逃走
寝室からやってきた死せる魔物は勢い余って倒れ込み、群衆雪崩の状態となる。
その隙にユリウスは背後から迫り来る死せる魔物に向かって、聖術を展開させた。
「悪しき存在に神罰を――聖なる槍!!」
次々と連射される聖なる槍が、死せる魔物達を貫いていく。
あっという間に倒してしまった。
「行くぞ!」
ユリウスは私の手を引き、走り始めた。
一階に繋がる階段を下りようとした瞬間、ムッと漂う焦げ臭さと熱気に気付く。
「これは……!?」
「ありえない」
一階部分はすでに火の海だった。
「屋敷ごと焼き払って、証拠隠滅するつもりか!?」
「なんて狡猾な……!」
一階を通って逃げるのは不可能だろう。
二階には死せる魔物達がどんどん集まってくる。
三階に行くしかない。
ユリウスと共に階段を駆け上がり、三階に行き着く。
幸いというべきか、死せる魔物達の姿はなかった。
適当に部屋に入る。
そこはダンスホールのような広いフロアで、懸命に扉に向かって駆けた。
バルコニーに繋がる扉に行き着くも、触れようとした瞬間、真っ赤な魔法陣が浮かび上がる。
「これは――!?」
「触れないほうがいい。呪いのようなものだ」
脱出口になりそうな場所すべてに、このような魔法を展開させているのだろう。
「どうすれば……」
「待て、考えるから」
なんて話をしている間に、コツコツコツ、という足音が聞こえてきた。
扉は自動で開き校長が登場する。
彼は一人ではなかった。
ラウル枢機卿を横抱きにし、やってきたのである。
「逃げても無駄だ。一階は火の海、二階はグール共がいる。三階は窓や扉に触れたら呪われる魔法をかけてあるゆえ」
触れただけで呪いが発動するなんて。
ユリウスが止めなかったら、うっかり触って呪われていたかもしれない。
「まさか二人揃ってのこのこやってくるとは、私はついている」
「愚かなことを……!」
「なんとでも言えばいい。私はラウルさえ生き返ったら、地位も名誉も、何もかも捨ててもいいと思っているのだから」
校長は尊大な様子で話を続ける。
「ユリウス・フォン・アイスフェルトよ、お前に選ばせてやる」
「何を――!?」
「今ここで、アルヴィ・フォン・バルテルの身を捧げたら、何もかも許してやろう」
「許す? 私は罪を犯した記憶はない」
「犯しただろうが。この私を諸悪の根源だと疑い、単独で乗り込んできた」
ユリウスは言葉を返すよりも早く、校長めがけて聖なる槍を放った。




