帰国
ワイバーンはあろうことか、転移魔法を使いつつ、一気にオブリガシオン王国にやってきたのだ。
この子がこんなことができるなんて、思いもしなかった。
オブリガシオン王国の上空を飛びながら、恐る恐るユリウスに話しかける。
「どうしましょう、ユリウス。その、ここは――」
「オブリガシオン王国なのだろう?」
「え、ええ」
やはり、ユリウスはわかっていたようだ。
「すみません、神学校の寮を目指して帰るつもりが、こんなところまで来てしまって……」
「いや、逆に都合がいいかもしれない。校長の事件をもみ消すために、神学校側が何をするかわからないから」
ただ、身ひとつでここまで来てしまったのだ。ユリウスに対して申し訳なくなる。
「責任は取ってくれるのだろう?」
「それはもちろん」
「ならば何も問題ない」
そんな話をしているうちに、ワイバーンはオブリガシオン王国の首都にやってくる。
上空を飛び、あっという間に王城のドラゴンポートに下り立った。
塔のいただきとなるドラゴンポートで待ち構えていたのは、セシリアだった。
「おかえりなさい、わたくしの勇敢なる騎士アルヴィエ」
「その……ただいま戻りました」
「あなたはわたくしの要望通りのよき夫を、見つけてきてくれたようね」
「いえ、彼は――」
セシリアの夫候補ではない。
そう言いかけたものの、ユリウスがオブリガシオン王国で暮らすことを望めば、セシリアの夫という立場が彼の人生を支えてくれるだろう。
ぎゅっと胸が苦しくなる。
ここで初めて、私はユリウスに好意を抱いていたのだ、と気付いてしまった。
きっと初恋だったのだろう。
初恋は叶わないものだと聞くが、まさか本当だったとは……。
「アルヴィエ、あなたの従兄という安心感もあるわ」
「私の従兄、ですか?」
いったい誰のことを言っているのか。
短時間にいろいろありすぎて、頭が完全に混乱している。
なんて考えていたら、ここで第三者が登場する。
「いやはや、アルヴィエ、早いお帰りだったね!!」
元気よくやってきたのは、私の従兄であるエルヴィン。
アインホルン聖国にいるはずの彼である。
「どうしてエルヴィンがここに!?」
「女王陛下が、俺達一家をオブリガシオン王国に亡命するよう、取り計らってくれたんだ」
なんでも私が送った赤い錠剤から、セシリアはアインホルン聖国の秘密を暴いたという。
そして、私がアインホルン聖国に潜入する手助けをしたエルヴィン一家に危険が迫ることにいち早く気付いて、いち早く避難を促していたようだ。
なんというか、仕事ができすぎる。
そして、セシリアは驚くべき宣言をした。
「わたくしはこの男、エルヴィンを夫とするわ」
「えーーーーーーー!?」
まさかの展開に、驚きの声をあげてしまった。




