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女王陛下の婿探し~専属騎士だけれど、隣国の神学校へ男装し未来の夫を探しに行けと命じられました~  作者: 江本マシメサ
第二章 アインホルン聖国の神学校

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神学校の霊廟

 聞いた瞬間、ゾッとする。

 どうして神学校に霊廟があるのか。


「う、うわあ!」


 ホィンが突然叫んで、後ろに転んで尻を打つ。

 霊廟のほうを見て、何かに怯えているようだった。


「どうしました?」

「で、出入り口に、人の手が! 白骨化した手が見えたんだ?」

「手?」


 それを聞いたクラスメイト達が悲鳴をあげて逃げていく。


「おい、待て!!」


 ブラザー・マテオは逃げたクラスメイト達を追いかけていった。

 私が確認するよりも先に、ユリウスが出入り口の扉を調べてくれた。


「ああ、これは木の枝だ」

「き、木の枝?」

「ほら」


 ユリウスは豪快に蔦ごとちぎって、ホィンに見せる。


「ほ、ほんとだ、白骨化した手、じゃない」


 霊廟に絡みついていた蔦が、木の枝を巻き込んで伸びていただけのようだった。


「な、なーんだ! ははは……はあ」


 ぐったりうな垂れるホィンに手を貸し、立ち上がらせる。


「アルヴィ、ごめん、ありがとう。それから優等生シュトレーバーユリウス・フォン・アイスフェルト君も」


 ユリウスのことを、ブラザー・マテオと同じように呼ぶホィンに笑ってしまう。


「その呼び方は止めろ。ユリウスでいい」

「え、いいの?」

「長々と呼ばれるほうが面倒くさいだろう」


 するとホィンは嬉しそうにニコッと微笑む。

 ほのぼのとした空気が流れていたものの、霊廟の扉が突然閉まったのでびっくりしてしまう。

 ユリウスは冷静に、術者がいなくなったから閉まったのだろうと言った。


「あ、あはははは、そ、そうだよね!」

「それにしてもこの霊廟は不気味だな」

「ええ。どうして神学校に霊廟があるのでしょうか?」


 ここが一般的な教会であれば不思議でもなんでもない。

 けれどもここは神の教えを学ぶ、聖職者候補が通う神学校である。

 ユリウスは何か知っているようだった。


「ここは――」

「おい、お前達、何をしている! 向こうに皆集合しているぞ!」


 ブラザー・マテオが戻ってきたので、私達はクラスメイト達と合流することとなった。


 校舎と敷地内の見学で午前中が終了した。

 お昼は食堂に行き、昼食をいただく。

 ここでも皆でわいわい食べるのではなく、クラスごとに座って、黙って食べることが基本だった。

 昼食のメインはムール貝のミルクスープ。

 ムール貝はどこにあるのだろうか、と探さないといけないくらい、細かく切り刻まれていた。

 それからレバーペースト。

 久しぶりの肉だ……と感激したのは言うまでもない。

 たとえそれがペースト状の肝でも。


 食事は完食した者から食堂を出て行かないといけない。

 ホィンはレバーペーストが苦手なのか、もう少し時間がかかるようだ。

 頑張れと心の中でエールを送り、食堂をあとにする。


「ちょっといいか?」


 廊下で私に声をかけてきたのは、クラスメイト達だった。

 たしか私と同じ劣等生フェアザーガーで、名前はハンスにルーカス、マクシミリアンだったような。


「何か用事ですか?」

「少し聞きたいことがある」

「ここでは話せない」

「裏庭に来てくれ」

「わかりました」


 いったいなんなのだろうか、と思いつつも、クラスメイトとは仲よくしたい。

 セシリアの夫候補を探すためには、交友関係を広げる必要がある。

 ハンス、ルーカス、マクシミリアンの三人は名前に〝フォン〟がついていたので、貴族出身だろう。

 優等生シュトレーバーではないので中位から低位貴族だろうが、セシリアは家柄を重視していなかった。

 まずは彼らが長男かどうか、聞けるくらいまでには仲よくなりたい。


 裏庭は思っていたよりも薄暗くて、人の気配がない静かな場所だった。

 そういえば、ブラザー・マテオは裏庭を案内してくれなかった。

 神学校内をすべて案内するとか言いながら、霊廟を飛ばしたり、裏庭を紹介しなかったり、とあんがいうっかりさんなところがあるものだ。


「それで、聞きたいというのは?」


 なるべくにこやかに、友好的に見えるように話しかけてみる。

 しかしながら彼らが放った言葉は、想像もしえないものだった。


「お前、生意気なんだよ!!」

「ユリウス様に話しかけられたからって、調子に乗るんじゃねえ!!」

「痛い目に遭いたくなかったら、二度と話さないと誓え!!」

「わあ……」


 これは俗に言う、示威行為よびだしというものではないのか。

 仲よくなれるかも! なんて勘違いし、のこのこついてきてしまった。

 そういえば騎士見習い時代も、同じようなことがあったような。

 あのときも、仲よく稽古ができると思って、ついていってしまったのである。

 私はまったく学習しない。

 大いに反省しよう。


「おい、無視するな!!」

「話しかけているだろう!?」

「びびって声も出なくなったのか!?」

「いえ……そういうわけではないのですが」


 いったいどうやったら穏便に済ませられるのか。

 逃げるが勝ちなのだろうが、彼らはクラスメイト。

 帰る先は同じだ。

 ここで解決しないと、どうにもならない。


「一発殴らないとわからないようだな!?」

「おい、歯を食いしばれ!!」

「ブラザー・マテオには密告するなよ!?」


 ああ、どうしようか。

 なんて思っていたら、木から人が振ってきて驚く。

 漆黒の髪に、広い背中、長い手足を持つ男子生徒に見覚えがあった。


「うわあ!!」

「お、お前は!?」

「だ、誰だ!?」


 正面から顔を確認しなくてもわかる。

 ヨハン・フォン・ドライヤー。

 彼は新入生代表の挨拶をした、学年首席の優等生シュトレーバーだ。


 

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