理事長と顔合わせ
なんとか落ち着きを取り戻した交は、改めて天戸に話しかけた。
「ま、まあとりあえず、しばらくはここで生活しなくちゃいけないしな。つーことでさ、ここでのこと教えてくれよ」
「は、はい。分かりました。それではまず理事長室に行くのでついてきてください」
そう言うと天戸は門の反対、つまり校舎の方へと歩き出した。
そして返事をする前にさっさと行ってしまった天戸に追い付くために交は走り出したのだった。
天戸が先に行ってしまったとはいえ、交は走って追いかけたため、すぐに追い付くことができた。
そしてそのまま二人とも特に会話をすることもなく、校舎へと入っていくのだった。
入って一番初めに目についたのは、大広間と階段だった。
そして、その階段は上がった先で左右に別れており、両隣の校舎へとつながっているようだった。
だが肝心の理事長室への扉はどこにも見当たらなかった。
それを不思議に思った交は聞いてみることにした。
「おい、俺の目がおかしいのか?どこにも扉が見当たらないんだが」
「ふふ、やっぱりそうなりますよね」
そう天戸は笑うと、交に説明を始めた。
「実はですね。ここの理事長室は理事長直々に特殊な結界で隠されているんです」
「まじかよ・・・・・。一応俺も結界見破ることだってある程度はできると思ってたんだがなぁ。いったい全体なんのためにこんな凄い結界張ってるんだ?」
そう交が聞くと、天戸は一転、自慢気な顔からすさまじく気まずそうな顔になると、申し訳なさそうに言った。
「いえ、実は、あの結界は理事長が趣味で張ったものらしいんです」
「はあ!?あれが趣味!?母さんと同等と言っても差し支えないレベルだぞ。バケモンじゃねえかよ・・・・・」
「呑土さんのお母様がどれほどの使い手がわかりませんが、理事長はあの芦屋 道満様の実の息子にあたりますから」
「えっ、ここの理事長陰険爺ジジイの息子なのかよ!?うわ、すっげえ納得できるわ。一気に会いたくなくなってきたよ!」
「道満様と知り合いなんですか!?す、すごいですね!道満様は陰陽師における二大宗家の片割れ、芦屋一門の宗師なんですよ!」
「あれが陰陽師の二大トップの片割れかよ・・・・・。世も末だな」
「あ、あははは。そ、そうですか・・・・」
意外と理事長が知り合いの息子、しかもその知り合いが凄い偉い人だったなど、色々驚きの事実を新しく知ってしまったりしながら階段を上り、結界を何故か普通に通り抜けて行くと、唐突に、階段を上った先にあるはずの行き止まりがあるはずのところに、扉が現れていた。
その扉を天戸がノックをし、返事が来る前に扉を開き入っていった。
だが、その先は真っ暗で先が見えなかった。思わずその先に進むことを躊躇した交だったが、天戸が全く躊躇うことなく行ってしまったので慌ててついていった。
天戸の歩く後ろ姿以外何も見えない暗闇の中をしばらく進んで行くと、いきなり光が目の前に表れ前に居たはずの天戸の姿がみえなくなった。
それでも進み続けると、暗闇からいきなり豪華な部屋に景色が様変わりした。
何の前触れもなく切り替わった景色に、一瞬動揺した交だったが、目の前で大きな机の上で手を組みやや前のめりな姿勢で椅子に腰かけている相手を見ると、すぐに納得した表情へと変わった。
そして交は目の前の人物へと話しかけた。
「あの陰険ジジイの息子っつうからどんなんかと思ったらまさかの年齢詐称かよ。見た目は子供、中身はジジイってか?しかも糞みたいに整った顔にしやがって」
「ふふ、聞いていた通りだよ。初対面の相手にボロクソに言う傲慢さにそれを許されるだけの力を持ってるクソガキ。まんまそうだね。まあ、僕は寛大だから許してあげるけどね。とまあ気を取り直して、まずは僕の自己紹介から。僕の名前は芦屋 行人、知ってるだろうけど、道満の息子だよ。これから三年間、よろしくね?」
そう何を考えてるか分からない薄気味悪い笑顔で言いながら差し出してきた手を握り返しながら交は思っていた。
絶対にろくでもない三年間になるだろうな、と。




