西国無双
こんにちは! あまはる です!
この物語を手に取っていただきありがとうございます。
※本作は史実を元にしたフィクションです。
実在人物を題材にしていますが、人物描写・会話・逸話などに独自解釈と創作を多く含みます。
心にゆとりを持ってお読みください(^^)
更新は21:00になります♬.*゜
九州の戦は、終わろうとしていた。
島津軍は南へ退き、
豊臣軍は各地を制圧していく。
長く燃え続けた戦火が、
ようやく静まり始めていた。
◇
立花山城。
朝。
城の空気は、これまでと明らかに違っていた。
「……静かだ」
誰かがぽつりと呟く。
もう、矢の音に飛び起きる必要はない。
木の葉が揺れる物音へ耳を澄ませることも。
城壁から石を落とすことも。
島津の鬨の声に身を固くすることも。
◇
「飯だァ!!」
「白飯だ!!」
「粥じゃないぞ!!」
城内で歓声が上がる。
泣いている兵までいた。
「味する……」
「塩がある……」
「生きてる……」
かなり切実だった。
薦野増時が、
死んだ顔のまま白飯を見つめている。
「……米ってこんな美味かったんですねぇ……」
「ホント、うまいな!」
味わって食べる薦野の横で、十時連貞が豪快に飯を掻き込んだ。
◇
宗茂は城壁から南を見ていた。
もう島津の軍旗は見えない。
風だけが吹いている。
「旦那様」
誾千代が隣へ並ぶ。
「終わったね」
宗茂は小さく息を吐いた。
「ああ」
夕暮れの風が、城壁の上を静かに抜けていく。
誾千代の短く切った髪が、風に揺れて乱れた。
宗茂がそっと手を伸ばす。
指先が髪に触れた。
乱れた髪をすくい上げるようにして、耳へ掛ける。
誾千代が固まる。
「だ、旦那様……?」
宗茂は気にした様子もなく、その髪を見つめる。
そして少しだけ笑った。
「戦も終わった」
誾千代の黒い瞳を見つめる。
「そろそろ伸ばせるな」
誾千代は瞬きをした。
宗茂との距離に
顔が熱くなった。
◇
豊臣軍本陣。
「島津、薩摩方面へ後退」
「九州、ほぼ平定にございます」
報告を聞きながら、黒田官兵衛が小さく息を吐く。
「終わりましたな」
その横で、小早川隆景が頷いた。
「ええ」
細い目が、静かに細められる。
「今回、一番名を上げたのは誰でしょうか」
官兵衛が扇を軽く揺らす。
「立花宗茂ですか」
「島津相手に、よくあそこまで戦いましたな」
隆景も静かに頷く。
「正面から押し切る強さもある」
「ですが」
「引くべき所では、きちんと止まる」
細い目が静かに細められる。
「敵に回したくない男ですな」
「立花山城も落ちなかった」
「むしろ島津を削り続けたとか」
「撤退戦でも食らいついたらしい」
豊臣諸将の間でも、すでにその名は広がり始めていた。
「立花宗茂――」
誰かが呟く。
官兵衛が小さく笑う。
「西国無双、か」
その言葉に、何人もの武将が静かに頷いた。
◇
その頃。
豊臣秀吉もまた、九州の報告を受けていた。
「島津を止めたのは誰や?」
秀吉が問う。
側近が頭を下げた。
「立花宗茂にございます」
「ほぉ」
秀吉が目を細める。
「若い立花の婿やったか」
「はい」
「立花山城を守り抜き、さらに島津を押し返したとか」
秀吉が笑った。
「面白い男やのう」
「会うてみたいわ」
◇
夜。
立花山城の上に、静かな月が浮かんでいた。
長かった九州の戦は、終わりを迎えようとしている。
立花宗茂の名は、ここからさらに天下へ広がっていく。
西国無双。
そう呼ばれる男の時代が、静かに始まろうとしていた。
ここまで読んでいただき、ありがとうございました。
西国無双!(^^)
次は最終回です(⁎ᴗ͈ˬᴗ͈⁎)




