20 新事実
「さて、ブラウン嬢。食事の前に私の質問にいくつか答えてほしい」
「? はい」
キラキラ男はにこやかに切り出したかと思えば、急に冷ややかな氷点下の目つきでフローラを睨みつけた。
「お前、俺が王族だと知らないな?」
「えっ、まさか…」
「? はい」
「え!!」
「王族専用の部屋に案内されて不思議そーな顔してたもんな?」
リアムは目をスッと細める。
トーマスはリアムのことを、この国の王太子のことを知らぬ者などいるはずないだろうと思ったが、フローラが知らなくて当たり前ですよ!と言わんばかりに堂々と肯定したことで「まじかこいつ」というドン引きした目をフローラに向ける。
ついでに侍女も「えっこの人王族だったの?」という顔でリアムを凝視して驚いているではないか。
この主従、あり得ない…。
「お前の目と耳と頭は飾りか?自国の王族の顔と名前くらい覚えとけ、馬鹿が」
「はい。失礼致し、ました」
フローラは決してボスには逆らわない。この群れ(学園)に所属している間は、だが。
「俺はこの国の王太子だ。俺に嘘はつくな。聞かれたことにはすべて真実を答えろ。これは命令だ」
「承知致し、ました」
フローラは、「リアルお山の大将がいる…」とだいぶ失礼なことを考えながら頷いた。
「まず、お前の祝福はなんだ?」
「木登りがうまくなる祝福、です」
「早速嘘ついてんじゃねーよ!!!」
リアムは額に青筋を立ててバンッとテーブルに手をつき怒鳴る。
すぐバレただ…フローラは内心で腐てくされた。
「恐れながら!!祝福の開示を人に求めることは誰であっても、たとえ王族の方であったとしても許されてはおりません!!」
ララが勇気を振り絞り声を上げる。
いや、別に振り絞ってはいなかった。
ララはフローラに失礼な態度を取る者には条件反射で立ち向かう。それが王族だったとしても関係ない。
「侍女ごときに発言を許した覚えはない。口を閉じろ」
「…っ!!」
ここでララも気づく。なんかリアムの雰囲気が先ほどまでと違う、と…。だが興味がないのでどこがどう変わったのか分からない。
本当に似た者同士の主従だ。
「確かに王族であったとしても祝福を教えるよう強要することは出来ないが、人に害を与えるような祝福であった場合はその限りではない。ティア神がそのような危険な祝福を授けられるとは思えないが…すべての国民を守るためにも、俺にはお前の祝福を確認する義務がある」
祝福は女神から個人への贈り物であり、第三者が祝福を把握・管理することは女神への冒涜だという考えのもと、国民には授かった祝福の報告義務はない。
だが、もれなく全員自己申告する。
授かった祝福はどんなものでも誇らしいので当然言いふらしたいし、祝福の内容によっては就職に有利だったり、良い条件で結婚出来たりするのだから、みんな「私の祝福は◯◯でぇす!!」と普通に国の祝福研究機関に自分の名前と授かった祝福を紙に書いて投函しまくっている。
「祝福図鑑」なるものも発行されているくらいだ。
フローラも周りには「木登りがうまくなる祝福」と報告している。
村のみんなは普通に騙されてくれたのに…王都の人間はどうやら疑い深いようだ。
そもそも、祝福を偽るような者はいない。
女神が自らに与えて下さったものを偽る、という恐れ多い発想にはまず至らないし、万が一偽ったところでいつかその嘘はバレる。
「お前…。純粋そうな雰囲気を醸し出しておいて祝福を偽るなんて相当ヤバいやつだな…」
リアムがゴミを見るかのような目でフローラを見てくるが、過剰な祝福を隠したいフローラにしてみれば「それがなにか?」と気にすらならない。
「さあ、言え。お前の祝福はなんだ?」
フローラの答えはもう、決まっている。




