第6話 禁書庫
図書館の屋根裏に、暖かく柔らかな日差しが入ってくる。文字を目で追っていると、視界が霞んでくる。
「ルナティア国王陛下」
突然、後ろから掛けられた声に、ハルは持っていた本を落とした。
振り向くと、長いローブを羽織り、フードで顔を半分隠した男が気配もなく立っていた。
「突然失礼しました。ウェラドンより参りました、ローワン・ヴァナヘイム・クロノスと申します。 ハル・フィンレイア・ルナティア殿にお伝えすることがございまして、参上いたしました」
「賢者と呼ばれている者か」
ハルの問いに小さくうなづく。
「私は、この図書館の地下にある禁書庫の管理をしております。ひとつだけ。禁書庫の奥に封印してある箱には、決してお手を触れませんように。これは、代々国王にのみ直接、お伝えしていることでございます」
「何が入っているのだ」
「時が来れば、自ずと……それまでは、くれぐれも近づかぬように……」
姿が滲むように薄れ、そのまま消えた。
ドサッと乱暴に本が置かれる。
「寝ている暇はありませんよ」
「寝てない……今……」
言いかけて、口を閉じる。国王にのみという、あの男の言葉が蘇る。手に持っていた本に視線を落とすが、文字は目の前を流れていく。
「その本は、そんなに難しいですか」
レヴィアスがじっとこちらを見る。これは、そろそろ言葉の鞭が飛んでくる。ハルは、背筋を伸ばし、軽く頭を振る。
「いや、大丈夫だ」
紙をめくる音とペンが走る音だけが聞こえる。レヴィアスの顔を盗み見る。目の下のクマが一段と濃くなった。




