友達という名の難問
こんにちは! あまはる です!
この物語を手に取っていただきありがとうございます。
※本作は史実を元にしたフィクションです。
実在人物を題材にしていますが、人物描写・会話・逸話などに独自解釈と創作を多く含みます。
気持ちにゆとりを持って読んでください<(_ _)>
更新は21:00です。
祝言からしばらく。
最近、誾千代は大分生活に慣れていった。
宗茂の顔を見ると赤くなる。
それは相変わらずだ。
視線が合えば心臓も跳ねる。
それも変わらない。
だが。
以前のように固まることもなく、逃げることも無くなった。
そして何より。
普通に会話ができるようになった。
たま曰く。
「大進歩でございます」
らしい。
誾千代自身もそう思う。
昨日など、
「おはようございます」
と普通に挨拶できた。
素の濱千代の姿が、少しずつ出てきていた。
最近、宗茂にも分かり始めたことがある。
立花誾千代は予測できない。
良くも悪くも。
本当に予測できない。
その日も――
「旦那様」
誾千代がやって来る。
楽しそうだった。
宗茂は小さく首を傾げる。
最近分かってきたことがある。
この人は、楽しそうな時ほど予想外のことを言う。
「鍋やるの」
「鍋ですか」
「うん」
そこまでは普通だった。
寒くなれば鍋くらいする。
問題はその次だった。
「友達呼ぶ」
宗茂は頷く。
「誰を?」
「義弘ちゃん」
宗茂の動きが止まった。
「義弘ちゃん?…島津義弘殿ですか」
「うん」
即答だった。
「歳久ちゃんも来るよ」
「島津歳久殿も」
「うん」
宗茂は黙る。
島津家。
今、九州で最も勢いのある一族である。
その名が鍋の参加者として出てくる時点で十分おかしかった。
「あと龍造寺のおじちゃん」
「龍造寺隆信殿ですか」
「うん」
宗茂は今度こそ黙った。
「なぜ」
「友達だから」
即答だった。
宗茂は言葉を失う。
友達。
その一言で説明できる範囲を超えている。
「旦那様も来る?」
「行きます」
宗茂は即答した。
誾千代が目を丸くする。
「え、ほんと?嬉しい!」
誾千代は大きな目を輝かせながら宗茂を見る。
「……確認したいので」
「確認?」
「島津家と龍造寺家が同じ席に集まるのですよね」
「うん」
「本当に大丈夫なのですか」
誾千代が首を傾げる。
「なにが?」
「例えば」
一拍。
「毒を盛られるとか」
「誰が?」
「誰が、ではなく」
宗茂は言葉を探した。
「普通は警戒するものでは」
「しないよ?」
誾千代は即答した。
「義弘ちゃんだよ?」
「龍造寺のおじちゃんだよ?」
「………」
宗茂は言葉を失った。
誾千代は、本気で何を言われているのか分かっていない。
「大丈夫だよ」
誾千代は笑う。
「みんな良い人だから」
宗茂は黙る。
島津義弘。
龍造寺隆信。
九州中に名を轟かせる武将たちである。
良い人かどうかはともかく。
鍋へ呼ぶ相手ではない。
少なくとも普通は。
「何持って行こうかな」
誾千代はもう鍋のことで頭がいっぱいだった。
「ごまさばかな」
「明太子かな」
「モツもいいな」
指を折りながら考えている。
宗茂は静かに息を吐いた。
(……本当に集まるのだろうか)
島津家。
龍造寺家。
九州でも指折りの大名たちでり、敵である。
そんな者たちが集まって鍋を囲む。
常識では考えられなかった。
だが。
(いや)
(来そうだな)
それが一番恐ろしい。
誾千代は楽しそうに笑っている。
そして宗茂はまだ知らない。
この鍋が想像以上に賑やかなものになることを。
ここまで読んでいただき、ありがとうございました。




