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女王陛下の婿探し~専属騎士だけれど、隣国の神学校へ男装し未来の夫を探しに行けと命じられました~  作者: 江本マシメサ
第二章 アインホルン聖国の神学校

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神学校についての噂話

 私が寮の部屋に戻ってくると、ホィンは安堵の表情を見せる。

 どうやら心配をかけていたらしい。

 パウウルも私が夕食に間に合うかどうか、ハラハラしていたのだとか。


「すみません、少し気になることがあって調べに行っていたら、こんな時間になってしまいました」


 フィンがホィンに何か聞いているのかと訊ねても、何かを隠すように挙動不審な様子を見せながら、知らないと答えていたようだ。

 ホィンも私同様、ほどよい嘘を吐くことができないのだろう。

 顔を見合わせ、互いに苦笑してしまう。

 これまで大人しく聞いていたヘィンが、いつになく深刻な表情で喋り始める。


「なあ、もしかして優等生シュトレーバー関連のことなのか?」

「いいえ、クラスメイトの劣等生フェアザーガーが教室に戻ってこなくて、探しに行っただけなんです」


 どうせ隠しても誰かが喋ってしまうかもしれないので、正直に打ち明けた。


「いなくなったのか?」

「まあ、そうですね」


 ヘィンは顔色を青ざめさせ、黙りこんでしまう。

 普段のヘィンだったら、このような反応を見せなかっただろう。


「どうかしたのですか?」

「いや、俺、聞いてしまったんだ」


 なんでも二学年の上級生が、寮の廊下で立ち話しているのを、偶然耳にしてしまったという。


「この神学校では、定期的に生徒が突然いなくなっているらしい」


 この部屋に入るはずだった五名も、そういえば姿を現すことすらなかった。

 絶対に優等生シュトレーバーのせいだ、なんて話をしていたという。


「そのときはまたまた、嘘を言って、なんて思ったんだ」


 けれども今日、クラスメイトからも似たような話を聞いたという。


優等生シュトレーバーに関わって、生意気な態度を少しでも取ったら、強制的に退学させられるらしい」

「なっ――!?」


 たしかに、ハンス、ルーカス、マクシミリアンは優等生シュトレーバーであるユリウスに対し、出過ぎた言動を繰り返していた。

 そしてその後、彼らは姿を消した。

 ブラザー・マテオも三人がいない状況をごくごく当たり前とし、クラスメイトが聞こうものならば、強い言葉で黙らせたのだ。


「アルヴィが知らないだけで、そのクラスメイト達は優等生シュトレーバーに反抗的な態度を見せたのかもしれない」


 ヘィンの話を聞いたホィンは、完全に怯えたような態度でいた。

 フィンは冷静な様子だが、少し顔色が悪い。

 パウウルは完全に信じていないようで、疑うような表情を浮かべているように見えた。


「アルヴィはどう思う?」

「わかりません」

「でも、クラスメイト達がいなくなったんだろう?」

「ええ、そうですが……。まあ、彼らも寮に戻って、夕食を楽しみにしているかもしれませんし」 


 なんて明るく言ったものの、夕食を食べるさいにハンス、ルーカス、マクシミリアンの姿を探したものの、見つけることはできなかった。

 ホィンも同じように探していたのだろう。

 キョロキョロしていたら彼と目が合った。今にも泣いてしまいそうなくらい、不安げな様子でいる。

 私が持ち込んだ騒動と、ヘィンの噂話の影響で、すっかり怖がらせてしまった。

 申し訳ない気持ちになったのは言うまでもない。


 その後、奉仕活動を行い、祈りの時間を行ったあと、入浴、そして一日最後の祈りを捧げる。

 夜もやることがいろいろあって大忙しだった。

 そのおかげで、ハンス、ルーカス、マクシミリアンについて考えずに済んだのだが。

 部屋に戻ると、窓に葉っぱが一枚差し込まれていることに気付く。

 もしかしたらエリザベータがセシリアからの手紙を届けてくれたのかもしれない。

 皆が寝静まったのを確認したあと、窓をそっと開く。

 すると、木の枝に手紙が結ばれていた。

 風が強い夜だった。

 飛ばしてしまわないように気をつけつつ手に取る。

 小さな角灯の灯りで、セシリアからの手紙を読み始めた。

 セシリアからは無事神学校へ潜入できたことによるお褒めの言葉と、慎重に行動するようにという内容が簡潔に書かれている。

 そして追伸に我が目を疑うようなメッセージが書かれていた。


 〝神学校の裏庭は、放課後に高潔なる兄弟エーデル・ブリューダーになった恋人達が逢瀬を楽しむ場所みたいなの。絶対に調べてきて〟


 やはりそうだったのか!! と叫びそうになったものの、寸前でごくんと呑み込んだ。

 私とユリウスはそうとは知らず、ハンス、ルーカス、マクシミリアンの三人を探すためにのこのこと裏庭に行ってしまったのだ。

 この件に関してはセシリアの期待通りの場所だった、と報告するしかないのだろう。

 いいや、このような報告など、急ぎのものではない。まず先に、セシリアの夫候補たるヨハンの存在について知らせなければ。

 まだ知り合った程度で、オブリガシオン王国に連れて帰れるかすらわからない。

 けれどもヨハンみたいな男性との出会いがあった、と報告する程度であれば問題ないだろう。

 あと二、三人くらい候補が欲しいところだが……。

 ふと、ユリウスの顔が脳裏に浮かんだ。

 けれども彼はどちらかと言えば、セシリアと同じタイプのように思える。

 性格や雰囲気が似ているのはもちろんのこと、物事の考え方も近いように思えてならなかった。

 セシリアに似ていたからこそ、彼と上手く話せたのかもしれない。

 ユリウスについても報告してみるものの、きっと気に入るのはヨハンのほうだろう。

 ずっと傍にいるので、セシリアが考えそうなことはそれとなくわかるのだ。 

  優等生シュトレーバーだけでなく、劣等生フェアザーガーにもセシリアの夫候補となりうる男性がいるかもしれない。

 さらに一学年だけでなく、二学年の生徒についても調査を広げる必要がありそうだ。

 問題はどうやって国へ連れて帰るか、というものだ。

 それについてはセシリアが気に入った夫候補と仲よくなって、自然な感じにオブリガシオン王国に遊びに連れて行くしかないのだろう。

 考えているうちに、それがいいのではないか、と思うようになる。

 せっかく夫候補たる男性を連れて行っても、セシリアが気に入らない可能性があるから。

 いい感じに考えがまとまったので、眠ることにした。


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