第16話 規模
執務室に沈黙が広がる。ハルが隣に視線を向けると、膝に載せられた手は固く握りしめられている。俯いた横顔は唇を噛みしめている。ハルの胸の前で組まれた手も、固く握られていた。サイラスの声が続く。
「倉庫は、町外れの目立たない場所にありました。人の出入りはあまりないようです。大きさは中規模といったところです」
ハルの刺すような視線がサイラスに向いている。
「その運び込まれている食料はどうなっている」
「食料が倉庫から搬出された形跡はありません」
ハルは、ゆっくり息を吐く。サイラスの言葉が続く。
「管理者の南方回送組合は、小さな業者で荷馬車も5台程度でした。従業員の数も20人に満たない程度です。元々は、南方からの鉄の輸送で稼いでいたようです」
レヴィアスの手が顎に添えられる。誰に向けたか分からない言葉が漏れる。
「……軍需輸送で出てきた業者か……流通経路には詳しい……」
サイラスがうなづく。
「ただ、ここ1か月ほどで急拡大しています。馬車の数も従業員の数も増えています。食料供給の陳情書が増えた時期と重なっているかと」
沈黙が部屋の空気を覆う。ハルの視線が机に落ちる。固く閉じられた口が開く。
「……その規模で、これだけの食料を動かせるのか」
レヴィアスが顔を上げる。ハルの零した疑問に上乗せをする。
「倉庫の建築、管理……とてもこの規模の業者でできるとは思えません」
「誰か出資者がいるのではないか」
サイラスの表情に変化はない。これまでと同じ温度の声が返ってくる。
「そこについては調査中です」




