もっと。
救いの手って怖いですね。
どれくらい時間が経ったのか。また体が重くなった。どう考えてもあいつのせいだ。ゆっくり目を開けると今日はまだ、隣に彼がいた。サラサラとした肌に触れると、また昨日の夜に戻ったみたいにドキッとする。
まだ寝ている。私は、ぼーっとしていたけれどやはり昨日のことが頭から離れない。私を守ってくれるのは彼しかいないなんて錯覚に陥っているんだろう。私は彼の胸元に顔を擦り付け抱きついた。
何となく胸の中に残った何かが私を飲み込んでいくのが分かる。こんなやつを頼ってしまったこと。いつも私だけやられてる事が気に食わなかった。
ちょっと仕返ししてやろうと首元に噛み付いてやった。うっ…と少し声を上げ彼は起きた。私は急いで彼の胸の中から離れ起き上がり、背中を向けた。彼の印象が少しだけいい方向に動いたからと言って恐怖は消えない。
「何してるの?」
後から抱きつかれた。こいつはなんで喋れない私に話しかけてくるのか分からない。しょうがないと思い恐る恐る彼の手のひらに自分の人差し指で文字を書く。【仕返し】彼は何故かキョトンとしていた。
私はそんな彼を見てふと我に返った。そして私自身、彼の手のひらに書き終えた時自分の行動に驚いた。空っぽになった私に取り込まれていくものを感じた。でも彼に全てを支配されたくない。なにか、ふあふあした気持ちが残っていた。
「ねえ、こっち向いて。」
きつく締まっていた腕が緩み、いつもより優しい声で彼は言った。私は何故か安心しきったように肩を落とし、彼の胸の中へ入っていた。
なんでこんなに素直なのか分からない。たぶん、もう疲れたんだよ私は。このまま目を閉じてしまおうと思った。何をされるかも分からない。いつかこいつに父親にされたようなことをさせられるかもしれないし、そんなことありもしないかもしれない。不安は襲う。そんな気持ちを知っているかのように彼は私をあやすようにベットに倒れ込んだ。
「もう一度、寝ようか。」
彼がどんな思いでどんな顔をして私を見ていたか分からない。でも、彼の手は、微かな記憶にある優しい手と同じだった。
そんな手で、色々な男に掴まれてきた頭を。彼は優しく撫でたのだ。何故か、涙が出ていた。
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