入室完了
がららっと音を立てながら教室へと入っていく耶麻村と、そのあとについていく天戸を見ながら、交は教室に入らずに待機していた。
中に入っていった天戸が先に席に着いたのを確認すると、耶麻村は教卓まで歩いていくと、もってきていた荷物をどさっと置いた。
そうして、教室中の生徒が席についていることと自分に視線がむいているのを確認すると、おもむろに話を切り出した。
「さて、みんな。先日言っておいたと思うが、今日は編入生が来ている。これから少なくとも一か月は一緒に授業を受けることになるやつだ、仲良くしろよー」
そう耶麻村が言うと、生徒たちから、歓声が上がった。
基本的にここの学園の編入試験は難易度がバカみたいに難しいため、編入生などというものは、めったに来ないからだった。
頻度としては、学園450年程の歴史で、両手の指よりもすくないといえばわかるだろう。
そんな天然記念物な編入生が自分たちのクラスに入ってきたからだった。
そうして一通り生徒達に騒がせ高ぶった気持ちを発散させると、耶麻村が手を挙げた。
豪快で適当なように見えるが、元とはいえ指折りの戦闘員だっただけはあり、たったそれだけの動作で教室がしずまった。
完全に静かになったのを確認すると、廊下で大樹していた交の方を向き、入ってこい、と合図した。
その合図を受け取った交は、一つ深呼吸をすると、教室へと入っていった。
すると、教室のそこかしこから生きを飲む音が聞こえ、同時に、きれい、かっこいい、お姉さま、などという不安しか生まない声も聞こえてきた。
そんな状況に若干戸惑いながらも教卓のそばまで行くと、耶麻村を見上げた。
交の意思をくみ取ったらしい耶麻村が交を軽く紹介した。
「はーい、注目なー。こいつが例の編入生で、|吞土 交≪てんと こう≫だ。今からこいつに自己紹介させるから、質問その他もろもろはその後にしとけよー」
そういった後で、交の方に振り替えると、さっさと話せとばかりにぐいっと交の体を前に押し出した。
前につんのめる形で出ていった交だったが、伏せてしまっていた顔を上げると、天戸の方をちらっと見た。
すると、天戸も同じように交の方を向いていたようで、目があった。
そして、一瞬だけ見つめ合う風になった天戸と交だったが、天戸が指をぐっとたててエールを送ると、それにこたえるかのように、交もぐいっと胸を張り、自己紹介を始めるのだった。




