2(2回目増量編集完了)増量終了済み
これで2は増量はないです。
次は3に行きます
間違いだけ訂正しました。
僕が目を覚ましていたのは保健室だった。
白く清潔なベットに寝かされていた僕は後頭部に鈍い鈍痛が走り、顔を顰める。
後頭部をさすりながら上半身を起こすと、あたりを見渡す。
窓の外はすでに暗いことから、太陽が落ちていることが分かる。
「今何時なんだろ…」
保健室の壁に目を走らせるが何処にも時計はなかった。
「なんで時計がないんだよ…」
「はぁ」小さくため息と一つ吐いてベットから降りる。
「えっと…すいません」
教員用の机にだれか座っているので声を掛ける。
机に突っ伏すように倒れている誰かは着るというより羽織るような形で白衣を背中に羽織っていた。
「……」
誰なのか少し気になって机の横に回って顔を見る。
ところで僕が転校生だったことを覚えているだろうか?
机ですやすやと寝息を立てている女性をおそらく知らなかったのだ。
恐らく誰であろうとそうなったのだろうけれど、なぜか言い切る自信がなかったのだ。
それは置いといて、机で寝ている彼女は見たところ保健室の先生だろう。
保健室にいるのだからそうだと思う。
「すいません、先生?先生起きてください」
「スー、スー…クッ………ケホケホ」
無呼吸症候群なのであろうか…いきなり息が止まったと思うとしばらくしてせき込み始めた。
大丈夫なのかと心配になってきたので、急いで背中をなでる。
「先生、今は何時ですか?」
とりあえず、揺すりながらもう一度声を掛けてみる。
「んあ?…誰だい、私を起こすもわぁあぁあぁ~あ~あぁ」
伸びをしながら盛大にあくびをすると目が覚めたようで、きちんと椅子に座りなおす。
「私の眠りを妨げたのだから、何か用があるのだろ?ん?」
正面から見ると誰かに似ている、目起こすっているので少し顔は隠れているがそこはかとなく所か似ている顔、この上から目線の言葉使い…。
「あ、暁?!」
そもそも先生でもなかった。
「君は…友達になるといった人の顔も覚えられんのか。さすが木偶の坊だな」
「その…すまん」
予想外の出来事でいるとは思わなかった、なんて事は言えないまま素直に謝る。
「保健室の先生はどうしたんだよ?」
ちらほらと跳ねている長い髪に手グシを通すと、さらりと耳に髪を掛ける。
「保健室の先生か…なんだったかな…んと…山野?谷野?なんだったかな…」
どうやら俺に事情を話す前に保健室の先生の名前で引っかかったらしい。
悩ましげに顎に手を添えながら首を傾けて、盛大に「う~ん」とうなっている。
よっぽど思い出せないらしく、眉間にしわが寄っている。
「里野…いや川野…白川…ん?白川?おぉ白川!」
「どうしたんだよ」
「いや分かったぞ!!白川先生だ!」
「……それ俺の名前」
恐らく朝聞いた名前が頭に残っていて、聞いた事ある名前だな…と思って勝手に先生に当てはめたのだろう。
「うん?お前は木偶の坊だろう?白川先生には白川滝斗というお名前があるように、お前には木偶の坊という名前があるじゃないか」
「……」
否定するのもめんどくさくなってきた…。
ガラ…ガラガラ
もうどこか諦めて話を進めようとした俺の後ろの扉がいきなり開く。
一回遠慮気味にあけられた扉は最後まで開かれると外から間違いなく先生らしきが入ってくる。
「白川、おきた。調子はどうだ?頭を打ち付けていたみたいだったから救急車が必要かと思ったんだよ?」
ニカニカと笑いながら体調の心配をされるのも変な気分だ。
いわゆる糸目なのだが本当に見えているのだろうか。
「あぁ、私の目が見えているかって?もちろん見えているよ」
さりげなく心の声まで読んでくるし…。
「白川先生、遅かったではないか…私はそろそろ帰ってもいいのか?」
「早く帰らせろ」と先生をにらむ暁に
「月影さん、私は白川じゃないんだけど…それに別に帰ってくれてもよかったんだよ?それと私は里河原です」
「ホント、月影さんが保健室に走ってきた時は何が起こったかと思ったよ」と苦笑して付け加える里河原先生は自分が名前を間違って少し恥ずかしかったのか、それとも先生に言われたことが恥ずかしかったのか「それくらい走って当たり前だ」と意地?を張る暁を見て、苦笑すると僕の方に歩いてきた。
「里河原 秋道だよ。見ての通り保健室の先生をやらしてもらっているんだ。保健室登校のどっかの誰かさんみたいに一部の生徒しか僕を知らないけどね」
ちらりと暁の方を見て微笑むと「握手しよう」と手を差し伸べてくる。
「先生なのでご存知かと思いますが、僕は白川 滝斗です。1年6組に今日、転校してきました」
「うん、一応私にも連絡は着ているね…それにしても君は月影さんと仲がいいのかい?」
それと敬語は入らないよ、と付け加えると僕と握手していた手をポケットに突っこんで、またちらりと暁を横目で見る。
「暁が月影さんなら、友達になりました。いまのところ僕の唯一の友達です」
正直な話、友達になるなんて言ったけど、僕は暁のフルネームを知らないのだ。
「まったく君は…人のフルネームも知らなかったのかい」
さっき盛大に僕の名前と先生の名前を間違えたのに…なんて思ったのは言わないでおこう。
「そうなのか…月影さんが友達をねぇ…」
珍しそうに暁を見て、暁に「自己紹介を」と言うとその場で立たせる。
「君たちが友達ならまずお互いの事を知らないといけないね。ということで自己紹介をしよう」
何処かノリノリな先生はポフッと手を合わせて暁に目線を送る。
暁はそれを受けて一度軽くうなずくと、何処か緊張した表情で話し始める。
「わ、私は月影 暁だ。趣味は読書と風景を眺めることだ。以上終了だ」
人前で話すことが苦手なのか、少し顔を赤らめて話し終わる暁を見て、僕は立ち上がって自己紹介を始める。
「僕は白川 滝斗、山門市からここ桜町に引っ越してきたばかりです。趣味は食べ歩きと昼寝です」
何を話そうか、と悩んだ末にとりあえず朝に教室で行った事と同じことを話した僕だった。
「ふぅ~ん、白川くんは山門市出身だったんだね。僕の叔母もあそこに住んでいるよ」
僕たちの自己紹介の最中にお茶を入れていた里河原先生は僕たちに温かいお茶を配っていく。
「それを飲んだら今日はもう帰った方がいいんじゃないかな?」
それと今日は頭を冷やしながら寝るといいんじゃないかな?と僕に一言いうと、棚から取り出したファイルを読み始めた。
時折、僕を見て「月影さんが友達ねぇ」と意味深に呟く先生が不思議で仕方なかった。
「なぁ、暁。暁の家ってどこらへんなんだ?」
もうすっかり暗くなって街灯がやんわりとした光を届けている桜坂で、僕は暁と二人で帰っていた。
「君に教える必要はないだろう。それにフルネームを知った今でも下で呼ぶか、これだから木偶の坊は」
すっかり忘れていたが『暁』は下の名前だった…。
「それだと、家まで送れないよ…そもそも僕のために残ってたんでしょ、月影さん」
良く考えてみると、そもそもお腹を蹴られなければ…こんな事にならなかった気もする。
「私は家が近いから大丈夫だ。それに木偶の坊に心配されるほど私は抜けてない」
不審者に襲われたら追い返すさ、と鼻で笑うと先さき歩いて行ってしまう。
「抜けてる抜けてないの問題じゃなくて月影さんは女の子なんだから夜道は危ないよっ」
本当に危険さが分かっているのかと、再度「送る」と提案する。
「良いって言ってるじゃないか。それに君しつこいぞ。私がいいって言ったらいいのだ」
少しどこか怒っている様に声を荒らげるとさらに歩調を速めてずんずん進んでしまう。
「まってよ、月影さんっ」
急いで僕も歩調を速めて追いつく。
「別に送らなくてもいいんだ。夜遅い事だし君も早く帰ればいいだろ」
さらに不機嫌そうに言うと「私はこっちだから」と僕の家とは反対方向の脇道に曲がってしまう。
ホントに良いものか…と立ち止まって悩んだ末、彼女の「家が近い」という言葉を信じて素直に帰ろうと僕も歩き始めた。
「じゃぁ、また明日だね、月影さん」
少し歩いたところで振り返って月影に向かって手を振る。
月影は振り向く気もないと、手だけひらひらさせると
「ま、また明日…それとやはり暁でいいぞっ」
僕にそんな言葉を残して帰っていった。
「起きたほうが良いんじゃないかな?」
揺さぶられて驚いて目が覚める。
「ん、おはよぅ…」
起こしてくれた妹にお礼を言うと、支度を始める。
登校1日目を結局オールサボりで過ごしてしまった僕…せめて2日目はまじめに過ごさなければ…。症状のトリガーが引かれないことを祈るしかできない…。
取り合えず遅刻を防ぐために急いでご飯を食べて、鞄を担いで外に出る。
少し早めに出たので周りには全然周りに人がいない。
早朝ランニングするおじいさんや犬を散歩する人がちらほら見えるが…さすがに生徒はいないようだ。
少し涼しい桜坂をゆっくり上ると、目の前に人が見えた。
どうやらうちの生徒、しかも女子のようだ…。
しかも…あれは…。
「おはよ、暁」
隣に追いついて挨拶する。
すると案の定、暁だったのだが…ビクッと小さく飛び上がると、さび付いた機械のような効果音と共に首をこちらに向けてくる。
「………」
僕の顔を確認すると「はぁあ~」と大きくため息をついてキッと睨んでくる。
「なんで君がこんな時間帯にいるんだいっ。不審者にでもであったかと思ったじゃないか」
何処かとてつもなく理不尽なことを言われている気がするが
「なんかごめん」
とりあえず謝っておく。
「はぁ…で、なんか用なのか?こんな朝から私に用とは本当に物好きだな」
「いや…特にないんだけど…」
「おはよう」と挨拶して要件を求められると思ってなかった僕は少し焦る。
「ん…そうか…変わった奴だな。私の事を呼んでおいてようがないのか…まぁ良い。さっさと学校に行くぞ」
いや…挨拶して要件がなかったら変な奴って…暁の方が変わってると思うけど…。
歩調を速めた暁の横についていくようにして学校の門に入る。
桜道の途中から会話さえなかったものの、僕はやっぱり暁はあの子に似ている、と再確認できたのだった。
気が付くと、放課後になっていることに僕は驚いた。
短縮授業だったわけでも何でもなく、平日授業だったのだが…特に変わったことがなかったのだ。
それは当たり前、と思うだろうが転校したてで2日目なのに特に何もない…、つまり誰も僕に必要最低限しか話してきなかったのだ。
前の人と少し話して笑ったりしていたものの、気のせいか誰もが一線を置いているような気がしていた。
その中で、左隣の暁だけが僕を憐れんだ目でじっと見ているのだった。
僕は小さくため息をつくと一人で校舎を周る。
なぜ僕が校舎を巡っているかと言えば、新入生はこの時期、クラブ見学の為に学校内を周るのだ。
一人でコツコツとさびしく響く階段を下りながら、2階へと向かう。
他のクラスメイトはすでにクラブ体験終盤の今、ほぼクラブが決まっているらしく暁でさえ、一切迷わずどこかに行ってしまった。
僕はトラウマの関係上、運動部に入れないの文科系の部活を周っているのだが、目ぼしいものはなく次が最後だ。
『景色鑑賞部』…今年出来たばっかり部で我が高には『撮影部』という名前の通り撮影専門の部活がある故最後にまわしたのだがここが気に入らなければ、僕は帰宅部という事になりそうだ。
「はぁ…ここか…」
2階の端っこに部室があり、丁度保健室の真上にあるようだ。
中からは全く声が聞こえず静まり返っている…。
(もしかして…すでに部活が終わってたりするのかな…)
少し心配になって遠慮がちにノックすると、勝手に扉があく。
「今日は入部体験に来ました、よろしくお願いします」
ビックリしたのもあって急いで頭を下げる。
「あぁ、こちらこそよろしく白川君」
ん?聞いたことある声…。
「早く頭を上げなよ、君なら此処に来ると思ったよ。ねぇ月影さん」
「まったく本当にいつまで人を待たせれば気が済むんだ、君は」
「暁っ!?」
予想外の声に顔を上げると目の前には里河原先生が立っていた。
「なんだい、驚いたような声を上げて。私がここにいて不都合があるのかい」
少し眼力を強めると足を組みなおす。
「え、え…えぇ~!?」
今年に作られたと聞いていたので、てっきり2、3年生がいると思っていたのと、設立者が暁だという事に大いに驚いた。
だってあの人を寄せ付けない暁が部長を…いやでも他人とかかわるであろう部活を作るなんて…。
「あぁ、それは問題ないんだよ。月影さんが認めた人しか入れない上に月影自身以外は公式部員に慣れないんじゃないのかな…」
ナチュラルに心を読まないでほしい…本当に心臓に悪い。
状況を整理すると…暁が嫌えばこの部活から追い出すことができるって事か…。
「なるほどそうゆうことですか…それなら暁が部活を作ったのも納得…」
「さりげなく君たちすごい失礼なことを言ってないかい?」
不機嫌に目を吊り上げると暁はため息をついて顔を背ける。
「そ、そんなことないって…そ、そうだ早く体験入部を始めてくれ」
不機嫌オーラを身にまとった暁は、もう一度ため息をつくと、ポケットから何かを取り出す。
「では、始めよう。今日の部活動はこれにしよう」
机の上に『ドン』と置いたのは新品のカードが入りそうな箱…ちなみに表には『トランプ』と書いてある。
「……は?」
「見てわからないのか?トランプだよ、トランプ」
呆然とする僕にトランプのケールを滑らせるようにパスしてくると配ってと、手をひらひらさせる。
とりあえず、トランプを3つに分けるように配る。
「ん…なんでジョーカーが二枚もあるんだ。トランプと言ったらババ抜きだろう」
はぁ、これだから木偶の坊は…わかってないな、とまたため息をつくと自分の手札からジョーカーを一枚抜いた。
「そんなこと知るかっ」
普通何も言われずに配れと言われれば、大富豪とかそこらを想像する方が一般だろう?
この頃は違うのか?…僕が間違っているのか!?
「あー、間違ってないと思うけど…、月影さんはババ抜きしかやり方が分からないからね…しょうがないよ」
だ、か、らさり気なく心を読まないでほしい…。
「いやぁ…読まないでって言われてもねぇ」
「・・・・・・・・・・・」
どうすればこんな奇妙なやり取りができるのか…と考え込む暁をよそに里河原先生は自分のカードを取ってペアを抜いていく。
相変わらずな糸目で本当に見えているのだろうか…と思ったが、また読まれて返事されても困るので僕も急いでペアを抜く作業に没頭する。
ん…待てよ…。
「なんで僕は体験入部でトランプなんてしてるんですか?」
今さらながらふつふつとわいてきた疑問を口にする。
「はぁ…これだから木偶の坊は…説明を頼む」
本日2回目のセリフを言い放つと先生に話を振る。
「えっとね…僕が顧問を務めているこの部活『景色鑑賞部』の活動内容はね、出たい時に外に出て自由に景色を鑑賞し心を癒す事なんだよ。だから無理して外に出る必要もないし、中で何をしてようと自由って事だね」
さらりと言ってのける里河原先生に僕は、顔を顰める。
「創部の際に活動内容はどう描いたんですか?」
活動内容に関しては暁の事なので何処か納得だが、学校側がこんな活動内容で創部を認めるはずがないだろう…。
「…ん?私はこのまま申請書を出したが…問題でもあったのか?」
突然入ってきた暁の言葉に僕はたっぷり3秒間口が塞がらなくなった。
「良くそんなので通りましたねっ。普通の学校じゃ、普通通らないですよね!?」
「普通、普通うるさい…」
「えっとね…、滝川君が言う普通にこの学校は当てはまらないんだよ…普通の高校は創部の際に大きい大会がある部活や、大会がなくとも何らかの目的がある部活しか認めないだろうね。でも我が高は部活への入部率が9割台だという事が売りの一つなのと、部活をして勉強もする…つまり何かする事が有ってもちゃんとどちらも出来る力をつけてほしいと願ってるようだからね…」
それで部活の創部については基本無制限なんだよ、と付け加えるとババ抜きの下準備が終わったようで机の上にカードを置く。
僕と暁も準備が整ったのでジャンケンをして順番を決めると気ままに横の人のカードを取る。
「そうゆうことなら納得かもしれませんね…あ、1が被った」
「だから創部して3日目のこの部活の今の所の活動内容はトランプなんだよね…キングがそろったね」
「だってしょうがないじゃないか…もともと地元に住んでいた私にとってここの景色なんて見慣れた物でそもそも私はこの町があまり好きじゃないんだっ」
ならなんで『景色鑑賞部』にしたんだよ…、なんて思っているがこれも口に出さない。
里河原先生からカードを一枚引くと、不機嫌そうに眉間にしわを寄せると
「なんで私だけそろわないんだ…」
と不満そうに言うと僕にカードを突き出してくる。
「んと、これかな…っお、2が揃った」
「…なんで私だけ、なんで私だけ、なんで私だけ…」
左から2番目を取ると丁度もっていた2が揃ったのは良いんだが…残り2枚となった僕のカードを見ながら恨めし気にブツブツ言う暁が怖い。
「里河原先生…暁はどうしたんですか?異常…というか、別人級に怖いのですが…」
「いやぁ…ね、この2日、僕と2人でずっとババ抜きをしてたんだけどね…月影さんは一回も私に勝ててなくてね…それでああなってしまったみたいだね」
こそこそと話している僕たちをよそに暁は勝手に里河原先生からカードを引いてまた呻いている。
「君たちっ。早くカードを引いたらどうだ」
この調子だと里河原先生が勝ったらまだしも、僕が先に上がってしまうと暁のイライラがまずいことになりそうだ…。
「里河原先生…うまいこと暁を勝たせてやれませんか?」
暁のカードを引きながら里河原先生にボソボソと尋ねる。
あ…また揃った…。
「僕もさすがに考えたんでけど…そろったカードを無視して持っておくと言う手が有ったんだけど…月影さんが…」
「何をしているっ。早く揃ったならカードを捨てればいいだろう、やはり木偶の坊だなっ」
「っ」
「こうなってしまうからね…どうしようもないよ…」
渋々カードを捨てて里河原先生に差しだす。
なぜ…カードが揃うカードを引いたと分かるのに自分の揃うカードはわからないのだろう…。
とことん謎である…。
「ま、また揃わないのかっ」
目の端に光るものをためながら暁がまた呻いている。
僕らのトランプは長く続きそうだ・・・。
僕たちがトランプを終えて下校し始めたのは夜の8時だった。
春とはいえすっかり暗くなった空を見上げながら僕と暁は帰っていた。
「今日は星がきれいに見えてるね…」
話すことが特に無いので気障かと思ったが暁にそう話しかける。
「そうだな…君が知ってるところじゃ、北斗七星なんかがきれいに見えてるな」
人差し指と親指で窓を作るようにして、星を眺めている。
歩調を緩めて桜坂を下りる暁に合わせて僕もゆっくり歩く。
「君は知っているかい…夏の大三角形があるように、秋の四角形、冬の大三角形、春の大三角形が有ることを」
暁は指で枠を作るとそこに星を映すようにして空を眺めている。
「夏と冬のは知ってたけど…秋と春のは知らなかったよ…」
「そうだろうね…ほとんどの人がそうなんだ…、私は星を眺めるのが好きでな」
ここ数か月はよく一人で眺めたものだ…寂し気にそう言い放つと歩くペースを少しだけ上げて桜坂を下る。
「それじゃぁ、また明日だ木偶の坊。遅刻は大減点だぞ、絶対に遅れるんじゃないぞ」
「明日はトランプ以外に何かするのか、暁」
坂道を下り切った僕たちは昨日分かれたところで少し立ち止まって答える。
「では私は失礼する」
無視かよっ、なんて思ってることはやはり口に出せず、せめて今日は暁を送ろうと暁に申し出たのだが…『昨日も言ったが大丈夫だ』と一蹴されてしまった。
結局一人で歩いていると知らない内に家についていたのだった。
※一回目増量完了
※2回目増量終了
※詳細部編集




