21 下剋上
「さあ、言え。お前の祝福はなんだ?」
「キラキ、リアム様…」
フローラの心は決まった。
「このまま自らの意思で黙るのと、わたくしに強制的に黙らされるのと、どちらがいい、ですか?」
「!!!」
下剋上だ!!!と……。
群れのボスに逆らうわけにはいかない。そうなるとボスに祝福を話さなければならない。でもそれは出来ない。
ではどうするか?
ボスをトップの座から引きずり降ろし、フローラがボスの地位に君臨すればよいのだ。
そう、これが自然の摂理。
フローラの思考はどこまでも野生寄りだった。
ララもうんうん、と頷いている。
ここは純粋な殴り合いで決着をつけても良いが、きっと貴族的な方法ではないのだろう。
血を流さずに相手の方からボスの座を差し出させる、これが貴族的なスマートなやり方なのでは?
今日のフローラはとても冴えていた。(と本人は思っている)
ならばフローラのすることはただ一つ。
説得だ!
「強制的に黙らせる方は、意識を残すバージョンと、廃人にするバージョンがあり、ます。どれになさいます、か??」
「待て、今日のランチを勧めるが如く気軽にどれにするか聞いてくるが、そんなテンションで決めていい内容ではないだろう…っ」
リアムは焦りから顔色がどんどん悪くなる。
この女、嘘をついていない…。
つまり、今言った手段を取ることが出来る力を持つ、ということ…!!
予想を遥か斜め上に越えた最悪な事態に、トーマスの顔色も青褪める。
「リアム様…?」
「…っ」
フローラが地味顔をこてんとかしげ返答を催促してくる。
こいつ…王族を脅すなど頭がイカれてやがる…!と本気で思ったが、リアムに選択肢はない。
だが……。この女に屈するかどうか判断する前に、この国の王族として確認しなければならないことが一つだけある。
リアムは祝福の力を最大限高めてフローラに問い掛けた。
「お前は……その力を使い、何をするつもりだ?」
フローラはリアムの言っている意味が分からず一瞬首を傾げた。
「何、を……?なにもしません、けど?」
「っ!! ……なぜだ!?その力があれば、金でも男でも領地でも、…みなが羨む地位ですら手に入れることが出来るかもしれないんだぞ…!?」
考えたくもない恐ろしい話だが、もしフローラが「私と結婚しなさい」とリアムに一言命じればそれは実現するだろう。
許可証を書かされた時に操られた感覚は、いまだに身体を支配された気持ち悪さと共に残っている。
自分の意思とは関係なく、彼女の望むことをなんでも叶えたいと湧き上がる欲望とでもいうのだろうか……与えられた願いを遂行している間は強い多幸感に酔いしれた。
だからこそ、恐ろしい。
命じられれば「未来の王妃」の座を、リアムは喜んでフローラに差し出す。
何もかもフローラの言いなりとなってイルド王国はゆるやかに滅びの未来を辿るかもしれない。
リアムは、もしそんなことを命じられれば、自らの舌を噛み切り命を絶つしかないか―――とまで考えていたのだが。
「お金も、男も、領地も、みなが羨む地位も、そんなくだらないもの、いりません。わたくしは平穏な暮らしを望み、ます」
フローラの言葉に嘘偽りは一切なかった。
「…………くだらない、だと?」
リアムは自身の祝福の力を疑ったことなど一度もなかったが、今回初めて少し疑問を抱いた。
だって、金も男も地位ですらも、なんでも手に入れることが出来る力を手にしておきながらそれらすべてをくだらないと一蹴出来る人間を「真実だ」と判断して、それを信じることが出来るか?
リアムの祝福は「嘘を見抜く祝福」だ。
未来の国王たるリアムに相応しい祝福は、相手の嘘を違和感として捉える。
相手が嘘をついたとして、真実の答えや、どのような嘘をついたかまでは分からないが、会話の中で「おかしい」と思うタイミングがあれば、それは相手が嘘をついているということ。
平和的な祝福内容が多い中リアムの祝福はかなり特殊で、祝福ランクは『特別』に分類されており、国民には非公開となっている。
フローラは自分の祝福を「木登りがうまくなる祝福」だと、一度嘘をついた。
まぁ、例え祝福の力がなくとも嘘だとバレバレの内容だったが。
でも、その後の発言に嘘は一切ない。
神に等しい力を手にしているにも関わらず何もしないと、金や地位などくだらないと言い捨てたあの言葉は、すべて真実。
リアムは知らず知らずの内に入っていた肩の力をホッと抜く。
いまのところフローラは王国に害のない人間だと言えるだろう。
だが、今後は分からない。
人はいつまでも純真無垢ではいられないのだから。
それにしても…。どうするかな。
リアムは一度頭の中を整理する。
「…分かった。お前の言うとおりにしよう。祝福に関して今後追求しない」
「!!!」
リアムの降伏宣言にフローラは頭の中で盛大に勝鬨を上げた。
ララとハンドサインで喜びを交わし合う。
『やりましたね!さすがフローラ様!』
『イエーイ。』
「待て。お前達は一体何をしている?」
常人には見切れないはずの高速ハンドサインに難なく気づいたリアムはすかさず厳しい視線を送る。
「いえ、なにも…」
フローラは何事もなかったかのように両手をスッと膝の上に置いた。
「………っはぁ〜〜〜。次元の違う阿呆との会話は心底疲れる。もういい、さっさとメシ食って帰れ」
「はぃ…。有り難く頂戴致し、ます」
フローラの「いただきます」を皮切りに、ララがナイフとフォークを手に取り、見たこともないほど分厚いステーキを一口サイズに切り分け、大きな口を開けて待つ主の可愛いらしい口元へとそっと運ぶ。
あーむっと、ほっぺをパンパンにさせてステーキを頬張る主の愛らしさといったらもう…っ!!
ララはうっとりとした目でフローラを熱く見つめた。
「ちょっと待て。どう考えてもおかしいだろう」
「???」
なにか???
このお話から1話あたりの文字数を増やしましたので、明日からは1日1話投稿に変更させて頂きます。
毎日、午前中かお昼までに投稿予定です☆
よろしくお願い致します!!
皆様、良いお年をお迎え下さい\(^o^)/




