第31話︰101回目のプ…
青空だった。
どこまでも、どこまでも続く青。
「……はは」
思わず笑った。
「またここかよ」
上空3000メートル。
すべての始まりであり、
すべての終わりになる場所。
――落下、開始。
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風が吠える。
空気が裂ける。
重力が、牙を剥く。
だが俺は、もう知っている。
この感覚を。
この恐怖を。
この理不尽を。
100回、全部味わった。
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「なあ、覚えてるか?」
誰にともなく呟く。
トラックにぶつかった日。
池に突っ込んで普通に死んだ日。
ネットで助かったと思ったら弾かれた日。
足首ぐねって死んだ99回目。
「全部、無駄じゃなかったぞ」
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体勢を整える。
手足を広げる。
空気を掴む。
回転を殺す。
風を読む。
流れに乗る。
加速する。
「これが」
落ちるだけだった俺の、
たった一つの戦い方。
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地上が近づく。
戦場が見える。
瓦礫の中心。
魔王が立っている。
こちらを見上げている。
「来たか」
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「行くぞ」
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姿勢を変える。
ただ落ちるんじゃない。
狙う。
一点。
絶対に外さない軌道。
空気が悲鳴を上げる。
音が遅れてついてくる。
世界が、線になる。
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「これが――」
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101回目の落下だ。
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ドゴォォォォォォォォォォォン!!!!!!
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大地が沈む。
空気が爆ぜる。
衝撃波が世界を揺らす。
だが俺は、
微動だにしない。
足の裏に伝わる感触だけが、
現実を教えてくる。
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視線を落とす。
そこには、
地面ごと叩き込まれた魔王。
沈黙。
完全停止。
――終わった。
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「……マジかよ」
ぽつりと呟く。
あっけない。
でも、それでいい。
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遅れてリーナが駆け寄ってくる。
「終わったのか!?」
「ああ」
「今の……何だ」
少し考える。
そして答えた。
「積み重ねだな」
「意味がわからん」
「だろうな」
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空を見上げる。
青い。
最初に見た、あの空と同じ。
でももう違う。
あの頃の俺は、
ただ落ちて死ぬだけだった。
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今は違う。
落ちることで、
全部を叩き潰せる。
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その時。
空が、歪んだ。
『最終試験、完了』
あの声。
「……やっとか」
『想定を大きく上回る結果でした』
「そりゃどうも」
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『報酬を付与します』
「いらん」
『《完全落下制御》』
「名前がさらにヤバい」
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リーナが空を睨む。
「何者だお前は!!」
『運営です』
「だからゲームじゃねえって言ってんだろ!!」
思わず叫ぶ。
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沈黙。
そして。
何も起きない。
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風が吹く。
静かな世界。
戦いは終わった。
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リーナが小さく言う。
「……帰るか」
「ああ」
歩き出す。
普通に。
地面を踏みしめて。
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数歩進んで、
俺はふと立ち止まる。
空を見る。
あの高さ。
あの恐怖。
あの地獄。
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そして、笑った。
「まあ」
ぽつりと呟く。
「たまには落ちるのも悪くない」
「やめろ」
即ツッコミが飛ぶ。
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その日。
世界は救われた。
魔王は倒れ、
戦いは終わり、
人々は平和を取り戻した。
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そして俺は――
もう二度と“無意味に”落ちることはなかった。
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(たぶん)




