目覚め
いったい何を言っているのか。
理解の範疇なんてとうに超えていた。
呆然とする私を前に、校長は手をパンパンと叩き、眠っている者を起こすような言葉を発する。
「皆の者、今こそ目覚めよ!! 〝宴〟の始まりだ!!」
その意味は、次の瞬間に明らかとなる。
寝室の壁際に立てかけるように置かれていた棺が、勢いよく開いた。
中から現れたのは顔面蒼白とした人々。
自分の意思で生きているとは思えない、操り人形のような存在だ。
そんな人々が私に襲いかかってくる。
「その者は傷つけないように捕らえよ! ラウルを復活させるための、大事な神の涙だ!」
彼らの体はいたる場所に縫い目があることに気付く。
手の長さも、足の長さも合っていないからかふらつき、まっすぐ歩けない者もいた。
おそらく、複数の者達の四肢を繋いで一つにした体なのだろう。
白目を剥き、血走った目からは赤い涙を流していた。
心臓にナイフが突き刺さったまま、動き回る者達もいる。
つまり彼らは生きている人ではなく、死せる魔物なのだ。
私を捕まえようと迫り来る手を回避する。
途中、甲冑があったので、そこから剣を引き抜いた。
『ガアアアアアアアアア!!!!』
足下を滑るようにしてやってきた者が、私の足首を掴んだ。
そのまま噛みついてこようとしたので、とっさに首を刎ねた。
すると、動かなくなる。
血は流れず、斬りつけた断面からは中から黒い液体が溢れてきた。
黒い煙みたいな物がたちこめ、悪臭が部屋に充満する。
「何をしているんだ!!」
校長が叱咤するような声が聞こえた。
その隙に寝室から脱出する。
廊下に並べられたガラスの棺の人々が待ち構えていたらどうしよう、と思っていたが、皆眠っているように静かだった。
両開きの扉を閉め、左右のドアノブに剣を差し込む。
すると、かんぬき鍵みたいになって内側から開けなくなった。
ドンドンドン!! と扉を激しく叩く音が聞こえる。
早くここから逃げなければ。
その前にユリウスを目覚めさせなければ。
「ユリウス!! ユリウス!!」
ガラスの棺を叩くも、反応はない。
幸いと言うべきか、ユリウスの胸は上下していた。
死んでいない。彼は生きている。
けれどもどうやって目覚めさせればいいのか。
ガラスが分厚いからか、私の声なんて届いていないように思えた。
ここで気付く。
そういえば、十字架飾りには兄弟の声を届けることができると。
ありったけの力で叫んだ。
「ユリウス、起きるんだ!!」
それが合図となったかのように、寝室の扉が破られた。
雪崩が起きたかのように、人々が押しかけてくる。
「――っ!!」
背後からも、同じような人々が迫っているのに気付いた。
ここまでか。
そう思った瞬間、ガラスの棺が突然開いた。
「なんだ、このありさまは!?」
ユリウスが寝起きとな思えない、よく通る声で叫んだ。




