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女王陛下の婿探し~専属騎士だけれど、隣国の神学校へ男装し未来の夫を探しに行けと命じられました~  作者: 江本マシメサ
第五章 すべての謎が繋がるとき

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校長の自宅へ

 ヨハンから校長から話を聞く機会を作ることができた、という知らせが届く。

 明日の放課後、時間を作ってくれたらしい。

 何か情報を聞き出せるだろうか。

 それとも、もみ消したようなうわべだけの話を聞くだけの機会となるのか。

 ヨハンも同席してくれるというので、さすがに校長も甥の前でおかしな嘘は吐かないだろう。


 ユリウスが登校しなくなってから、早くも十日経ったか。

 クラスメイト達は気にも留めなくなっている。

 ただ一人、ヘィンを除いて。


「ねえ、おかしいよね。十日も休んでいるのに、心配しなくていい病欠だなんて」

「ヘィン、その件については、触れないほうがいい」


 ブラザー・マテオから変に目を付けたら大変だ。最悪、いなくなったクラスメイト達のように、存在をなかったものにされる可能性もあるのだ。

 皆、それが怖くて、異変に気付かないふりをしているのかもしれない。

 ヘィンにも皆と同じように、ユリウスのことは気にしないように言っておく。

 こういう考えができるようになった自分に驚く。

 アインホルン聖国での暮らしに染まってきている証拠だろう。

 ユリウスについて調査したあとは、セシリアに命じられたとおり、早急に撤退しなければならない。


 ようやく迎えた放課後――ヨハンと待ち合わせにしていた場所に彼は現れなかった。

 代わりにやってきたのは、初めて目にするブラザー。

 彼は校長の命令で、私を案内しにやってきたらしい。

 ヨハンは急用ができて、同行できなくなったらしい。

 馬車に乗るように言われ、それに従う。

 校長は校内におらず、聖都シエルのタウンハウスにいるらしい。

 先日の騒動を国の上層部に報告するため、神学校を離れていたそうだ。

 馬車に乗っているブラザーはこちらが質問しない限り、喋ろうとしない。

 ヨハンのことだって、聞かなければ説明しないつもりだったのだろう。

 会話もないまま、校長の自宅へ向かったのだった。


 馬車を走らせること一時間ほど――校長の自宅へ到着する。

 タウンハウスであるものの、あるのは街中でなく、深い森に囲まれた郊外だった。

 その代わりと言ってはなんだが、王弟でもありシャルロード公爵でもある校長の屋敷はとても大きく立派なものである。

 敷地内も馬車を走らせることができるほど広く、玄関口の前で下ろされた。

 ブラザーはそのまま馬車に残って走り去る。

 普通、校長のところまで案内してくれるのではないか。

 なんて思ったものの、自力でここまでやってくるのは大変だ。連れてきてくれただけでも、ありがたく思わなければならない。


 ドアノッカーを鳴らすと、使用人が応対してくれた。

 ヨハンの紹介でやってきたと言うと、中へ招き入れてくれる。

 エントランスに入ってすぐに、ガラスの棺があった。

 中には三十代前後の、聖衣に身を包む男性が眠っている。 

 よくできた蝋人形だろうが、こんなものを玄関に飾るなんてなかなか趣味が悪い。

 バクバク跳ねる心臓を押さえながら、使用人のあとに続いた。

 長い廊下をひたすら歩いて行く。

 屋敷内は薄暗く、人の気配がまったくない。

 客間に通され、しばし待つように言われた。

 途中、メイドがやってきて飲み物を持ってきてくれたのだが、ワイングラスに注がれた液体はどろりとした赤。

 血だ、と気付くのにそう時間はかからなかった。

 おそらく私を吸血鬼だと思って持ってきたのだろう。

 ひとます感謝し、メイドに下がってもらう。

 一人になって、メイドが置いていった瓶を手に取った。

 中にはたっぷりの血で満たされている。

 いったいどこから提供された血なのか。

 疑問に思っていたら、校長がやってきた。


 立ち上がって頭を下げる。

 ジャンフリード・フォン・シャルロード――入学式以来、その姿を目にした。


「アルヴィ・フォン・バルテル、よく来た」


 校長はにっこり微笑み、私を歓迎してくれた。

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