058 これから
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「ん~、どうしたものか……」
俺はホワイトファングの2人と交渉の後、自分の船へ戻りそう呟いていた。
「何か問題がありましたか?」
俺の呟きを聞いていたメイが、俺に質問してきた。
「あ~ごめん、呟きだったんだけど……いくらさ、課金船の特殊事項に合成という物があったとはいえ、初めて2日目……ゲーム時間だと4日目になるのか? そこはいいとして、そんな俺がクラス5の船を手に入れられて、それが強奪されないのは、フェアなのかどうかってところだな」
「そのことなんですが、宙賊のプレイヤーの乗っている船でも多いのは、課金船の融合による船だそうですよ。自分にリスクが少なく、リターンが多いので宙賊をするプレイヤーは、大半が融合船で稼いでいるそうですね」
メイが他にも情報を拾ってきて、教えてくれた。中でも宙賊プレイをしているプレイヤーのSNSの情報は、くだらないものだったな。
自己顕示欲というのだろうか、自分がどれだけ強いのかを周りに知ってもらいたいのか、格下との戦闘を面白おかしく書いていたな。
なるほど、課金船の融合……融合船は、ちょっと前に修正が入り、初心者しかできなくなったが、それまでに融合船を作っていた中級~上級者の宙賊プレイヤーが、今幅を利かせているようだ。
宙賊は基本的に弱い相手、倒せる相手を狙うのが基本だ。その点を見れば、格下を相手にするのは間違いではないと思うが、やり方がせこいよな。
派手にやりすぎると、バウンティハンターのプレイヤーに狙われるので、色々な場所へ移動しながら、プレイヤーだけでなくNPCの船を狙っているらしい。
やり過ぎたり、クランやユニオンの身内に手を出したりした宙賊プレイヤーは、引退するか資金が尽きるまでリスキル……リスポーンキルを続けられるらしい。
宙賊プレイヤーによるリスキルは規約違反になるが、宙賊プレイヤーをリスキルする分には規約違反にはならないので、身内に手を出された仲間は、何時間でも粘着するらしい。
こういった立場によって規約が違うのは、リスクを背負ってゲームをしてくださいというのが、運営からのメッセージだ。
宙賊プレイヤーがたまに規約違反だと声を上げることがあるが、しっかりと注意事項にも規約にも、宙賊プレイをする時のリスクが書かれているので、相手にされていないんだとか。
武装船の主力は中型が多い。大型は火力や防御力は高いが、機動力に欠けミサイルを使う中型船の餌食になりやすいので、あまり使われていなかったりするんだとさ。
もちろん使っている人たちもいるけど、大型船単独で使うことはない。小型中型を入り交えて、船団を組むらしい。
大型の火力を生かすために長距離砲撃を行い、近付いて来たコバエを中型船の火力と小型船の機動力で倒すんだとさ。ミサイルを撃ち込む敵の中型船から守るために、小型中型船を守りにつけるようだ。
大型武装船は運用するのにお金がかかるので、資金に余裕があるか収入源のあるプレイヤーやNPCしか使わないそうだ。
ホワイトファングはNPC……なんか違う言葉があるといいんだけど、プレイヤーではないんだよねあの人たち……
あの人たちは、大型輸送船と大型武装船を所有して、随伴船として複数の中型船・小型船を用いているらしい。
クランと言っていたが、規模を見ればユニオンと名乗っても問題ない規模ではある。クランは複数隻で組んだ船団で、ユニオンはクランがさらに集まったような形だろう。
大型輸送船で大量に物資を運び黒字を作り、大型輸送船の航路を先行して大型武装船で宙域のクリアリングを行うそうだ。宙賊を大型のレーダーで探して、全てを駆逐する勢いで狩り尽くすんだとさ。
安全を確保しながら、宙賊にかけられた賞金と宙賊の船を回収してお金に変えるそうで、交易をしなくても黒字で生活できるほどなのだとか。
後で知ったことだが、ホワイトファングはこの国でも知られた集団だったらしい。受付の人も安全が確保されていると判断したから、早めに届けるようにお願いしたのだろう。
多分だけど、医療物資に限定していたのは、ホワイトファングに配慮していたのだろう。話を聞いた時に、医療物資を買いに行かないで済んだとか、自腹を切らなくても良かったと喜んでいたからな。
ホワイトファングほどであれば、大した損失額ではないが、それでも積もり積もれば大きな額になる。それに配慮したギルドが俺たちに、医療物資を運ばせたということだろうな。
結構歪な仕事内容だとは思うが、この世界ではそれが普通なので、こちらから何か言っても無駄なんだろうな。
「ご主人様、これからどうしますか? ここで買えるものが無いのですが、予定通りのコース……開拓惑星へ向かうか、首都星に戻るか、どうなさいますか?」
「開拓惑星にレアメタルを持っていく必要があるけど、それくらいは何とかならないかな? 貴族が持って逃げたって言うけど、回収できてないのかな?」
「それなら、一応聞いてみますか?」
メイにホワイトファングに連絡を取ってもらうと、回収できてはいるが元々あった量と照らし合わせて、色々と調べる必要があるので、すぐには難しいと言われた。
ただ半日……12時間もすれば、俺たちに売り出す分のレアメタルは何とかなるそうだ。
「12時間待つのは無駄が多いよな。だったら、首都星に戻ってもう1度医療物資を運ぶのがいいか? ホワイトファングに恩を売れるとは思わないけど、それなりの稼ぎになるよな」
メイは今回の儲けから移動にかかる費用を引いても、黒字にはなっているので戻ることも問題ないとのことだ。
出発の準備を始めていると、
「ご主人様、ホワイトファングから連絡が入りました。処分に困ったという理由で、ミサイルを首都星へ持って行ってほしいとのことです」
「困ったという理由って……そこを正直に言ってもいいのか?」
「実際に困っているので、間違いは無いと思います。持って行ってほしいというミサイルは小型船で使うタイプのもので、余っているから引き取ってほしいということらしいですね」
「だったら、始めからそれを言えばいいのに……まぁ、ここで売りさばけないから、首都星へ行くなら持って行ってほしいってことなんだろう。安くてもいいなら買うって伝えて。タダならいらないってさ」
ある程度経験のある人間なら、タダは嬉しいと思う反面リスクが高い事も知っている。難癖をつけられた場合、回避する方法がないからだ。ならば、安くてもしっかりと記録に残す方が、賢いやり方なのだ。
「先方から了解が取れました。1機100クレジットで、1000機をお願いするとのことです。適正価格を遥かに下回っていますが、大丈夫なのですか?」
おや? こういったことは、メイとかの方が詳しい気がするんだけどな……
「お金を払っておいた方がいい事も世の中にはあるんだよ。安いからラッキーって言うわけではないけど、色々と記録に残しておいた方がいい事もあるんだよ」
その意図を汲んでくれて、ホワイトファングは俺に安く売ってくれたんだよね。多分、セシリアさんが下した判断だと思う。
「それよりさ、うちの船倉に1000機もミサイルが入るの?」
「船倉だけなら800機ほどですが、空いているスペースにも武装用として200機は積めるので問題ないですね」
荷物としては800機しか積めないのに、使用する目的として200機を弾倉に置いておけるらしい。
よく考えるもんだな。
おそらくこれも、セシリアさんからの提案だろうな。
弾倉ってうちにもあるけど、ミサイル発射装置が無いから空部屋だったんだよな。そこに積むなんて、普通は考えられないもんな。経験の長いホワイトファングだなと思った。
メイやセバスは、今回の事でかなりの事を学んだんじゃないだろうか? 俺がいなくても、金を稼いでくれそうだ……そんなことしないけどね。
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