「それでも、アイシテル」 4 #ルート:S
~ジークムント視点~
「っと、その前に俺、シファの薬草茶飲みたいんだけど、用意なんて無理だよな?」
ナーヴがそういうと、シファルが嬉しそうに部屋を出てあっという間に持ってきた。
シファルの部屋、そんなに近くなかったはずなんだけどな。
「悪ぃな? 結構疲労感ってか、思ったよりもだるい」
「そっち系のやつ持ってきているから安心してよ。でも、いつもみたいに眠気が出るものは入れないでおくから。まだ話をしなきゃだからね? 全部終わってから、また飲みたくなったら言って!」
「んー。……いつも悪いな、シファ」
「いいよ、いいよ。俺の方でもナーヴには、いろいろ助けてもらってきたんだし。ひな曰く、お互いさまってやつだ」
「あー…それか」
「そうそう、それそれ。……っと、うん…いい香り」
二人の会話を、俺とアレクは不思議そうに聞いているだけ。
いろいろ、か。魔力が減ってからの話かな。
互いに助け合いながら、か。本当にいい関係を築いてきたんだなと知らされる。
「………はぁ…、美味い。…あ、待たせて悪かったな。話の続きだよな。浄化ん時のそれぞれに付与したものと効果だな」
シファルも席に戻って、その身を正した。
「まず先の方については、ジークへ剣を届けた時の魔方陣にも仕掛けがあって、その魔方陣から引き抜きながら光魔法が纏われる設定にしてあって」
「え? あの魔方陣って転送とか収納とかそっちだけじゃなかったの?」
「今回のは違ってた。短時間しか発動させられない魔法だったんだよ、あれ。それと使う際の方が効果高くて」
そこまで魔法に特化した勉強してこなかったから、改めて話を聞くと新鮮だ。
「カルナークだったら、もうちょっと長めの時間でもいけるのを構築できたかもだけどな」
そういい、薬草茶を呷る。
「ほんと、魔法に関してのアタックの仕方っての? 全然違ったから、アレとは。俺は効率重視。アレは効果重視で、そのための根回しがどんだけ長くてもへばらないだけの魔力あったから、そういうこともやれたんだろうよ。回復速度は俺より高かったし」
「そんなに違うものなのか」
珍しくアレクも食いついてる。
「……あぁ。違うね。剣を抜いた後の魔法に関しても最初から展開させていたら、カルナークに手を打たれそうだったのもあって、パッと見は剣で刺すだけ…みたいな? でも実際にあの剣一本で、体内に残されていたカルナークの魔力の残滓ってのかな? それを上書きして、俺の魔力とアイツの魔力を混ぜて、浄化に適した状態に変化させるって流れになるように組んだ魔方陣だ。それも一瞬で反応するようにって、結構瞬発力がいる内容。――なんせ、アレが相当な量を混ぜ込んでいただろうから。さっきの話みたいな、ちりつもな状態。毎日ちょっとずつ馴染ませていけば、気づかないうちに本人の意思とは無関係に聖女としての魔法をコントロールされて、使いたくない魔法も使わせられていた可能性もありだった」
「…え? そこまでの状態…だったっけ?」
何度も見たひなのステータスを思い出すけど、そこまでではなかったと思っていた。
確認するたびに、何か所も魔力を混ぜた傷痕みたいなのが増えたと面白くなく感じてたけど。
訓練の最中に魔力を流して、ひなの魔力を刺激したり持ち上げたりしながら扱い方を教えていたカル。
触れていない状態でもそれが出来るようになったら、下手すりゃ相手次第じゃどこぞの国だってぶっ潰せる恐ろしい話じゃん。
「…カル、怖ぇな」
何とも言えない気持ちになる。そんな相手にひなの訓練を任せていたんだな、俺たち。
「俺が把握しているだけで、中にはわずかな魔力しかなくても、特定の魔力を与えたら一気に増殖する核みたいなもんがあったぞ。天才って言われてきたやつの思考回路は読めねぇ。……ってか、アレだろ? 女が絡むとバカになっただけだよな?」
女が…といいつつ、チラッとひなの方に目をやって、すぐに窓の方へとズラした。
「そこまで誰かを好きになるとか、まだ俺にはわかんねぇな」
遠くを眺めるナーヴの目がどことなく寂しそうで。
「魔法の対決は出来ないけど、寂しかったらいつでも相手するよ? ナーヴ」
って俺がすこしふざけて言ったら、鼻先をフン…と鳴らせてから「アイツの代わりにはなれねえけど、たまには相手してやるよ」って口角を上げた。
「さて、こっちの方が本題になるか」
ナーヴもずっと組んでいた足を解き、すこし広げて座りなおして大きく息を吐いた。
「最後のは、二人の老化がゆっくり進む魔法だ」
一言目の内容に、三人とも思わず目を見張る。
「不老不死…とまではいかないけど、あまり公にしていい魔法じゃない。為政者とかがその魔法を欲しがったら、同じやつばかりの政治になっちまう。使い方次第で、矛にも楯にもなる。今回はその程度にしたけど、今後…永続的に浄化をというなら、不老不死のを組まなきゃいけないし、付与してやらなきゃいけない。今はまだ出来ていないってだけで、もしかしたら可能になるかもしれないし、カルナークが組めてしまうかもしれない。あっちの状況を多少なりとも把握していなきゃ厳しいと思っていたから、実は向こうの状況が多少把握できる追跡の魔法も組み込んであるんで、アッチのアイツは、それも了承してると思う。特に口頭で確認取ったわけじゃないけど、準備期間も短い中で可能なことをって感じだったし」
「……追跡って……え?」
思わず声が出た。
「っていっても、二人が消えたのは異空間とかその手なんだろ?」
と俺が聞けば、「半分正解、半分不正解」とナーヴは言う。
「異空間だけど、実はかなり近い場所にいるんだよ。あの二人」
薬草茶を一口飲んで、ふう…と息を吐くナーヴ。
「組み込んだものの中に、こっちの瘴気の状態が伝わるものをというのが、アイツの頼み事だった。でも、勝手に俺がその強度を控えめにした。なんとなくだけど、あまりここから離れたくないんじゃないかって思ったから。そのへんを漂っているとしても、ある程度の距離を出ると感度が鈍るようにってな。この場所に縛りつけるとかじゃなく、体と心が分離してしまったとしても、アイツはアイツなりにこの場所に愛着があったと俺は思ってる」
分離してしまったとはいえ、ひなはひなだから…なんだろうか。
「それが結果よければすべてよしってなればいいんだけどな」
そう言ってから、ひなの方へ顔を向けて黙って眺めてた。
「……ナーヴ?」
シファルが黙ったままのナーヴを呼ぶと、「あぁ」と眉間にしわを寄せながら顔を戻す。
「あの、さ」
どことなく言いにくそうに切り出して、「俺はまだ、あれでよかったのか考えてる」と呟く。
「これは単純に俺の意見なんだけど、カルナークが仕込んだもので魔力含めて体までも成長したアイツがいて。俺の魔法でそれを数日かけてでも元の姿に戻すことも出来たはずなのに。…アッチの……その、ひなは、それを結果的に拒んだことになってる。一応選択肢を与えようと思ってたから、俺はね」
思いもしなかった事実が知らされた。




