056 プレイヤーの価値とは?
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現実とはやはり柔軟性とかが違っているな。俺は結構体が硬い方で、前屈をしても辛うじて指が地面につくかつかないかくらいなのだが、この世界では簡単に掌がついてしまう……
開脚に関しても、リアルに関しては120~130度くらいしか開けず、開いた状態での前屈はほとんどできないが、ここでは多少足が開き前屈もある程度可能だった。
「日常動作には大して影響はないけど、実際に体を動かすとなると、普段と可動域が違うから現実に戻ったら転んだりしそうだな……」
「ご主人様、現実の体力はすぐにつけられませんが、毎日ストレッチをすることで、今くらいの体の柔らかさは手に入れられるものです。現実でもストレッチをしてみてはいかがでしょうか?」
う~ん、現実世界の生活アドバイス? をゲームの中のAIにされてしまった。プレイヤーの船に積まれているAIは、プレイヤーの生活管理とまではいわないが、日常生活のアドバイスをするように設定されている。
この設定をオフにする人もいるが、ゲームにのめり込む人たちは大体、日常生活が危ない人が多いので、こういったアドバイス機能が搭載されているんだとさ。
ただ一方的に機械から言われるだけだと、何となく反発してしまうが、見た目を自分の好みにカスタマイズしているアンドロイドから言われれば、意外に生活習慣を見直したりする人が多いそうだ。
このゲームだけではなく、色々なゲームに組み込まれている仕組みだとか。初めの頃は、コミュニケーション能力が落ちると、一部の人間からの大批判があったが、今ではそこを批判する人は少なくなっているとか。
自分の好きなキャラに応援されて、現実世界でも色々と頑張り、現実デビューという言葉が浸透するくらいには、ゲームから現実にデビューして、人生を変えている人たちが多いんだとか。
これは統計的に、男性より女性の方が多かったりするようだけどね。
俺はそういった人間ではないと思うが、メイに応援されるとなんだかやってしまいそうな気になってしまう。
体が硬くて困ることはあっても、体が柔らかくて困ることはないはずだ。あったとしても、体が硬い事によるメリットより大きいだろう。
ゲームからログアウトした際に、体がこわばっているから、こういう所からストレッチを始めて習慣付ければ、ある程度は体が柔らかくなるだろうだってさ。
体の動く速度は、現実とあまり変わりがないような気がするな。
メイに指示されるように色々と体を動かした後、模擬武器を持って色々体を動かすことになった。
……何で宇宙船のある世界で、武器なんて振り回しているのだろうか? と思わなくもないが、何となく面白い。
セバスも現れ、戦闘訓練のような物が始まった。
なんで?
疑問に思うが、セバスに指示される通りに武器を振って、目標になる場所へ武器を当てていく。
でもさ、この世界って強化外骨格だってあるからさ、こんな戦闘ってしないよね? 船内でも使うなら、銃器とかじゃなかったっけ?
この世界にはサイバネティックス強化と言われる、人体を改造して人間の限界以上の動きをできるようにする技術があるそうだ。
全身をやるとなると金持ちの道楽に近いものがあるが、思考速度の加速や短時間の身体機能上昇は、軍人や傭兵であれば当たり前に行っているらしい。
ある程度強化されてしまった人たちは、兵器を使うより特殊素材で作られた武器で戦う方が、強かったりするんだとさ。
さすがに光学兵器を避けるほどの化物はいないが、そういった攻撃はシールドで防げるため、武器で戦う人たちもいるのだとか。
人外魔境なのだが……
俺もゲームを続けていくなら、いずれサイバネティックス強化を受ける必要があるだろうだってさ。実際にその手術を体験する必要はなく、ログアウトしている間に情報を書き換えてくれるんだけどね。
そんなことをしていると、大型船からの連絡が入り、お邪魔することになる。
「ホワイトファングのリーダー、ジョゼフィーヌだ。ジョゼと呼んでくれ。君たちに乗船許可を出す。少し話したいからついてきてほしい」
宇宙服のままだと話しにくいので、応接室のような所へ案内された。
こちらが挨拶する隙もなく移動したため、
「遅くなりましたが、X-354の船長、ナインヘッドです。よろしければ、ナインと呼んでください。ジョゼさん」
「なんか、堅いな。もっと気楽にしてくれればいいのに」
「ジョゼ、無理を言うんじゃありません。あなたは見た目が怖いんですから、もう少しお淑やかにしないと誰も近付いてきませんよ。私はこの大女のお目付け役とでも思ってください。セシリアと申します」
傭兵と思っていたが、分類するとクランで行動している何でも屋らしい。輸送もすれば戦闘もするし、採掘も行うそうだ。傭兵は、ギルドの中でも戦闘を中心に行っている人を指す言葉なので、ホワイトファングは傭兵とは呼ばないそうだ。
「でだ、ここに呼んだのは、貴族の乗っていた船に関してだ。私たちホワイトファングは、貴族の捕縛もしくは殺害を依頼されていたわけだ。逃げられる所を、あんたの船に阻止してもらった形だ」
「いえ、あれはこちらの横撃ちですから、こちらに非があります。ですので、全て持って行ってもらって構いません」
「ジョゼ、あんたのしゃべり方だと、威圧しているようにしか見えないわ。弱い者いじめはカッコ悪いわよ。ナインさん、私たちはあれを横撃ちだとは思っていません。
最終的には何とかなったかもしれませんが、あそこで止めてもらえなければ、無駄な労力を割いて探すことになったでしょう。そういう点も含め、私たちは感謝しているのです」
セシリアに突っ込まれたジョゼは、大きな体を縮めてしょんぼりとしている。
「ですが、今回のターゲットがあの船に乗っていた貴族だったので、私たちが頭を下げて譲ってほしいとお願いする立場なのです。こちらのお願いに対して、ナインさんが望む物はありますか?」
「いえ、引き取ってもらえるなら、喜んで引き取ってもらいたいです。特にこちらから要求することはありません」
「……ナインさん。相手が如何に大きくとも、その交渉の仕方は良くないですね。見たところ、こちらの方はアンドロイドですよね? そしたら、あなたに聞いてみましょうか」
「私は、ご主人様にメイと名付けていただきましたアンドロイドです。望みというのは、言う分にはタダでよろしいですか?
でしたら、貴族を渡す見返りとして、貴族の乗っていた船を首都星まで運んでもらうことは可能でしょうか? 必要のないパーツは引き取っていただけると助かりますが、可能でしょうか?」
「あの船ね……クソ貴族が乗っていただけあって、中身が無駄に豪華なだけで、大していい船じゃないから、こちらで鹵獲した船と交換でも問題ないがどうだ?」
「いえ、少し調べただけですが、あれは他の船に比べて丈夫に作られていますよね? 多少中身を交換する必要がありますが、ご主人様が所有しているパーツを見ていただければわかりますが、ご主人様は船体がほしいのです」
「……っ! マジかこれ!?」
「確かにこれでしたら、私たちが鹵獲した船より、貴族の乗っていた船の方があっていますね。それにしても、こんな装備を手に入れられるなんて、どんな伝手をお持ちで……」
「詳しい事は省きますが、宙賊船を鹵獲した所、軍が探していた船だったようで、その船と交換で手に入れた装備なんですよね」
予め決めてあったカバーストーリーで誤魔化す。
「なるほどな。ちょうど船の大きさもいいな。ただ、シールドシステムとジェネレーターは、こっちの船の方が1クラス上みたいだな。積み替えるなら不用品になるが、自分たちの倉庫でも持っていたりするか?」
「……確かにこの数値ですと、持っている装備より船の装備の方が優秀ですね。最新式の軍用グレードでしょうか? 倉庫は持っていないので、軍に買い取ってもらう形になるかと思います」
「それなら軍に連絡して、私たちが買い取ってもいいか聞いてもらってもいいか?」
う~ん、俺が蚊帳の外に置かれたとたん、一気に話が進んだな……
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