069 最後の最後で……
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「セバス、メイ、砲撃を撃ってきた奴は見つけられたか?」
2人とも首を振る……本当にレンジ外から撃ってきたのか? それにしては、狙いが的確過ぎなかったか?
俺も練習したから分かるけど、クラス4のレーダーの範囲外からの砲撃となると、あそこまで的確に狙えないと思う。
何か見落としている気がする……
見えない船とはさすがに戦えない。
「セバス、メイ、退却する。その前に、クラス3の宇宙船は使えなくしておきたいから、撃沈しておこう。砲撃のタイミングはアンノウンに狙われる可能性があるから、相手の出方を見てからにしよう」
こちらの周りをブンブン飛び回っている宙賊船を狙っているように見せて、実はクラス3を狙っているという奴だ。
何度かチャンスがあったと思うが、なかなかこちらの作戦に乗ってこないな……
確実に撃ち落とすムーブで行かないと、さすがに狙ってこないか?
「セバス、メイ、撃ち落とす機動をするから、アンノウンからの砲撃に注意しててくれ。シールドは引き続き、セバスに任せるぞ」
何度か狙おうとしたが、なかなかいいポジションをとれない……5度目の誘導にして、ベストポジション! こっちは明らかに狙っていると分かるように、スラスターで射線も合わせた。
俺が砲撃するであろうタイミングで、やはりアンノウンからの砲撃が迫ってきた。
セバスはレーダーの反応を細かく見ていたため、その揺らぎに気付いていた。
先程の砲撃とは違い、しっかりとシールドを集中させており、飽和することはなかった。
「ご主人様、砲撃してきた船は、サーマルステルスをしています。おそらくですが、ステルス性能の高い船を使っている可能性があります。船のサイズはクラス3、先程はすぐに隠れたため発見できなかったと思われます」
なるほどな、見つからなかった嫌な理由はそれか。
「距離は?」
「クラス2の主砲でも届く距離です」
近いな。
「クラス2の砲撃は装甲で耐え、アンノウンに砲撃を仕掛ける。動けない奴を狙うより、離脱できる可能性が高くなると思う。問題ないか?」
2人とも、撃沈寸前の船を沈めるより、アンノウンに砲撃して多少でもダメージを与えた方がいいと判断した。
レーダーも全周囲探査ではなく、集中的に使いアンノウンの位置を逃さないようにしている。
ブンブン周りを飛んでいる宙賊たちには無防備を晒すが、アンノウンに射線を合わて砲撃……
サーマルステルスに戻ろうとしていたのか、無防備を晒しているな。完璧に防いでみせたのに、まだ隠れられると? アホだな……じゃなきゃ、宙賊なんてやってないか。
船首に当たり、こちらの幸運なのか向こうの不運なのか、コクピット周辺を焼き尽くして砲撃が止まった。
「これで逃げる必要はなくなりました。宙賊が逃げる前に撃沈しましょう」
「砲撃するエネルギーが無いのにどうするんだ?」
「こちらの速度を生かして、シールドを向こうに当てましょう。その後は、ミサイル撃墜用のオートタレットを手動で操作して、エンジンを壊しましょう」
無茶を言いよる。空中戦でドッグファイトする戦闘機だって、機体同士がぶつかることなんてまずありえないぞ……ってかシールド同士をぶつけても大丈夫なのか?
「シールド同士をぶつけると、お互い干渉して出力が高い方が勝ちます。相応のシールド残量を消費しますが、問題ありません」
セバスがそう判断するのだから、問題はないのだろう。
「ご主人様、今のうちに軍へ連絡を入れておきます。クラス3の船を2隻鹵獲できると言えば、ここまで来てくれるでしょう」
他力本願にはなるが、その手を使おうか。報酬は減るけど、安全をとろう。高性能のアンドロイドであるメイが判断するのだ、俺が勝手な判断をするよりいい結果になるだろう。
速度はこちらの方が早いのだから、後ろから追っかけてれば何とかなるだろう。
エンジンの出力を上げ、一気に距離を詰める。
「おぉ、引き撃ちしてる。そこまで技術があったのに、何で宙賊に……?」
「宙賊になってから覚えたのかもしれませんね。ですが引き撃ちが成立するのは、相手のシールドと同クラス以上の主砲を積んでいる場合なんですけどね」
「ミサイルの事を考えれば、そうでもないんじゃないか?」
「ミサイルの性質を考えれば、引き撃ちの時には意味ありませんね。船の速度も載せてミサイルは撃つものです、引きながら撃った場合はミサイルに慣性が働いて、ただでさえ遅いミサイルがさらに遅くなります」
なるほど、主砲の光学兵器は船の速度など関係ないが、実体弾であるミサイルは船の速さも考慮して撃つ必要があるんだな。
「一応、小型のミサイルを大量に撃つポッドもありますが、それはさらに射程が短く、視認できる距離でもかなり近付かないと有効打にはなりませんね」
おっと、倒す前に余計な情報を入れるのは待ってくれ、今一生懸命追っかけているからさ!
操船はコントローラーで行っているため、軌道はなんとなく戦闘機に近い動きをしている。
宇宙船では、基本的にスラスターが全方向についているので、追いかけっこの際に船体を回転させる必要がないが、俺の機動は戦闘機に近いので、船を回転させ上昇と下降で相手に追従している。
常に視線の正面か上側に敵船が来るように動いている。セバスとメイはアンドロイドだから問題ないが、もし生身の人間がいたら、イナーシャルキャンセラーが働いていても、酔うこと間違いなし。
操縦している人間は、車でもそうだが運転している人は、酔い難いというあれだな。というか、イナーシャルキャンセラーが無かったら、俺なんて一瞬で気絶するか死ぬだろうな。
戦闘機と同じようには考えられないが速度を考えれば、宇宙船は戦闘機の何十倍もの速度で飛んでいる。ゲームなので明言はされておらず、独自の速度の呼び方があるが、空気抵抗もないのでかなりの速度が出ている。
そんな中で上昇下降などした日には、一瞬で意識が飛ぶ……いや、緊急発進しただけで意識が飛ぶだろう。
そんなことを考えているうちに、もう目の前といっていい距離まで近付いていた。
エンジンに最後の吹かしを入れて一気に距離を詰め、体当たり……
っておい!
ぶつかる寸前にセバスがシールドを解除しやがった!
そのまま宙賊船のシールドにぶつかると、一瞬で飽和したのかシールドが消滅した。
そのタイミングでオートタレットを操作したセバスの攻撃が、敵のエンジンを狙い撃った。
オートタレットのような火力と呼べる力が無くても、集中的に弾をエンジンに当てれば……機能不全にまで追い込むことは可能だな。
やっぱりむき出しになっている噴出孔部分は、耐久力が低いよな。
もう動けなくなった宙賊船を放置して反転し、もう一隻の宙賊船を狙おうとしたら、ちょうどショートジャンプで逃げるところだった。
「1隻は逃したけど、クラス3を2隻落とせたからよかったな。援軍が来る可能性があるから、最低でも1隻……できれば隠れてた1隻を鹵獲したいけど、時間的な問題は大丈夫だと思うか?」
「ケーブル次第ですが、つないでいる間に何もなく、その後であればケーブルを切って逃げられますので、作業速度次第ですね」
「セバス、準備して。メイ、ジャンプ反応をしっかり見といてほしい」
2人に指示を出して、すぐに作業をできるように準備してもらう。
少し離れた位置にいた隠れていた船の近くに到着すると、
「ご主人様! 複数のジャンプ反応があります!」
クソッ! せっかく鹵獲できたと思ったのに……せめて壊せれば、宙賊に回収されることもなかったのに!
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