152 どっちが悪者か
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有視界内で近距離しか使えないシステムだが、特定の場所に伝播を収束し相手の船などに強制的に声を届けるシステムを使い、停船するように警告する。
相手からの返答を聞くつもりはないので、動いたら撃沈すると伝えてから警告の砲撃を船をかすめるように放った。
ここらへんは、全部セバスの指示通りに動いたが、俺が悪役にでもなった気分だ。
捕まれば死刑か人体実験のモルモットが決定しているのに、こちらの指示に従うとは俺は思えなかったが、メイとセバスが言うには、そこまで度胸のある宙賊は少ないらしい。
撃沈されるくらいなら、俺の懐柔を試みるのが先だとのことだ。それでだめだったら最終手段として自爆で脅して、何とかこっちの船を使って逃げる……というのが宙賊のやり方なんだとさ。
問答無用で撃沈しないのであれば、何かしらの交渉の余地があると考えるそうで、間違ってはいないと思うが今回は……敵対国の工作員の下で働いているから、逃がす奴なんていないだろうけどな。
そもそもセバスの計画では、この船を魚雷代わりにして腹の中で爆発させるそうなので、こいつらはいずれ死ぬことは決まっている。宙賊なんかに同情することは無いし、害悪にしかならないからまとめて死んでくれる方が助かる。
生身で近付くわけにはいかないので、セバスが冒険用の強化外骨格を遠隔操作して宙賊船に送り込んだ。
戦闘力を考えれば戦闘用の強化外骨格を送り出すべきでは? と思ったが、遠隔で操作できるシステムが搭載されているのは、冒険用の強化外骨格だけなので、それを送り出したかたちだ。
すべての強化外骨格につけておけば、搭乗員がいなくても動かせて便利だと思ったが、それなら専用の戦闘用ボットを操作した方がコスパがいいので、戦闘用の強化外骨格には搭載していないんだとか。
ちなみに、戦闘用の強化外骨格に遠隔操縦システムを搭載した場合の値段を100とした場合、ほぼ同じ戦闘能力の戦闘用ボットの値段は35くらいになるそうだ。同じ値段で3体も買えるのか。
同じ100の値段で1体の戦闘用ボットを用意した場合は、同じ値段の強化外骨格を2機相手にできるくらいには強い物が買えるそうだ。
そうなると、強化外骨格の意味って……
宇宙は広く、遠隔操縦システムが使えない場所もある。プレイヤーは現実で死なないこともあり、強化外骨格で戦いたがるプレイヤーも多い。そのため、本来の強化外骨格の役割として使うことが少ない。
本来の戦闘用強化外骨格の役割とは、指揮官機であり戦闘用ボットを4~5機を指揮しながら戦うのが、本来の姿だそうだ。
ここにきて新事実を知った。
俺も戦闘用ボットを買おうか検討するも、ボットのメンテナンスシステムや待機場所を考えると、クラス4以上の船でないと搭載して運用するのは難しいらしい。
プレイヤーが自分で操船して宙賊と戦う場合は、クラス3までの船が多いので、宙賊の船に乗り込む時は、強化外骨格単身で行くことになるそうだが……
色々あるんやな。
クラス4の船にセバスが乗り込んだ時も、戦闘用ボットが無かったのはメンテナンスシステムのランニングコストが高くて、搭載しきれなかったって感じっぽいな。
強化外骨格や戦闘用ボットが無くても、宇宙服を着せて武器を持たせれば十分に脅威になるし、クラス4以下であればそれでも制圧可能だから、掃いて捨てるほどいる宙賊を使えばいいってことか。
宙賊ってできるだけ壊さないように船を鹵獲しようとすると思ってたのに、強化外骨格や戦闘用ボットがいなかった理由が判明した。
セバスが強化外骨格を遠隔操作して宙賊船に乗り込むと、まず初めに行ったのは、船のシステムに繋がるコンソールを守っていた宙賊の排除だ。
こちらに敵対しないと船内放送で言っていたが、コンソールに近付けなかったため、宙賊を制圧してすぐに船のコントロールを奪った。
次に相手がしたのは、懐柔だった。
陽電子頭脳のセバスに懐柔なんて無理な話だが、相手はそれを知らないし、船のシステムを掌握されていることも気付かずに船内放送以外での会話で、どうやってこちらを殺すか相談していた。
そんなこともありセバスは、すぐに次の手を打つ。
大半が宇宙服を着ていたので死ぬ奴は少ないが、船内の空気を抜いて、重力発生装置もオフにした。それにより3割ほどがすぐに気絶をして、そのまま放置されたため帰らぬ人となる。
こいつらは苦しんだけど、実験動物にならないだけ楽に死ねただろう。
どうでもいい事を考えている間に、セバスが次々と宙賊を制圧し始めた。
こちらは戦闘用の強化外骨格なので、宙賊が携帯できるような武器でシールドを突破するのは難しいようだ。無重力にしたとはいえ、元々は重力のある時に使っていた武器なので限界があったようだな。
壊れたら勿体ないとは思うけど、セバスが壊れるくらいなら強化外骨格を犠牲にした方が、100倍はマシなのでドンドンやってくれ。
ちなみに制圧方法は、船のコントロールを奪ったからできる方法で行っていた。
今までに見たことが無かったが、船の中のエネルギー回路を利用して、部分的に高圧電流を流してそのエリアにいる宙賊を気絶させている。
宇宙服は絶縁素材中心で作られているとはいえ、全てが絶縁素材ということではない。数少ない通電する素材や隙間から高圧電流が流れ込み、宙賊たちは簡単に気絶していく。
中には、運よくなのか運悪くなのか分からないが、死んでしまった宙賊もいるようだ。
近寄ってくる宙賊から優先的に高圧電流を流していたが、さすがに回路に負担をかけ過ぎたため、近寄ってきた奴らに使っていた場所の回路が切れてしまった。
それでもセバスは余裕そうだったので、メイに気になったことを聞いてみた。
これだけ便利な方法があるのに、今回初めて使った理由が分らなかったからだ。
その答えは、簡単だった。回路が壊れれば修理にお金がかかるので、せっかく鹵獲したのに買いたたかれてしまうから、できる限り壊さないようにするため、使っていなかった手段なんだとか。
最終的には爆破する予定の宙賊船なら、いくら中身が壊れていても目的地までたどり着けばいいので、回路の断線など気にする必要はないとのことだ。
もっと言えば、船内に生きている宙賊が1人でもいればいいので、かなり無茶をしているみたいだな。
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