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女王陛下の婿探し~専属騎士だけれど、隣国の神学校へ男装し未来の夫を探しに行けと命じられました~  作者: 江本マシメサ
第三章 神学校の謎

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兄弟(ブリューダー)について

 翌朝――昨日同様に教室でユリウスと落ち合う。


「アルヴィ、おはよう」

「おはようございます」


 昨日の気まずさを引きずっていたらどうしようと思っていたものの、今日のユリウスはいつも通りだった。ホッと胸を撫で下ろす。


「今日は今後の調査方針について、話そうと思う」


 その前に、兄弟ブリューダーという関係について詳しく教えてくれるようだ。


「昨日のブラザー・マテオの話には、いろいろ省かれていたものがあるので、少し補足させてもらう」


 本来であればブラザー・マテオがすべて説明すべきなのだろうが、神学校の教師は必要最小限しかいないようなので、忙しいのだろう。

 それにブラザー・マテオは思考がかなり優等生シュトレーバー寄りになっているように思えるので、ユリウスから説明を聞くのがいいのかもしれない。


「まず、アルヴィに昨日渡した十字架飾りローゼン・クランツには、さまざまな聖術がかけられているらしい。まず、一つ目は守護の聖術だ」


 それは関係を結んだ兄弟ブリューダー以外の優等生シュトレーバーを寄せ付けないための聖術だという。

 昨日、ヨハンに対して発動したものだろう。


「あの、どうしてそのような聖術がかけられているのでしょう?」

優等生シュトレーバーが選ぶ劣等生フェアザーガーは、極めて魅力的な者が多い。そのため、他の優等生シュトレーバーに奪われないように、かけられているもののようだ」


 なんでも過去に、神学校で劣等生フェアザーガーの奪い合いが発生したことがあったそうだ。

 それにより、亡くなった生徒もいたらしい。

 同じ事件を繰り返さないために、兄弟ブリューダーに選ばれた劣等生フェアザーガー十字架飾りローゼン・クランツには、守護の聖術は付与されているようだ。


兄弟ブリューダーから高潔なる兄弟エーデル・ブリューダーになれば、さらに守護の聖術は強力になり、他の優等生シュトレーバーは近づくことさえできなくなるそうだ」


 劣等生フェアザーガー十字架飾りローゼン・クランツには、優等生シュトレーバーが居場所を把握する聖術も付与されているという。

 さらに十字架飾りローゼン・クランツを通じて、遠く離れた場所にいても会話ができるようになるらしい。

 なんて便利なんだ、と思ってしまった。


「すごいアイテムだったのですね」

「アルヴィはいやじゃないのか?」

「何がですか?」

十字架飾りローゼン・クランツにかけられた聖術が。私はやりすぎのように思えるのだが」

「それは――」


 昨日、さっそく十字架飾りローゼン・クランツは私のことを助けてくれた。

 これがなければ、私はケガを負っていたに違いない。


「ありがたいものだと思っています」

「だったらいいのだが……」


 他にも、兄弟ブリューダーには聞いていなかった特典があるようだ。


「図書室はいつでも利用できるようになる」

「それはいいですね」


 通常、図書室は昼休みしか利用できない。

 けれどもそれは劣等生フェアザーガーに限定された決まりだという。

 優等生シュトレーバーはいつでも利用できるようだ。

 なんて不平等な……と思ったものの、今に始まったことではないのだろう。


「購買部では文房具の数々を半額で購入できるようになる。さらに菓子や嗜好品なども販売してもらえるようだ」

「嗜好品、ですか」

「ああ」


 紅茶や珈琲などの健全なものから、酒や煙草などの不健全なものまで購入できるようになるという。


「紅茶や珈琲はまだしも、酒と煙草ですか」

「まあ、年齢だけで言えば、それらは禁じられていないからな」


 アインホルン聖国では、十八歳から飲酒と喫煙が許可されているという。

 けれども基本的に、聖職者はそれらを好むことを推奨していない。

 ただそれも表面上の認識というだけで、酒や煙草が大好きな聖職者は大勢いるという。


「飲酒と喫煙は校内にある決まった部屋、決まった時間のみで、それ以外の場所や時間に行うと処罰が科せられるから注意するように」


 購買部でもそれらの品々の買い方があるようで、聖書の発注ができるか訊ねると、嗜好品の注文書が手渡される。それに記入すると、放課後までに部屋に用意されているようだ。


「事情を知らない劣等生フェアザーガーの前で嗜好品についての会話をすることは禁じられている」

「でしょうね」


 私は酒も、煙草も嗜んでいないので、その点は安心してほしい。

 以上が兄弟ブリューダーになった劣等生フェアザーガーの特典だという。


高潔なる兄弟エーデル・ブリューダーになれば、優等生シュトレーバー専用の食堂が利用できるようになる」

「そういえば、食堂にいなかったですよね」

「別にあるからな。私は利用していないが」

「どちらで食事をされているのですか?」

「食べてない」

「ええ!」


 だからいつも顔色が若干悪いのではないか。そう指摘するも、食べたくないからとはっきり言われる。


「でしたら、今度から一緒に食べませんか?」

劣等生フェアザーガーの食堂でか?」

「無理でしょうか?」

「無理ではないとは思うが、目立つだろう」


 ただでさえユリウスの兄弟ブリューダーになって注目を浴びているというのに、それ以上に視線が集まるのはいただけない。

 けれどもそれ以上に、昼食をまったく食べていないというのが気になった。


「寮ではしっかり食べているんですよね?」

「いいや、食堂は使っていない」

「なっ!? では、普段、どうやって食事をされているのですか?」

「取り寄せたショートブレッドとか、乾燥野菜や果物、肉とかをかじってる」


 そんな乾物中心の暮らしをしていたなんて。

 衝撃を受けてしまう。 

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