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旦那様が好みすぎる

こんにちは! あまはる です!

この物語を手に取っていただきありがとうございます。

※本作は史実を元にしたフィクションです。

 実在人物を題材にしていますが、人物描写・会話・逸話などに独自解釈と創作を

 多く含みます。

寛大な心でお読みください

 立花山城の奥。


 広間には静かな緊張が漂っていた。


 上座に座るのは、立花道雪。

 片足の不自由を感じさせぬ威圧感。

 鋭い眼光。

 ただそこにいるだけで、場の空気が張り詰める。

 家臣たちも自然と背筋を伸ばしていた。


 その中に、一人の青年がいる。


 立花宗茂。


 まだ若い。

 だが、その姿にはすでに武将としての風格があった。

 背筋は真っ直ぐ。

 無駄な力みがない。

 静かだが、芯の強さを感じさせる。

 そして何より。


 顔が良かった。


 家臣の一人が小声で呟く。


「……噂以上だな」


「女子なら一目で惚れるぞ」


「武将にするには惜しい顔だ」


 だが宗茂本人は、そんな視線を気にした様子もない。

 むしろ落ち着いていた。

 道雪はその様子をじっと見ている。


「宗茂」


「はっ」


「お前は立花を背負えるか」


 広間の空気が重くなる。

 簡単な問いではない。

 立花家を継ぐ。

 それは、九州の乱世を生き抜くということ。

 命を懸ける覚悟が必要だった。

 宗茂は静かに答える。


「未熟ではございます」


「……」


「ですが、お預けいただけるならば、この命をもってお応えいたします」


 迷いのない声だった。

 家臣たちが息を呑む。

 道雪の目が細くなる。


「口だけではあるまいな」


「はい」


 宗茂はまっすぐ道雪を見返した。

 普通ならば、その眼光だけで萎縮する。

 だが彼は逸らさない。

 その胆力に、家臣たちは感心していた。

 道雪はふっと鼻を鳴らす。


「……悪くない」


 その時だった。

 広間の外から、ばたばたと足音が聞こえてくる。


「姫様! 走らないでくださいませ!」


「だって転びそうなんだもん!」


「走っているからです!」


 障子の向こうが騒がしい。

 家臣たちが一斉に視線を向けた。

 宗茂もそちらを見る。


 次の瞬間。

 勢いよく障子が開いた。


「父上ー!」


 現れたのは、一人の少女だった。

 鮮やかな小袖。

 きちんと結い上げられた黒髪。

 先ほどまで山を駆け回っていたとは思えないほど、美しく整えられている。

 だが。

 息は切れていた。

 そして。


「たま、帯きつい!」


 第一声がそれだった。

 広間が静まる。

 たまは後ろで頭を抱えた。


「姫様ぁ……!」


 誾千代はそんな空気に気づいていない。


「あれ?」


 そこでようやく、客人の存在に気づく。

 黒い瞳が宗茂を見る。


 宗茂もまた、誾千代を見ていた。


 その瞬間。


 時間が止まった。


(え?)


 誾千代の思考が止まる。


 整った顔立ち。


 涼やかな目元。


 武人らしい引き締まった雰囲気。


 それでいて、不思議と威圧感がない。


(なにこの人)


(ちょっと待って)


 誾千代の中で何かが崩れる。


(え、うそ)


(めちゃくちゃ好みなんだけど)


 噂は誇張だと思っていた。


 だが実物は、予想以上だった。


 いや。


 予想の遥か上だった。


 宗茂は静かに口を開く。


「初めまして」


 その声は落ち着いていて、よく通った。


 そして、わずかに微笑む。


 その瞬間。


 誾千代の中で、何かが落ちた。


(この人が……)


(私の旦那様……?)


 息が止まる。


 身体が固まる。


 そのまま――


 後ろに倒れた。


「姫様ぁぁ!!」


 たまの悲鳴が広間に響く。


 家臣たちがどよめいた。


「誾千代!」


 さすがの道雪も片眉を上げる。


 宗茂だけが静かに首を傾げた。


「……大丈夫でしょうか」


 たまは半泣きで叫ぶ。


「旦那様が好みすぎて倒れただけでございます!!」


 広間が静まり返った。


 誾千代本人だけが、真っ赤な顔で倒れていた。

ここまで読んでいただき、ありがとうございました。

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