032 早くしろって!
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「ままま、待ってくれ! さすがに殺されるのは困る! 穏便にならないのか?」
「でしたら聞きますが、あなたたちの軍艦に武装して侵入した賊がいるとしましょう。その賊は、軍人を容易く殺せる強化外骨格を装備しています。この対応にあなたたちは、非殺傷を貫き制圧するのですか?」
セバスが厳しい表情をして、待ってくれと言ってきた調査員に問いただした。
確かに、セバスってすげえな。よく頭が回るもんだな……ん? 陽電子頭脳を積んでいるから、頭が回るって表現は変か? そもそも物の例えだから、正解か不正解かは関係ないか?
セバスのフォローがあり余裕があるためか、どうでもいい事を考えていた。
「いや、ですが……船を攻撃している軍人は、軍人を圧倒できるような武器は身に着けていない。物の例えとしては、不十分じゃないか!」
「確かに今は軍艦の中にいますが、ここは何処ですか? 民間の船の中で、その船の持ち主を容易く殺せる武器を持っていますよね?
先ほどは分かりやすいように、あなたたち軍人を例えにして出しましたが、ここは軍艦の中である前に、民間の船の中だということを忘れていませんか?」
おぉ! セバスの鋭いストレートが決まった。
正論過ぎて、反論してきた調査員の人の顔が歪んでるぞ! 相手はノックダウン寸前だ! いけ! やれ! セバス! そこだ!
「ご主人様、関係ない事を考えるのは止めた方がいいですよ」
小声で注意してきたのは、メイだ。
油のさされていないブリキの人形のように、ギギギギッと横を振り向くとメイの冷たい表情が……すいません、余計なことは考えません。
こちらの考えが分かってくれたのか、柔らかい表情になり顔が離れていった。
メイは美人だから、怖い表情というか冷たい表情になると、迫力が増すね。怒られて喜ぶ性癖は、俺にはないので可能な限りしないでほしいところだ。
セバスと調査員のやり取りは続いており、
今すぐにでも軍で対処できないのであれば、こちらで対処することになります……というのがこちらの主張。
あちらの主張は、今どのように対応するか決めているので、もう少し待っていただきたいというモノ。
「すでに船内を壊され始めて、15分が経っているのですが、まだ対応が決まらないのですか? 確認しますが、今現在明確な犯罪を私たちは犯しているのでしょうか?」
そもそも犯罪を犯していないので、調査員たちは首を縦に振ることは出来ない。
「犯罪を犯していないのに、こちらが一方的に不利益を被っている状態を、軍は容認するのですか?」
この質問には、さすがに答えられないよな。『はい』といえば、自分たちが犯罪を容認することにもつながる。『いいえ』といっても、上がどう対応するのか分からないので、嘘をついてしまう可能性があるということだな。
調査員たちは、軍の組織の中では下っ端の方だから、命令に従うしかない立場なのは分かっている。そしてセバスは、それを分かっていて質問しているのだ。
なんでそんな手間をかけているのかと言えば、現場のこの人たちには何の罪もない。問題なのは不埒者たちを船に侵入させた者たちと、今現在行われている船の破壊行為という犯罪に対して動かない上官たちが悪い。
あえて言葉にしているのは、船内の記録として残して情報を引き渡す時に提出するためだってさ。セバスは調査員と会話をしているのに、俺の端末へ通信を送ってきたのだ。
マルチタスクのレベルが高いな。
「あなたたちでは話になりませんね。そもそも答えられる立場ではないでしょうし……あなたたちの上司へ繋げてください。可能ならこの艦で一番立場の上の人がいいですね」
そんなことを言っても、艦長へつながることはないだろう。
調査員の人がセバスへ通信を繋げ、先ほどと同じようなやり取りをしている。実際にこの場には響いていないのだが、俺はマルチギアを通じて通信の音声が聞こえているので、聞こえているのだ。相手の慌てっぷりが面白い。
もし俺1人でこのイベントに遭遇してたら、絶対に対処できずに犯罪者に仕立て上げられていた気がする……ん? そもそも、この船をゲットできていなかったら、遭遇することもなかった?
あれ? もしかして、これってまだパッケージのイベントの続きだったりするのか?
おっと、この状況について考えていたら、セバスから声がかかった。
「制圧しても問題ないと、艦長の許可が出ました。対象の持ち込んだ強化外骨格は、パワーアシストがついて多少威力のある武器だけですので、戦闘用の強化外骨格を着ていただければ、無傷で制圧することができます」
おっと、着てくれとか言ってたけど、本当に着て俺が戦闘するのか?
「私もサポートさせていただきます。調査用の強化外骨格でも、対象を無力化できるだけのスペックはありますので、問題ありません」
それなら、俺がそっちを着るから、戦闘用でセバスが制圧してくれないか?
「いえ、ちょうどいい練習台として、ご主人様の白兵戦の相手になっていただきましょう」
セバスさんやい、少しハードすぎないかね?
「ご主人様、早くしないと重要な機関に被害が出る恐れがあります」
むっ! それは困る。この世界で修理はブロック方式を採用しているため、簡単ですぐに済むのだが、さすがに機関部に被害が出れば、修理に時間がかかり、初期の段階で船をこれ以外に持っていない俺は、何もできなくなってしまう。
それは本当に困る! よし、行くぞ! セバス準備しろ!
俺はメイに手伝ってもらい、戦闘用の強化外骨格を身に着けていく。
何かね、ロボットの中に入って自分の意思で手足を動かせる感じだな。何か分からんけどスゲー。幼稚な感想しか出ないのは、正確に理解できていないからだ。
船倉では大きさは気にならなかったが、さすがに3メートル近い巨体で通路には入れないぞ?
と思ったら、通路に合わせて屈むことで、ほとんど隙間なく通路を埋める形で進めるようになった。タイヤを使っての移動なので、歩くことによる上下の運動は起きずに快適だ。
屈んでいる状態でも、手は自由に動かせるので、賊の対処には問題ない。
ちなみに俺の強化外骨格の体勢は今、正座をして前かがみになっているような感じだな。
膝と爪先あたりにタイヤがあり、そのおかげでスムーズに動けている。
オラオラオラ~、こっちは怖いものなしだぜ!
俺が進む方向の隔壁がセバスによって開けられていき、進むにつれて大きな破壊音のような物が聞こえる。
俺と賊の間の最後の隔壁が開けられると、自分がキレる瞬間を理解してそのまま暴走していた。
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