表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
『西国最強の夫婦まかり通る! 〜旦那様は今日も素敵です〜』  作者: 平子 天陽


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
27/31

逃がさない

こんにちは! あまはる です!

この物語を手に取っていただきありがとうございます。

※本作は史実を元にしたフィクションです。

 実在人物を題材にしていますが、人物描写・会話・逸話などに独自解釈と創作を多く含みます。

心にゆとりを持ってお読みください(^^)

更新は21:00になります♬.*゜

 島津軍が、退き始めた。

 立花山城を包囲していた大軍が、南へ動き出している。


 豊臣本軍、九州上陸。

 その報せが、戦場を変えた。

 

 立花勢は、この好機を見逃さなかった。


 ◇


 夜。


 高鳥居城近くの山道。

 島津軍が、暗い山道を列を組んで退いていた。


「急げ!」


「荷駄を先に出せ!」


「隊列崩すな!!」


 怒号が飛ぶ。


 兵たちの顔には、疲労と焦りが滲んでいた。

 豊臣本軍、九州上陸。

 その報せは、島津軍にも重くのしかかっている。


 急がなければならない。

 だが、隊列は崩せない。

 その緊張が、兵たちの動きを硬くしていた。


 ◇


「……静かですな」


 前線兵がぽつりと呟いた。


「だから怖いんだろうが」


 即答だった。


 風の音しか聞こえない。


 その時。

 山の上で、何かが動いた。


「っ!?」


「敵――」


 叫びかけた瞬間。


 ――パァン!!


 乾いた鉄砲音が夜を裂く。


 続けて鬨の声。


「立花だァァァ!!」


 ◇


 闇の中から、立花勢が一気に駆け下りてくる。


 速い。

 とにかく速い。


「止めろ!!」


「槍合わせろ!!」


 島津兵が慌てて前へ出る。


 その左翼へ、黒馬が飛び込んだ。

 月光を弾く黒胴。

 風を裂くように翻る袖。

 短く結った黒髪の奥で、大きな瞳だけが鋭く光る。


 立花誾千代だった。


 薙刀が夜気を裂く。

 槍を払う。

 そのまま馬をねじ込み、隊列を押し崩した。


「左、空いてる!」


「押せ!!」


 立花兵が一気に雪崩れ込む。


「またあの姫だァ!?」


「なんで毎回先頭にいるんだ!!」


 島津兵たちが悲鳴を上げた。


 ◇


 その中央を割ったのは、別だった。


 黒の具足。

 兜の前立てには、金の月輪。

 腰には雷切。

 夜戦の中でも、その姿だけが異様に目立った。


「騎馬だ!!」


「来るぞ!!」


 一瞬。


 島津兵の目が見開く。


「大将首だァ!!」


「立花宗茂!!」


 槍衾が、一斉に前へ出た。


 宗茂は止まらなかった。

 雷切を抜く。

 白刃が月光を弾いた。


 次の瞬間。

 槍の穂先が宙を飛ぶ。


「っ――」


 踏み込んだ勢いのまま、返す刃。

 島津兵が血を散らして倒れた。


 止まらない。


 二人目が斬りかかる。

 宗茂は馬を半身にずらし、その懐へ入り込んだ。


 短い斬撃。

 喉元。

 島津兵が声もなく崩れ落ちる。


「な――」


「速――」


 言葉が終わらない。

 宗茂はもう次へ出ていた。

 雷切が夜気を裂く。


 一人。


 さらに一人。


 前へ出るたび、隊列が割れていく。


 速い。

 いや、速すぎる。

 島津兵の槍が追いつかない。


「止めろ!!」


「止まらん!!」


「なんだあの動き……!」


 混乱が広がる。

 そこへ十時勢が雪崩れ込んだ。


「はい崩れたァ!!」


「押せ押せぇ!!」


 十時の怒号が飛ぶ。

 勢いのまま島津を押した。


 宗茂は、さらに前へ出る。


 敵兵が斬りかかる。

 雷切が走る。

 火花。

 次の瞬間には、相手が落ちていた。


 馬ごと踏み込む。

 隊列が裂ける。

 そのまま抜ける。

 止まらない。

 迷わない。

 踏み込むたび、

 崩れる場所だけを正確に斬り抜いていく。


「宗茂を止めろ!!」


「止まりません!!」


「とにかく強いんです!!」


 完全に混乱していた。

 退却戦では、一瞬の乱れが命取りになる。

 島津軍は、まだ崩れていない。


 だが。


 立花勢は、その隊列の綻びだけを正確に噛み破ってくる。

 しかも先頭にいるのは、立花宗茂。

 あまりにも厄介だった。


 ◇


「旦那様!」


 誾千代が馬を飛ばして戻ってくる。

 頬には土と汗。

 鎧にも砂が散っていた。

 だが、その目は妙に輝いていた。


「右翼、押し込んだよ!」


「上出来だ」


 誾千代の顔がぱっと明るくなる。


 宗茂は短く頷いた。


 その横顔が妙に格好良くて、

 誾千代は見とれた。


「でも、まだ崩れていない」


 宗茂の言葉に誾千代が南を見る。


「殿が残ってる。退きながら槍を返してきた」


 さらに宗茂が言う。


「やっぱり島津は強いね」


 誾千代が静かに頷いた。



 宗茂が再び前へ出る。


 黒馬が加速した。

 島津兵が慌てて槍を向ける。


 雷切が、一瞬でその間を裂いた。


「っ――!」


 一人。

 さらに一人。


 斬り抜けるたび、前線が崩れていく。

 月輪の前立てが月光を弾いた。

 その姿が、夜戦の中で異様に映える。


「……格好いい……」


 誾千代がぽつりと呟く。

 完全に見惚れていた。

 十時が横で吹き出す。


「姫様、顔出てますよ」


「だって格好いい!」


「知ってます」


「たまに報告しないと」


「見惚れるのは後にしてください」


 十時は呆れたように言った。

 

 ◇


 島津本陣。


「高鳥居城、維持困難!!」


「立花勢、追撃継続中!!」


「宗茂、前線確認!!」


 報告が飛び込むたび、空気が重くなる。

 島津義弘は腕を組みながら、その報告を聞いていた。


「……やっぱり来たなぁ」


 義弘が露骨に顔をしかめる。


 歳久が静かに頷いた。


「立花が、この機を逃すはずありませぬ」


「だよなぁ……」


 一拍。


「しかも先頭に宗茂いるしなぁ……」


「おりますな」


「大将が前に出てくるの、本当に嫌なんだけど」


 その言葉に。


 家臣たちが義弘を凝視する。


 歳久がゆっくり口を開いた。


「……義弘兄上も、人のことは言えませぬ」


「俺はいいんだよ」


「何がです」


「島津だから」


「立花もそう思っておりますよ」


 義弘が嫌そうな顔になった。


 その直後だった。


「義弘様!」


「宗茂、敵前列を突破!!」


「なお追撃中!!」


 本陣の空気が重くなる。

 義弘は深く息を吐いた。


「頭で戦う男かと思ってたんだけどなぁ……」


 一拍。


「なんであんな強いんだ」


 本気で嫌そうだった。

 歳久が静かに答える。


「立花ですので」


「嫌な説得力だなぁ……」


 ◇


 燃える高鳥居城を背に

 宗茂は静かに夜空を見上げた。


 豊臣が来た。


 戦は変わる。

 だが――まだ終わってはいない。

ここまで読んでいただき、ありがとうございました。

宗茂、弓の腕前もすごいらしいです(*´ω`*)

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ