誾千代、小姓になる
こんにちは! あまはる です!
この物語を手に取っていただきありがとうございます。
※本作は史実を元にしたフィクションです。
実在人物を題材にしていますが、人物描写・会話・逸話などに独自解釈と創作を多く含みます。
心にゆとりを持ってお読みください(^^)
更新は21:00になります♬.*゜
島津が、北へ伸びていた。
龍造寺を失った九州は、目に見えて形を変え始めている。
肥後が揺れる。
国境が軋む。
落ちた城の名が、次々と報として届いていた。
昨日まで龍造寺方だった地が、今日には島津の旗へ変わっている。
そして。
その流れを食い止めるため、大友方も兵を動かし始める。
南関峠。
肥後へ通じる要所。
そこへ向け、各地で徴兵が始まっていた。
空気は重かった。
城下には人が増えている。
槍を運ぶ者。
兵糧を積む者。
名を呼ばれ、顔を強張らせる若者たち。
戦支度が、日常の景色へ入り込み始めていた。
「次!」
怒鳴り声が飛ぶ。
並ばされた若者たちが、順に前へ出る。
名を書かれ、槍を渡される。
その手つきは、ぎこちない。
当然だった。
昨日まで畑を耕していた者もいる。
魚を獲っていた者もいる。
それでも今日からは兵だった。
宗茂は、その様子を黙って見ていた。
槍を握る手が、まだ慣れていない。
若い。
あまりにも若い。
だが、戦は待ってくれない。
「私も行く」
誾千代の意志の強い声。
唐突だった。
「戦に」
はっきりと言い切った。
その視線を受けて、
立花宗茂はわずかに目を細める。
「駄目だ」
即答だった。
「なぜ?」
「戦は遊びではない」
一拍。
「命の取り合いだ」
誾千代の眉が、ぴくりと動く。
「分かってる 」
「分かっているつもりでいるだけだ」
淡々と返す。
「お前は当主だ。守られる側にいろ」
「嫌だ」
即答だった。
「旦那様が行くのに、私だけ残る理由がない」
「ある」
短く言う。
「お前は、ここを守る」
「……いやだ」
ぽつりと漏らす。
だが次の瞬間、
「絶対行く」
駄々をこねるように言い切った。
「好きに言え」
「いいの!?」
「連れてはいかんと言っている」
あっさりと切り捨てる。
一瞬、間が空いた。
「……帰る」
「どこへだ」
「実家」
「ここだろうが」
そのまま踵を返し、誾千代は去っていった。
止めなかった。
止めても、無駄だと分かっていたからだ。
数日後。
出陣の日。
兵が集まり、空気は張り詰めていた。
その中で、宗茂の視線が一人の足軽で止まる。
「……おい」
低い声だった。
普段の穏やかさはない。
「そこの、手ぬぐいの」
呼ばれた足軽が、びくりと肩を震わせる。
横で見ていた十時連貞が目を細めた。
(……なんだあれ)
農民姿。
手ぬぐい。
その上に――ひょっとこ面。
(なんで戦にひょっとこなんだ)
「おい」
宗茂の声が、さらに低くなる。
「面を取れ」
動かない。
「十時」
「は、はい!」
「取ってやれ」
「え、あ、はい!」
十時は慌てて駆け寄り、襟首を掴んだ。
「ちょ、暴れるな!……おい、取るぞ!」
無理やり面を剥ぎ取る。
一瞬の沈黙。
「……あ」
そこにあったのは、
見慣れた顔だった。
「ひ、ひ、姫様ぁぁぁ!?」
絶叫。
誾千代は、ばつの悪そうな顔をした。
「ばれた」
「ばれたじゃないですよ!!」
宗茂は、額を押さえた。
「……手ぬぐいも取れ」
誾千代は、しぶしぶそれを外した。
さらり、と髪が落ちる。
――短い。
「……」
誰も、すぐには声を出せなかった。
「切った」
誾千代が言う。
「邪魔だから」
「ひ、姫様ぁぁぁぁ!!」
十時、再び絶叫。
誾千代は、てへ、と笑った。
宗茂は、深くため息をついた。
一拍。
「……来い」
短く言って、腕を掴む。
そのまま屋敷へ引きずっていく。
「これを着ろ」
投げ渡されたのは、小姓の装束だった。
「え、いいの!?」
「いいわけがない」
即答。
「だが」
一瞬、言葉を選ぶ。
「置いていけば、勝手についてくるだろう」
誾千代は、全力で頷いた。
「……」
再びため息。
「ならば、目の届くところに置く」
静かに言う。
「誾千代」
一拍。
「お前は、今日から私の小姓だ」
その言葉に。
誾千代の顔が、一気に明るくなる。
「やった!」
満面の笑みだった。
ここまで読んでいただき、ありがとうございました。
誾千代、出陣です!
いざ(キ`・ω)乂(ω・´メ)




