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これはなに?

今回から、本編です。過激な表現が苦手な方はお気をつけください…。


 手が届いた。カーテンを開きガムテープで止められた窓の鍵を眺めた。差し込む光はやっと私の居場所を照らしてくれた。


 ここは彼の家。名前も知らない彼の家。好きだって。今日も口付けをして出かけていった。逃げる気の見えない私を彼は信用している。声を出さない私に安心している。昨日噛まれたところがまだヒリヒリする。こんなに濃く歯形がつくのかと洗面台で鏡を見つめた。私はあいつのものらしい。


 私に父親は2人いる。1人はわたあめのような父親だったが病弱だった。もう1人は性格が真逆の父親だった。


 少しの間だが、優しい父親の下で暮らしていた。そんな少しの間が過ぎて父親は死んでしまった。そして、父親が変わったのだ。次の父親との生活には困惑した。父親という土俵は同じでも違いがありすぎた。格差がありすぎた。


 母は愛されていた。以前とは違い見た目で愛が伝わってくる。豪華な家に住み、豪華な服を着て、豪華な食事をし、豪華に愛し合っていた。2人の恋愛に私はいなかった。父親が私に何をしようと母は止めなかった。


 初めは抵抗していた。知らない男に襲われた瞬間諦めた。父親は言った。これがお前の役割だ。母の目の前で行われたこともあった。そんな状況に相手の男は興奮していた。私に触れていた男は母にも手を出そうとした。しかし、父親は母を守った。クズ男と叫び散らし、その男を殺しかけた。私なんて2人の目の中には写っていなかった。2人が部屋を出ていけば案の定、男は乱暴さを増した。ただただ気持ち悪かっただけの手はいつの間にか猛獣へと化していた。


 父親から逃れ自由を手にしたのは17歳の時。家を追い出された。私は感情表現が出来なくなり、声も出なくなっていた。そして父親は使い物にならないと判断した。私はとうとう要らなくなったのだ。だから、私は高校を2年目で中退した。


 始めはそこらの何も知らない男の家に泊まっていた。駅前で突っ立って話しかけてくる男を待った。無料での宿泊場所の提供、そしてお金をくれるのなら何でもすると条件を出した。男は簡単に捕まる。なんせ持ち物は着ている制服しかなかった。こんな格好で夜に駅の前でナンパ待ちとかしておけば人は必ず来る。2年くらいこんな生活をしていた。なんて惨めな人生を送っているのかと自分を責める時もあったがそんな感情はすぐ消え去っていく。


 何となく死にたくはなかった。理由はないけれども生きてはいたかった。でも、この状況をどうにかしたいっていう気持ちはなにもない。生きているという現状と生きているという過程は違う。私の場合、内容なんてどうでもよかった。存在していることが大事だったから。


 どれくらい時間が経ったのだろう。外は既に日が落ちかけていた。玄関から鍵を開ける音がした。振り向けばそこには彼がいた。ただいまと近づき、少し怯えた私の体に気付かないかのように抱き寄せる。いい子にしてたね、なんて言って私に擦り寄った。擦り付けられた頭を私は撫でた。彼は撫でてくれたと喜び始めた。私には何がいいのか分からない。喜んでいる理由も分からない。



 今朝、なんだか元気な気分になった。外に出たいと久しぶりに思い、少し散歩をしに行った。でもさっきまで感じていたあの体の軽さは一瞬にして吐き気に変わった。


 久しぶりに、両親(あいつら)を見かけたんだ。何も変わらない容姿。


 あいつの商売道具だったなんて。こう思うようになったのは彼のせいだ。あいつらから逃れられなかった自分が本当に悔しい。抵抗する事を諦めたあの瞬間。あの時に諦めずにいたなら助かっていたかもしれない。でも、そんな過去話はどうてもいい。目を閉じ、心の中にしまっておこうと思った。


「ねえ、××ちゃん?なんでここにいるの?」


 後から声がした。

 最近、こいつの声は実体として聞こえてくるのだ。


「さあ。帰ろうよ。」


 私の手を強く引いた。私の向かいたくなかった方向へ歩み出す。抵抗の仕方を忘れた私は素直に歩き出した。


「あれ?××じゃない?」


 声がした。そう。両親(あいつら)の横を通り過ぎたのだ。声が。その一言ですら私に刺さった。その瞬間彼は足を止めた。


「また、連絡しますね。」


 彼は両親(こいつらにそう言った。2人の顔は青ざめた。彼はぺこりとお辞儀をしその場をあとにした。


 家に着いた、その瞬間膝から崩れ落ちた。


「大丈夫?意地悪してごめんね。君が家から出たりするから驚いちゃって。」


 彼の言った言い訳の理解が出来ない。彼の微笑んだ顔はこれから起きること全てを知っていたんだよと言われてるようだった。その後、「お仕置きね」なんて建て前のように呟いて私にふれてきたんだ。


閲覧ありがとうございます。

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