけ。」

「……はい。承知いたしました。」

カッツエは反発することができず、その場では承諾するしかなかった。


その日の夜——

「あら、カッツエさん。お帰りなさいませ。お早いお帰りですわね。もっと休暇を楽しんでくれば良かったものを、」

「いえ……、もう十分ですので。」

カッツエは無気力な返事をした。

「浮かない顔ですわね?何かあったのかしら。もしよろしければ、私に話してくださる?」

「……いえ。大したことではありません。」

「そうですの?」

リディアはカッツエの顔をじっと見つめる。

「では、私から聞くのはやめておきましょうか。」

「…………。」

「ただ、何か悩みがあるのでしたら、遠慮なくおっしゃってくださいませ。」

「……。」

カッツエは、しばらく黙り込んだ。

そして、ぽつりと呟く。

「……私の仕事は、何なのでしょうか。」

「あなたは、私の右腕として働いてもらう。それ以外に何があるというのかしら。」

リディアの一言を聞いて、カッツエは何かが吹っ切れたように話し始めた。


「実は、私はヴァイスから、こちらの情報を集めるために送り込まれました。

 ですが、リディア様は、そんな私を何の疑いもなく今の仕事を与えてくださっている。

 私は、このご恩に対して裏切り行為をしております。」

カッツエの独白にリディアは笑って答えた。

「あら、そんな程度の悩みでしたの。あなたがシュヴァルツ殿下に情報を渡していたことは、存じておりますわよ。」

「…………え?」

カッツエの顔から血の気が引いた。

「い、いつから……?」

「最初から、と申し上げたらどうなさいます?」

「…………。」

「あなたが最初に我が国へ来た時から、少し不自然でしたもの。」

「では……私は……。」

「ええ。ずっと泳がせておりましたわ。」

リディアは、どこか楽しそうに微笑んだ。


「驚かせてしまって、ごめんなさいね。」

カッツエは、リディアの返事に驚きを隠せなかった。

「で……では、なぜ私のような者にこんな重大な案件を任せるのでしょうか。」

カッツエは、一番気になる質問をリディアにぶつける。リディアは、くすっと笑った後、カッツエの目をじっと見て答えた。

「あなたの行政能力が高いと見込んでいたからですわ。そして、あなたは私の想定以上の結果を残してくれた。ただそれだけの事です。」

「しかし、それだけの理由で私を雇うなどあり得ない。きっと裏があるのでは?」

カッツエは、まだリディアを疑っていた。


「私は人材を適材適所に配置し、国民のために働くのが仕事です。そして、どんな人であれ、私に尽くしてくれた人には対価としてお給金を支払う。それだけの事ですわよ。」

「それは綺麗事だ。そんな人物は今まで会ったことがない。」

「では、あなたは私のことを疑っているとでも。」

リディアは、少しムッとしながら返事する。

「当然です。あなたは人が良すぎます。母国で聞いていた噂とは全く異なる。」

「では、あなたは人を信じることを身につけることですわ。」

リディアは、一言だけで言い残して去って行った。リディアの後ろ姿を見てカッツエは混乱した。

「私は…、一体どうすれば良いのだろう。」

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