強制連行
「ここ、どこだよ?」
交はそう呟くと、立ち上がり前を見た。
すると、そこには両脇に等間隔で植えられた木々が並び、その真ん中を幅8メートルほどの道がまっすぐ延びていた。
そしてその先には閉じられた大きな門と、高さ4メートルほどはありそうな堅固な壁があった。
その壁は、少なくとも今視界に見える限りでは、ぐるっと今交がいる場所を囲んでいるようだった。
「何だよここ・・・・・・。監獄か何かかよ」
思わずそう呟くと、今度は門があるのと反対の方向、つまり今交が立っている道を進んだ先に在るものを見ようと決めた。
すこし覚悟を決めてくるっと回れ右をした。
だが視界に入ってきたものは予想とは大分違うものだった。
何故ならそこにあったものは、物々しい雰囲気を纏った監獄などではなく、可愛らしい女の子だったからだ。
思わず
「は?」
と言って呆け、その可愛らしさに見とれてしまった交であったが、幸いそのことには件の美少女は気付いておらず、交が何も喋らないのを訝しく思いながらも挨拶をした。
「あの、呑土 交さんですよね?私は天戸 日那と言います。呑土さんが学園になれるまで、サポートすることになっています。以後、宜しくお願いします」
そう美少女ー天戸 日那と言うらしいーが頭を下げるが、頭を下げられた交はというとあまりにもよく分からないことが立て続けに起きたからか、活動が停止していた。
だが反応が返ってこないことをいぶかしんだ天戸が目の前で手を何度か振ることをして、ようやく気付いた。
だが、天戸が交の顔の前で手を振ると同時に顔を近づけていたので、交は一瞬固まったかと思うと、すぐさまズザザァッと後ずさった。
そうすると、交がいきなり後ずさったのかが分かっていない天戸が交近づき、また交が後ずさる、を何度か繰り返しなんとか双方が納得できる距離に落ち着くと交が話しかけた。
「あー、えっと、とりあえず、ここ、どこ?」
「えっ?どこと言われましても・・・・。極東退魔学園愛知支部ですよ?あの、本当に呑土 交さんですよね?」
「いや、確かに俺の名前は呑土 交だけど・・・・・。俺、ここの退魔学園に行くの、断ったはずなんだが・・・・・。というか俺ここまでどうやって来たか、全く記憶にないんだが」
「え!?う、嘘!?ち、ちょっと待ってください。今すぐ確認しますから!」
そう言うとすぐさま腰に巻いている帯に付いている箱を開け薄い板を取り出すとそれを触り、何かし始めた。
ときどき漏れ聞こえてくる声に、『強制』とか『収用』とか聞こえる度に交の心には一つの仮説ができ始めていた。
それは、食事か何かに眠り薬か何かを盛られ、眠っている間に強制的に連行された、という仮説だった。
「あ、あの。ちゃんと編入生として登録されていました。なので学園に通えるそうです。後、家族からの伝言があるそうなんですが、聞きますか?」
「あぁ、頼む」
「はい、分かりました。それでは、流します。『すまんなぁ、交!どうしても結がお前を学園に行かせたいらしくてなぁ。しょうがないから毒盛って強制的に学園に連行したからなぁ!帰ろうとしても無駄だぞ。ここは地図に載ってないからな!・・・・・・と、結が話したいらしいから代わるな!・・・・・・・・・・代わったよ〜。無理やり行かせちゃってゴメンね?でもどうしても行ってほしかったの。あなたの可能性のためにも、ね。それじゃあ、がんばってね!』・・・・・・・・以上です」
「あの駄目親父がぁ!俺は何も言わん、なにもしない、じゃねぇのかよ!?」
やはり仮説は当たっていたようだった。




