退く島津
こんにちは! あまはる です!
この物語を手に取っていただきありがとうございます。
※本作は史実を元にしたフィクションです。
実在人物を題材にしていますが、人物描写・会話・逸話などに独自解釈と創作を多く含みます。
心にゆとりを持ってお読みください(^^)
更新は21:00になります♬.*゜
島津軍は、南へ退いていた。
軍旗は、まだ揺れている。
隊列も完全には崩れていない。
だが。
もう北へ向かう勢いはなかった。
◇
島津本陣。
「立花勢、停止しました」
報告を聞いた義弘が、
「……助かった」
頭を掻きながら安堵の息を吐いた。
本音だった。
歳久が静かに頷く。
「止まりましたな」
「ああ」
義弘が空を見上げる。
「宗茂、押してくる時は怖いのに、
無茶するところまでは来ないんだよなぁ……」
「勢いだけではありませぬ」
「そこが嫌なんだよ」
苦い声だった。
一拍。
「真正面から押し切られるとは思わなかった」
「殿も耐えておりましたが」
「耐えてたんだけどなぁ……」
義弘が苦笑する。
「殿軍割られるの、久しぶりだ」
頭を掻きながら笑う。
「義弘様」
家臣が慎重に口を開く。
「このまま南へ?」
「ああ」
義弘は頷いた。
「九州は、一回退く」
本陣が静まる。
負けた。
それは皆、理解していた。
だが。
義弘は、まだ前を向いていた。
◇
山道には、まだ血と土の匂いが残っていた。
立花兵たちが、ようやく小さく息を吐き始める。
「終わった……?」
「た、助かった……」
座り込む兵までいる。
長かった。
島津の包囲。
夜襲。
消耗。
ずっと張り詰めていた。
だが。
ようやく終わりが見え始めている。
宗茂は馬上から南を見ていた。
退いていく島津軍。
その背は、まだ強い。
完全に崩れたわけではない。
だが。
九州の流れは変わった。
「旦那様」
「勝ったね」
宗茂は静かに頷く。
「ああ」
一拍。
「お前がいてくれて助かった」
一瞬。
誾千代が目を瞬かせる。
それから、じわっと口元が緩んだ。
十時が横で吹き出す。
「姫様、今のは効きましたねぇ」
「うるさい!」
だが、口元は全然隠れていなかった。
宗茂が小さく笑う。
◇
昼。
豊臣軍本陣。
「島津、南へ後退」
「立花勢、追撃後に停止」
報告を聞いた黒田官兵衛が、静かに笑った。
「やはり噛みつきましたか」
その横で、小早川隆景が頷く。
「しかも、追いすぎぬ」
一拍。
「立花宗茂」
細い目が静かに細められる。
「若いのに、完成しておりますな」
◇
夕日が山を赤く染めていた。
立花山城。
その城壁の上で、宗茂は静かに南を見ている。
遠く。
島津の軍旗は、もう小さくなっていた。
九州の戦は、終わろうとしている。
長く燃え続けた戦火が、ようやく静まり始めていた。
そして――
豊臣本軍は、なお九州を進軍している。
戦は終わる。
立花の名は、これからさらに広がっていく。
ここまで読んでいただき、ありがとうございました。
島津軍との戦いはこれにて終了です(*´ω`*)




