第五話 告白みたいになってんじゃん!
「いじめだ……学校ってなんでグループを作らせるんだ。少しくらいは陰キャのことを考えてくれてもいいじゃないか」
誰にも聞こえないような、そんな小さい声でブツブツと言っていると、ホームルームは終わっていた。
「体育祭の件も気になるが、それより校則をどうにかしなければ」
「……くん!」
「いやぁ……どうやって生徒会を討伐するか、長考する必要があるな」
「陰乃くん!!」
「うわあっ!!!!」
周りのみんなが僕のことを見ている。集中しすぎていた。それに左側から話しかけられてもあまり聞こえない。会話するときにイヤホンは邪魔だ。
「ご…ごめんなさい」
「全然いいよ! でも、次は怒るからね」
腰に手を当てて、顔を膨らませている江森さんを、僕は凝視してしまった。教室で考えるのはやめよう。次からはトイレに駆け込むことにした。
「……えっと……要件は、なんですか」
江森さんはハッとした表情をした。今の短時間で忘れたのか?
「要件って言葉なんかやだ!! お話、にしようよ」
江森さんの家はお金持ちなのでは、と思った。
「じゃ、じゃあ…お話はなんですか」
自分の頬が熱くなるのを感じつつも、しぶしぶ口を開いた。
「今日の三・四時間目のグループ、一緒に組もうよ!! 旭野さんと藤井さんもいるし!」
旭野さんはまだわかる。藤井さんって誰だ? もうみんなの名前覚えたのか? 僕が遅れているのを直に実感させられた。
「え、いや……でも…運動できないですし」
僕の最後に測った五十メートル走のタイムは約十一秒だ。グループにとって足手まといになることは目に見えている。
「私も運動苦手だからさ! おねがい!」
それは意外だ。見た目からしていかにもスポーツができそうなのに。いや、僕をグループに入れるための嘘かもしれない。でも、今断ったら、高校最後のグループ勧誘になりかねない。それは嫌だ。だから僕はグループに入ることにした。
「わ、わかりました……こんな僕でいいなら、よろしくお願いします」
僕としたことが、顔と耳が熱いことも相まって、まるっきり告白みたいになってしまった。
「やった! ん、なんか顔赤くない? 大丈夫?」
僕ってそんなにわかりやすく顔に出ているのか⁉
「え、いや、その……これは――」
「夏凛、購買いこー」
ふ、ふう。助かった。またもやナイスだよ、旭野さん。
「わかったー! じゃあ、またね、陰乃くん」
ここ最近で僕の寿命が急速に減っていると思う。さっきのだけで三年といったところか。
◆◆◆
数時間後。
僕は、一・二時間目を無事に終えて、誰よりもはやく更衣室へと向かった。
「このドアの向こうにはファンタジーの世界、冒険の地があるのか……」
期待を寄せて、ドアを開けた。当然、ファンタジー世界なんてあるわけもなかった。
「おい、陰乃、だっけ?」
僕は多分、一回死んだ。そこにいたのは、僕が普通に生きていても関わることがないであろう、クラスの中心人物だった。




