第六話 ロン毛同盟
確か、クラス一緒の……なんだっけ、名前が思い出せない。
「え……あ、はい、なんですか……お金とかないですけど、本当に」
僕は目を瞑り、震える体を必死に抑えながら答えた。
「そんなんじゃねーよ、俺、江森に……なんというか、一目惚れ、しちまったみたいなんだよ」
びっくりした。そういうことか。それにしても、なんでわざわざコミュニケーション弱者に聞くんだ。ほかにも適任はいただろうに。
「だからよ、どうやったらあんな仲良くなれんのか教えてくんねーか」
はたから見ると仲良く見えるのか? いやいやいや、そんなことはないはずだ。
「髪…髪を、伸ば、伸ばすとか、いいかと。江森さん、長髪好きって……」
勝手に人の好みを言うのはよくないだろう。だが、僕はこれ以外の最適解が思いつかなかった。
「なるほど!! そうだったのか……」
もしやロン毛同盟のチャンスなのでは? ここでクラスの中心人物を仲間に入れることができたら勝率が上がるだろう。
「でも、この学校はロン毛が禁止……僕と一緒に生徒会を倒してくれればその校則を壊せる可能性はあるな」
「なっ!! もちろん倒してやるぜ生徒会!! ってか、そんな風に喋れたんだな」
不覚、と言わざるを得ない。仲間を増やすことで頭がいっぱいいっぱいだった。
「あ……いや、こ、これは……」
「いきなりキョドんのかよ。まあ、いいや。いいこと教えてくれてサンキュー! これからは打倒生徒会だな」
いろいろあったが、僕には仲間ができた。しかもクラスの中心的人物。これで打倒生徒会に一歩近づいたわけだ。
僕は、着替え終わるとグラウンドに向かった。
「まだ四月だというのになんなんだこの暑さは」
手先から水が垂れているみたいだ。汗なのか、僕自身が溶けているのか。
全校生徒合同練習なのか、人がとても多い。そのせいか、余計暑く感じる。
「えっと……これはどこにどう並べばいい感じなんだ?」
朝のホームルームではグループを作っておけとしか言われていない。それはグループで並べという解釈でいいのか?
「あ!! いたいた、陰乃くん! こっちでもうみんな並んでるよ」
「え、あ、そうなんですね」
「もしかして、話聞いてなかった? ホームルームで言ってたのに」
聞いていなかった。なぜ聞いていなかったのかも覚えていない。
江森さんの背中を追って進むと、旭野さんたちが見えてきた。
「おっすー。接着くんおせーぞー」
「ご、ごめんなさ――」
「ん、どした?」
僕は何度も目をこすったり、瞬きをしてみたりした。それでも見えたものが変わることはなかった。
そこにいたのは、三年前に喧嘩別れした僕の幼馴染――藤井蓮華だった。




