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女神の寵愛を受けた男爵令嬢と受難の日々  作者: ひなゆき


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22/122

22 リアムによるフローラの考察

あけましておめでとうございます。

本年もよろしくお願い致します(*^^*)


 もぐもぐもぐもぐもぐ…ごくん。



 フローラだって口の中に物が入っている状態でお喋りしてはいけないことくらいちゃんと分かっている。


 口の中にある肉汁溢れるステーキをしつこいほどしっかり咀嚼してからリアムの問いかけに答えた。



「すみません…。食べる順番は、サラダからでした、か?」


「違う、そこじゃない。いや………。なんでもない。食事を続けてくれ」


 がっついてステーキから食したことを咎められたという訳ではなかったようだ。


 フローラは安心してステーキを頬張った。


 



 そんなフローラを眺めながらリアムは考える。



 フローラは常識もないし頭も弱いし、王族を脅すというとんでもない行動を取ったりするが、手に入れた神にも等しい祝福の力を私利私欲の為に使わないというまともな思考は持ち合わせている(とりあえず今は、だが)。


 

 平穏な暮らしを望む、と言っていた。



 その言葉に嘘はない。



 ならば、フローラは人を操るという祝福の力をほとんど、或いはまったく使わないようにしているのではないか?




 目上の者へ対する返答を侍女が行う。


 端から見れば不敬まっしぐらの常軌を逸した行動だ。 



 だが、これが祝福の力を発動させないようにするが為の行動なのだとしたら腑に落ちる。



 フローラの祝福発動条件は、『声に出すだけ』、もしくは『強く願って声に出すだけ』などの簡単なものだったとしたら。



 下手に喋れないのも当然のことだろう。


 祝福を発動させない為に、不敬に問われることを承知で侍女に返答をさせていたのであれば、フローラへの見方は百八十度変わる。



 周囲にたとえ不敬だ傲慢だと罵られたとしても、喋る回数を少しでも減らし祝福を発動させるリスクを、人知れず回避する行動を取る姿勢は称賛に値する。




 だから今、王子であるリアムと食事を共にしているにも関わらず、侍女に甲斐甲斐しく世話をさせているフローラの阿呆みたいな行動には何か意味があるのでないか?と考えた。



 リアムは王宮に蔓延る狡猾な狸どもを相手取っても余裕で対等に渡り合い、その末に相手の自尊心をベコベコにへし折り降伏させるほどのキレる頭脳を持っている。



 そのリアムの優秀な頭脳が弾き出した結論は、「フローラはまだ秘密を隠し持っている」、だ。





 一番秘密を知られてはいけない相手に着々と色々なことを見破られつつあることなど露知らずなフローラは、初めて食べる食堂の料理に夢中になっていた。




 ちなみにトーマスの気配が消えているのはあまりの事態に魂を飛ばして呆けているからではない。



 最初はフローラの強大な力を知り動揺を隠せなかったが、リアムが思考を切り替え何やら思案し始めた事を察し、間違ってもリアムの邪魔となる行動を取らぬよう冷静に場を見極めているのだ。


 トーマスのこういうところがわりとリアムに気に入られている。




「ブラウン嬢。料理は気に入ってくれたかな?」


 リアムは数多の女性を魅了する笑顔で黙々と給餌されているフローラに話しかけた。



 今更感は強いが、女はこういう優しい男が好きらしいので、リアムは外面バージョンでフローラに探りを入れることにした。




 ここでフローラはようやく違和感の正体に気づく。


 だが、それを伝えるすべがない。言葉にするとうっかり『言霊』で強制してしまうかもしれないからだ。



 「さっき見破られたしもういっか」と、ララに高速ハンドサインでリアムに伝えて欲しいことを送る。


 残像が残るほど素早く、しかも細かいフローラの手の動きを難なく読み取ったララは恭しくリアムに告げた。



「王太子殿下、我が主フローラ様からのお言葉をお伝えさせて頂きたいのですが、発言の許可を頂けますでしょうか」


「え、あ、ああ………」



 さっきも見た、目が痛くなるほどの早い動きで行われてたやり取りってもしかしてハンドサインだったのか!?とリアムとトーマスは驚愕した。



「ありがとうございます。では…、『リアム様はなぜそのような話し方をされるのですか?失礼に当たるかもしれませんが、丁寧な話し方をされるとうさんくささが倍増してしまいます。リアム様のお人柄が表れているやや乱暴な言葉使いの方しっくり致しますので、わたくしにはどうぞそのようにお話下さい』、とフローラ様は申しております」

「お前ら本当に不敬だぞ!!それ以前になんだそのやたら細かいことまで伝わるハンドサインは!!」



 リアムはもうどこに驚いてどこにキレればいいのか分からない。




 我が国が抱える精鋭の騎士団でもハンドサインは使用されている。


 だが、「GO」や「STOP」、「作戦中止」や「了解」など簡単な内容を簡単な動作でやり取りするのが一般的だ。


 どこぞの国の間者だ?と疑いたくなるような暗号化された複雑な手の動きは、とてもじゃないが習得は困難だろう。



 しかしリアムの勘が「これは秘密に関係ない」と告げている。なんか馬鹿馬鹿しそうな理由で開発されたハンドサインのような気がする…。




「お前達の…、そのハンドサインは一体なんだ?」 


「これ…ですか? これは、わたくし達の領地では、ハンドサインを習得した者しか、狩りに連れて行けませんので、みんな真っ先に覚える、のです」




「命のやり取りをする狩りに出たとしても会話は楽しみたいですからね」と呑気に続けられたフローラの言葉に、リアムは阿呆みたいな理由で高度なハンドサインの開発をしてるんじゃねぇよ!と心から思った。  



 フローラとの会話は心底疲れるので声に出して言わなかったが。

 

 

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