070 勘違いは危険だけど、身を守るためには……
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複数のジャンプ反応を確認したメイから、報告が入った。
もう一歩のところだったのに俺は、逃げに転じる。
「ジャンプエネルギーのチャージは、どのくらいで出来る?」
「ジャンプ用のエネルギーは使っていませんので、ジャンプ可能になる速度が出ていれば、いつでもジャンプ可能です」
ショートジャンプとゲートによるジャンプの違いは、前にも説明した通りだが、他にも違う点がある。
ショートジャンプは、船の速度を利用して亜空間への道をこじ開けるのに対して、ゲートによるジャンプは、全てゲートの制御で行われるため、船を止めて一斉に送り出す形になっている。
必要速度に早く到達できるように、エンジンの出力を120パーセントまで上げて、急発進を行う。
これだけ無理な加速だと、イナーシャルキャンセラーも完全には働かず、かなりのGが体にかかるのが分かる。一部のGをキャンセルしてなお、これだけのGがかかるようだ。
急発進してすぐに、複数の船がジャンプアウトしてきた。
セバスは何も言わなくても、走査を開始する。
「ご主人様、止まってください! ここで下手に逃げると、宙賊扱いされる可能性があります!」
セバスから鋭い声で、警告が入ったため船を反転させ、エンジンを吹かし速度を相殺する。
ただ、自分たちが宙賊扱いされる意味が良く分からなかった。
「ただいまジャンプしてきた船は、軍艦です。軍に連絡を入れたため、近くを哨戒中の軍艦が駆けつけてくれたのだと思います」
なるほど。この状態で逃げれば、宙賊扱いされる可能性も高いな。
とりあえず、喫緊の安全は確保できたことを喜ぶか。
色々トラブル続きだけど、リアルじゃなくてゲームなんだから、色々なトラブルは起こってもおかしくないよな。もしリアルがこの世界に追いついたとして、こんなに宙賊がいるとか、考えられないもんな。
軍艦から呼びかけがあり、状況を説明する。
『おや、先程も宙賊を引き渡してくれた船ですね。新人だという割にはいい船に乗ってますし、実力もあるみたいですね。4隻のうち1隻は逃げられたが、3隻は鹵獲可能な状態ですか。本当に助かります。
これで、前の船と合わせて、宙賊の情報が多く手に入ると助かりますね。宙賊船のスクラップではない、クラス3の2隻はどうされますか?』
「今、うちから近い方にある船は、自分たちも調べてみたいので、情報を抜き取とったらこちらにもらうことって可能ですか?」
『もちろん問題ありませんが、ブラックボックスを抜き取るので、A級整備をしないで動かすと法律に触れますが、問題ありませんか?』
「えっと、調べたいだけですので、調べ終わって必要が無ければ競売で売りますので、問題ないです」
『ふむふむ、特殊な船だから興味があったということですか?』
「そうですね。サーマルステルスをしていたから、発見できなかったというのもあるんですが、主砲の威力も高く、船自体のステルス性能も高そうでしたので、どんな仕組みなのか見てみたくなりましてね」
『それでしたら、ブラックボックスを抜き出すのをラボで行いますので、そこの作業員と一緒に調べる許可を出しますけど、どうしますか?』
「え? そんな許可が簡単に出せるんですか?」
『ん~、普通は無理だけど、この宙域でも活躍してもらっていますし、軍の緊急依頼も受けてもらえていますので、宙賊船をラボで一緒に調べるくらいの許可は私が出せますね』
……そういうものなのだろうか?
そんなことを考えていると、横からメイが小声で、
「民間だけでなく、軍艦のオペレーターも立場が高く、艦長・副官の次に来るエリートです。中には、副官がオペレーターをしている艦もあると聞きます」
マジモノのエリートでした!
今回現れた軍艦は、クラス5が旗艦、それにクラス3が3隻で随伴艦として来ていた。メイの話では、外部とやり取りするオペレーターは、基本的に旗艦に乗っているそうだ。アンドロイドの場合もあるが、人間の場合は位が高いみたいだ。
複数の船でやり取りするのは非効率なので、命令系統のある艦のオペレーターが、外部とのやり取りを基本的に行うらしい。
もし旗艦がやられた場合は、引き継いだ指揮権を持つ艦のオペレーターが、その役割を担うらしい。
俺と話している内容も、随伴艦の3隻には聞こえているんだとか。
「いくら偉いと言っても、ラボの許可も取らずに民間人をねじ込めるんですか?」
『問題ないない。ラボといっても要塞艦の一部のエリアだし、軍の機密を見せられるような場所ではないから、私……の他にも艦長も許可を出しているから、ラボに入るくらいは問題ないね』
さすが特殊イベントをこなしただけはあるか。本来ならこんなことは出来なかっただろうに、導入パッケージ様様だな。
「では、ラボへ招待していただいてもよろしいですか?」
『了解、こっちも仕事に入りますので、しばらくお待ちください』
そういうと通信が切れた。
随伴艦の3隻が鹵獲可能な船を回収に向かい、クラス2の宙賊船は旗艦の中に収納された。
さすが軍というべきか、手際がいいな。
「あっ、気になったんだけど、要塞艦ってなんだ?」
「クラス10に分類される船です」
ん? クラスって9までじゃなかったっけ? あれ? どうだったっけ?
「船と言っていますが、クラス10は厳密には船ではないんです。動くコロニーに近いと思ってください。長距離動ける動力がついているので、船と呼んでいるだけです。
クラス9とクラス10には、明確な違いがありますが、大きさで違いがあるわけではないのです。軍にしか所有できないのがクラス10の要塞艦ですね。クラス9とクラス10では、総火力が全然違うそうです」
あ~、クラス10は軍艦しかないのか。ある程度大きくなければ要塞艦とは言われないだろうが、要塞艦より大きなクラス9の船も存在するってことだよな? 動く基地みたいなもんだと思っておけばいいかな。
クラス9も民間で持っている個人や集団は、ほとんどいないそうだが。
そんなことを話している間に、宙賊船の回収は終わっており、旗艦に近付いて同期するように指示が出た。
同期することで艦隊を組んでいる船が、同じポイントにジャンプアウトが可能になる。1隻ずつやってもいいのだが、それはそれで面倒なので同期する方が早い。
俺が宙賊船を鹵獲してジャンプしていた時も、同期に近い形でショートジャンプをしていたわけだしな。
ジャンプで飛んだ先には、前に見た軍艦より更に巨大な艦がそこにあった。
俺は誘導されるがままに、ラボのあるエリアのドックへ向かった
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