第41話 ローズ先生の魔法教室
翌朝。
朝食を終えた俺たちは、妖精の家の庭へ集まっていた。
《技能の羅針盤》を開く。
【現在習得可能な未登録技能】
《土魔法》
《氷魔法》
《光魔法》
《無属性魔法》
《魔力圧縮》
《魔力循環》
「やっぱり魔法が多いな」
俺が呟くと、ローズが頷いた。
「当然です。わたくしが加入したことで、精霊魔法の応用を学べるようになりましたから」
「全部覚えられるかな?」
ピクが首を傾げる。
「一日で完璧には無理でしょう」
ローズは優しく笑う。
「ですが、基礎だけなら十分です」
「お願いします!」
俺は頭を下げた。
「はい、お任せください」
◇
「まずは土魔法です」
ローズは庭の土へ手をかざした。
「大地の精霊よ――」
足元の土がゆっくり盛り上がり、小さな壁を作る。
「おお……」
「土魔法は攻撃だけではありません。壁を作ったり、穴を埋めたり、家を建てたりと、生活でも役立ちます」
「建築にも使えそうだな」
「その通りです」
俺も見よう見まねで魔力を流す。
最初は何も起きない。
もう一度。
魔力を地面へ流し込む。
すると、土が少しだけ盛り上がった。
【新しい技能が登録されました】
《土魔法》
【登録技能数 56/100】
「できました!」
妖精たちが拍手する。
「ミント、じょうず!」
「すごーい!」
◇
「次は氷魔法です」
ローズは水を浮かせる。
指先へ魔力を集めると、水が一瞬で白く凍った。
「綺麗……」
ピーチが感心したように見つめる。
「冷やすだけでも保存に役立ちます」
俺も挑戦する。
魔力を少しずつ流す。
水面へ白い膜が広がった。
ぱきり、と小さな音が鳴る。
【新しい技能が登録されました】
《氷魔法》
【登録技能数 57/100】
◇
「光魔法は照明として使われることが多いです」
ローズの手のひらへ、小さな光が灯る。
昼間でも眩しいほど美しい。
「夜の探索にも便利そうだ」
「ええ」
俺も魔力を集中させる。
ぽん、と小さな光が生まれた。
「できた!」
ピクがその光を追いかけて飛び回る。
【新しい技能が登録されました】
《光魔法》
【登録技能数 58/100】
◇
「次は無属性魔法です」
「属性がない魔法?」
「はい。魔力そのものを扱う技術です」
ローズは空中へ小石を浮かせた。
「攻撃よりも、日常生活で役立つ場面が多いですね」
俺も魔力を送る。
小石が少しだけ浮いた。
【新しい技能が登録されました】
《無属性魔法》
【登録技能数 59/100】
◇
「最後は、魔力圧縮です」
「圧縮?」
「同じ量の魔力でも、密度を高めれば威力も効率も上がります」
ローズは両手へ魔力を集める。
淡い光が少しずつ小さくなっていく。
「これが圧縮です」
俺も真似をする。
最初は散ってしまう。
何度か繰り返し、ようやく一つへまとまった。
【新しい技能が登録されました】
《魔力圧縮》
【登録技能数 60/100】
「六十!」
ピクが空中で一回転する。
「あと四十だよ!」
妖精たちも一緒に歓声を上げた。
◇
休憩を挟みながら、ローズは魔法について説明を続ける。
「焦る必要はありません」
「え?」
「魔法は種類を増やすことより、一つを深く使いこなす方が大切です」
「なるほど」
「ですが、皆さんには《スキル図鑑》があります」
ローズは図鑑へ視線を向けた。
「まずは基礎を広く知ることにも意味があります」
その言葉に、俺は頷いた。
図鑑を埋めること。
仲間ができることを増やすこと。
それはきっと、この家族全員を強くしていく。
「先生!」
ピクが元気よく手を挙げる。
「明日はなにを覚えるの?」
ローズは優しく笑った。
「明日は、生活で役立つ魔法を少し教えたあと、ピーチ先生へ交代ですね」
「やったー!」
妖精たちは嬉しそうに飛び回る。
こうして、妖精の家の小さな魔法教室は、大成功のうちに幕を閉じた。




