048 死に物狂い
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ピンチを抜け出した俺は一息ついていた。
「ご主人様、後を追ってくる可能性があるので、まだ気を抜いてはいけません。しっかりと警戒をしてください。こちらより性能の良いジャンプドライブを積んでいるはずですので、近くへ飛ばれる可能性もあります」
軍用グレードの装甲と、こちらより性能の良いジャンプドライブであれば、こちらより飛べる距離が長いはずだ。そう考えれば、すぐ近くに現れてもおかしくないってことか。
「了解。ジェネレーターとエンジンの出力を上げて、ジャンプのエネルギーを再充填。準備ができ次第、ゲートの最寄りまでジャンプする。メイは引き続きジャンプの計算を、セバスはメイの代わりにレーダーの担当も任せる」
可能な限り早くショートジャンプをしたいので、メイの演算能力をジャンプへ振り分けてもらう。
船についているAIに任せてもいいのだが、正確に跳ぶならメイたちに任せた方がいいと、2人が言っていたので任せている。
大体の場所へのジャンプでも、まぁ問題なかったりするから、普通の船はそれで大体計算して飛んでいるようだ。多少ズレて小惑星があるところへ出ても、多少エネルギーを多く消費するが、被らない位置へ勝手に移動してくれるからな。
攻撃にもシールドにもエネルギーを使っていたアンノウンだから、すぐにということはないだろう。こっちの2度目のショートジャンプの方が早い可能性だってあり得る。
ジャンプドライブにどれだけエネルギーがあったかにもよるから、何とも言い難いが……少なくとも遮蔽のある場所を探すか。
「セバス、少しでも遮蔽になりそうなものがある場所はあるか?」
セバスがナビをいじって、向かう方向を教えてくれた。
ちょうどエンジンもふかしている状態なので、素早くポイントの座標へ!
もう少しで到着する……
「エネルギー反応増大、後方にジャンプアウトしてきます。クラス3であれば射程範囲内です」
ということは、追ってきたのがアンノウンであれば、主砲の射程範囲内ってことだ。
「セバス、船の船首と船尾ならどちらの方がシールドが堅い?」
「集中させればどちらも同じですが、被弾することを考えれば、船首のほうが後々の航行に影響が出にくいかと」
コクピットは一番安全な船の半ばにあるので、船首を狙われると危険! ということはない。いざという時に脱出艇にもなるので、船の外装近くにあるが、被弾しても安全なように、装甲が厚くなっていたりする。
高火力であれば、そんなの関係なく貫通してくるんだけどね。
話をしている間にも、アンノウンがジャンプアウトしてきた。
「引き撃ちの要領で、船首をアンノウンに向ける。船首にシールドを集中させてくれ」
俺はスラスターを使い船首をアンノウンに向ける。シールドが集中したのか、うっすらと船首側が光っているのが分かる。
移動に使っていたエンジンから生み出されるエネルギーは、全部ストレージへ回していき、ジェネレーターから生み出されるエネルギーもストレージへ。ストレージからジャンプドライブとシールドへエネルギーが流れる。
アステロイドベルトを逃げている際の砲撃の間隔を考えれば、遮蔽物へたどり着く前に5発は砲撃が来る可能性があるとのことだ。
スラスターを上手く使って回避していくしかないな。
アンノウンの主砲が光り、次の瞬間には俺の船の横を光が通過していた。分類すると光学兵器に当たる敵の主砲は、見て躱せるものではない。
分かっていたけど、狙いが正確になれば被弾は免れない。
先ほどのタイミングと合わせてセバスがカウントダウンを始めてくれた。
一定方向に流れるように移動して、砲撃のタイミング前に違う方向へスラスターを噴かせる。
2発目は回避できたが、3発目はシールドに被弾してしまった。
「ご主人様、まずいです。船は軍艦の型落ちですが、主砲に使われている武装はおそらく現行の軍用グレードで、クラス4の威力があります」
クラス3だと思っていたのだが、クラス4の武装を強引に載せていたようだ。クラス3でも大きい部類に入るサイズだったので、船倉をある程度潰せばクラス4のパーツを積むことは可能だ。
ただこれには致命的な問題もある。同型サイズの船に比べると、圧倒的に継戦能力や航行可能時間が短い。本当に短期決戦用の仕様となる。
4発目を辛くも回避した俺に
「これは少しまずいかもしれません……」
継戦能力が低いということは、近くにアンノウンの補給を担当するナニカが必ず存在するということだ。
軍艦のカスタマイズは、原則として禁止されているため、このカスタマイズは軍によってされた物だということが問題となるようだ。
敵対国の軍艦……通商破壊をするにはいる位置がおかしいようだが、もし敵対国の息がかかっている者たちなら、何かしらの工作が行われている可能性が高いようだ。
「と言っても、撃ち勝てないから、逃げて軍に知らせるしかないんだよな」
5発目も避けきれないがシールドが何とか防ぎきってくれた。その代償として、シールドセルが焼き切れてしまったため、緊急交換を行いつつ遮蔽物へ隠れる。
アンノウンの位置を確認しながら、遮蔽物間に入るように細かく位置調整をする。
「もうすぐジャンプドライブにエネルギーが貯まります。次は軍のベースがある宙域に最も近いエリアへ飛びます。すぐにデータを送れるように、既に必要なデータをまとめました」
さすがメイ、有能だな。
遮蔽物が邪魔に感じたのか、砲撃で壊し始めた。
船をジャンプ先へ向けて、エネルギーがたまったと同時にジャンプした。
ジャンプアウト後、すぐに軍の報告チャンネルへ連絡を入れる。
軍のオペレーターAIは緊急事態と判断し、ベースにいる高位の軍人へ通信が繋がる。
事情を説明し、データの内容から敵対国の工作艦の可能性があることを伝えた。俺たちが言わなくても、その可能性はあるのだが、メイとセバスは高性能の陽電子頭脳を持っていることから、こういった判断を軍に伝えても問題がないらしい。
軍の使っているアンドロイドよりも高性能であるため、その2人から判断された情報は、軍にとっても貴重な情報となるようだ。
高性能のアンドロイドって、こういう時に有利にはたらいてすげえな。
クラス4の軍用グレードの武装やパーツは正直欲しいところではあるが、さすがに勝てるわけもない。俺の船がいくらクラス4相当の船の装備とは言え、クラス4の軍用グレードで固めた軍艦に勝てるわけがない。
この船にはミサイルとか、ジャイアントキリングできるような装備も無いからね。
後の事は軍に任せて、俺は首都星へ戻ろう。
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