【現代ファンタジー】#3/豚の貯金箱
【蓄積の豚】
小さい頃からお小遣いを使い、趣味である宝くじを買っている女性。
今日もはずれのスクラッチをゴミ箱へ捨てる。
まあこんなもんだ。むしろ、このあといいことが起こる前触れだ。女性の心は晴れていた。
彼女にとって宝くじというものは、当たっても当たらなくてもどちらでもよかった。
結果がわかる前のあのドキドキ感が大好きで、ずっと続けているのだ。
そんな女性が社会人となり、一人暮らしを始めた時に、昔ながらの豚の貯金箱を骨董品店で買った。
その豚には、買い物をした後の細々した小銭や、相変わらず趣味で買っている宝くじの、少額の当たり金をちまちま背中から食べさせていた。
それが何年も続き、もうすぐ豚のお腹がいっぱいになろうとした時、不幸が始まった。
──
仲の良かった上司や同僚、会社の知り合いが突如として人が変わったように性格が変わり、職場の人間関係が悪化した。
パワハラ、セクハラ、モラハラなど嫌がらせを受け、仕事のミスを女性になすりつけるようになる。
女性はストレスが溜まって体調を崩すようになり、ふらふらしながら出社している時、赤信号を無視した車にはねられ数カ月の入院。
その間に会社からクビにされ、入院中に父親が病に倒れて病院生活となり、そちらにも治療費を出したため貯金はあっという間に底をついた。
こんな不幸続きな女性に、色々身の回りを支えてくれていた彼氏が音を上げてしまい一方的に振られてしまう。
退院して帰ると、アパートの前で大家と再会した。
するといきなり、家賃が払われていないから、明日には出ていってくれと言われてしまった。たしかに毎月支払いをしていたのに。
満身創痍な状態で自分の部屋へ帰ってきた。
なんと中は荒らされていた。明らかに泥棒が入った形跡だった。
そして、隠しておいたお金や金目の物がほとんど盗られていた。
再び外に出て大家に説明するも、「そんなの自己責任だから」と言われるだけだった。
すると、妹から電話がかかってきた。
なんでも母親も心労がたたって倒れてしまい、病院へ運ばれてしまったという連絡だった。
ふらふらしながらもなんとか部屋へ戻った女性は、へたり込んでしまい動けなくなってしまった。
涙も出ずにただただ呆然としていた。
「──なんだこれ」
何も考えられない女性が、かろうじて絞り出した声だった。
手元には、運良く盗まれなかった豚の貯金箱が横に転がっていた。
何かにぶつけないとやってられない女性が怒りに身を任せて投げようと手に持ったその時、不思議な事が起こった。
豚の下腹部分が白く光っているのだ。見間違いではなく、たしかに発光している。
不思議そうに女性が見つめていると、勝手に豚の腹が割れ、蓄えていた小銭がじゃらじゃらと地面に散らばってしまった。
白く光っていたのは豚の腹ではなく、人生で初めて当選した五百円玉だった。この貯金箱の縁担ぎとして女性が最初に入れた硬貨で、間違って使わないようにお気に入りのシールを貼っていた。
それが強烈に輝いている。
その五百円玉を手に取り、しばらく見つめるボロボロの女性。
死んだような目でしばらく見つめていると──
「ッッ!!」
──途端、目に力が戻ったかと思うと、硬貨を握りしめて慌てて部屋を飛び出していった。
──今日はサマージャンボ宝くじの販売日。
──この年の一等は、女性の家から一番近い宝くじ売り場で出たそうだ。




