【日常】#4/アイマスク
【へたくそな夜明け】
※『【日常】#1/三味線』の続きです。
今日も小さなライブハウスでライブを終えた三味線少女ロッケン。
夜遅く。オンボロアパートの自分の部屋に帰ってきた。
共同風呂のため、必ず誰か入っているか確認しなければならないが、部屋に入る前に覗くと、電気が点いていなかった。
ロッケンは急いでタオルや着替え、石鹸を持ってお風呂へと向かい、無事に入ることができた。
就寝前、エレキ三味線にヘッドホンのケーブルを挿し、自分の耳にも装着した。
そして、アイマスクを付けて手元を見ずに三味線の練習を始めた。
真っ暗のなか、自分のイメージの指と糸が鮮やかに現れる。さらに激しく動く三味線と、広いステージの上、大勢の客を最高潮に盛り上げている自分の姿まで目に浮かぶ。
だが、脳内のロッケンは、かなりミスが目立っていた。
(くぅぅ……今日はやけにズレちゃうなぁ。ここ最近で一番へたくそだ──まあでも、こういう駄目な日があってもいいか)
一時間ほど練習したロッケン。
この日は結局調子が上がらず、歯車が噛み合わない感覚のまま終わらせ、エレキ三味線のメンテナンスをし、丁寧に置く。
歯を磨いて、畳んである布団を広げて横になって目をつぶる。
頭の中ではさきほどまで練習していた曲が流れていた。
ロッケンは目を開けずに、布団の中で軽いエアー三味線で練習を始めた。
(あぁ──やっぱり、三味線、楽しいなぁ〜)
堪らず布団から抜け出して、再びエレキ三味線とヘッドホンをセット、アイマスクを付けて演奏を始める。
さっきのズレとは打って変わり、ミスの無い、ノリに乗った演奏ができた。
(ふぅ。やった。よしっ! もう一回っ!)
結局この夜、ロッケンは一睡もせずにずっと三味線を弾き続けていた。




