086 やるしかない!
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追ってきているPKから付かず離れずの距離で、アステロイドベルトの中を移動していく。エンジンの出力を上げれば、今の倍くらいの速度は問題なく出せる。
強引に来た時のために、予防線は張っている。
「大きく見れば、一定方向に移動している形になりますので、この際アステロイドベルトの中を、円を描くように移動してみるのはいかがですか?」
メイからの助言だ。このまま進めば、アステロイドベルトを抜けてしまう。多少方向を変えているが、行きつく先は盾にするものが無い宇宙空間だ。
メイの助言通り、大きく弧を描くように、射程範囲外を移動していく。
あれから、さらに1時間ほど逃げ回っている。
「諦める様子がないのは、ここでなら普通なのかな? 宙賊とかやっているプレイヤーって、お金とかが目的じゃないのか? 無駄に時間のかかる追いかけっこなんてしないよな……俺が金持っているなら話は別だけど」
「宙賊との戦闘は基本的にすぐ終わりますから、今回は例外だと思われます。普通の宙賊であれば、無駄に時間をかけて追い回すことはないと思いますが、相手がPKとなれば話は変わってくるかと……」
そっか、プレイヤーでお金を稼ぎたいなら、交易でもクエストでも受ければいいだけの話だ。
PKは相手を殺す行為自体に、意味を見出しているタイプってこともありえるのか。
そうなると、援軍の可能性はどうなんだ? プレイヤーだったら、こんなに長い時間待たされたら、面倒で帰ると思うが……
少し気になることができたので、操船をメイに一時的に任せる。
俺は、慌ててネットで検索を始める。
俺が気になる点は、PKの宙賊とNPCの宙賊が、連携をとるかどうかという点だ。イリーガルな人間たちのコミュニティーで、繋がりがあれば一緒に活動する可能性が気になったのだ。
ゲームを楽しむために、余り触れてこなかった部分を検索する後ろめたさはあるが、その情報を持っているか持っていないかで、考え方が変わるので調べた。
結果、俺の想像していた通り、宙賊のコミュニティーは存在して、PKが作った宙賊のギルドも存在しているのだとか。
自由度が高すぎるんだと思ったが、その通りだったな。宙賊の拠点とは違うコミュニティーだけど、連携は取っているようで、治安の悪い宙域では猛威を振るっているところもあるそうだ。
今まで話題にあがっていなかったが、今知っている4つの国以外にもまだまだ国は存在している。その中に、無法国家と名乗っている、宙賊の巣窟みたいなところがあるらしい。
周りの国に認められていないので、国家と名乗っているが国ではなく、無法宙域と周りからは呼ばれている。
各国のお偉方と黒いつながりがあるとかないとか。
必要な情報はあった。
「狙ってきているのは、あの船だけだろうけど、近くで獲物を探している宙賊と、連絡を取っている可能性が出てきた。外に飛べば、すぐに捕捉される可能性が高くなったわけだな」
ならどうする……ミサイルを積んでいれば話は変わったかもしれないけど、この船には積んでないんだよな……
「セバス、囮にされていた船に、何か使えそうな物って何かなかったか?」
「使えそうな物ですか? ミサイル発射管はありましたが、ミサイルの有無までは分かりません。囮にするなら、抜き取っている可能性の方が高いですね」
ミサイルの利用は無理か……他に爆発するモノって、何かないだろうか?
「1つ思いついたことはありますが、それを実行するためには、強化外骨格を1つ使い捨てにする必要があるのですが……」
強化外骨格か……別になければなかったで構わないのだが、使う予定の無い冒険用のやつでもいけるのだろうか?
「一応作戦の内容ですが、囮に使われていた船を、強化外骨格で遠隔コントロールをして、オーバーロード状態にして爆発させれば、ミサイル以上の破壊力は出せます」
「でも、それだと、見えている地雷になるよね? どうやって相手にダメージを与えるの?」
「おそらくですが、囮の船があった所には今、あの船が通れるだけの道が存在しているはずです。そこに仕掛けておき、残りの時間で可能な限り道にデブリや小惑星を配置できれば、トラップとして使えるかと」
自分の船じゃないからあれだけど、高い爆弾だよな……船1隻使った、豪華な爆弾だ。
「ですが、距離によっては、シールドを剥がすだけで、有効打を与えられない可能性があります。追撃できる位置で待機して、確実に仕留めないと、こっちが一気に不利になります」
リスクはデカいが、逃げ回っているよりははるかにましか。
「できる限り速度を上げて、あの場所へ飛ぼう。こっちの船のサイズなら、遠くに飛ばされることはないから……とにかく時間がない、今すぐ行こう」
時間がないので、とにかく移動しなければならない。
ジャンプした場所や方向で、ある程度場所を特定される可能性もあるので、向こうのレーダーの範囲外で飛びたい。
メイから操船を渡してもらい、エンジンを吹かして全速力で船を動かす。
セバスやメイの方が操船が上手いのだが、ゲームの制限を受け全力での操船などは出来ないようになっている。
今回のように、船の速度を出さないような操船や、障害物の少ない宙域での操船であれば問題ない。
アステロイドベルトの中をプレイヤーの操船以上の速度で移動できたら、色々と問題があるからな。誰が操船しても大差ないエリアであれば、問題ないということらしい。
相手がどこにいるか分からないが、最初の地点へジャンプをする。
「周囲の調査と沈没船の走査を!」
指示を出してすぐに2人が動いてくれた。
ん~、結構な距離を移動したんだな。航跡をたどるために、かなり近付いていたようで、空白のエリアがかなり広い……
調べている間に沈没船を移動させよう。
「セバス、オーバーロードさせるとして、どのくらいまでの範囲が致命傷になって、シールドを全部削る範囲は表示できたりするか?」
セバスが端末を操作して、爆発の範囲を表示してくれた。
これが広いのか狭いのか、評価に困るな。船一隻使ってこの範囲と考えると、ショボい爆弾かもしれないな。
爆発で空白の半分はカバーできるが、もう半分はカバーできない……時間があっても、ここを埋めるのはかなり厳しいな。
難しくてもやるしかないんだよな。生き延びるためにな。
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